車高調のDIY取り付け方法/まずは純正サスペンション(ショック)の取り外し方
車高調の取り付け方法をプロショップに取材。DIYでの足回り交換にはリスクもあるので、プロの正確なやり方を公開する。まずはフロント(ストラット式)の交換方法。純正サスペンション(ショックアブソーバー)の取り外しから、ノーカットで解説。
車高調の取り付けは、純正サスペンション取り外しから始まる
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車高調の取り付け方法をプロに教わる! 連載がスタートしました。
●レポーター:イルミちゃん
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ただ、足まわりの交換というのは、お店(商売)の場合は整備士資格が必要な作業です。誰でもやっていい作業ではありません。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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DIYの場合は、法的に整備範囲が限定されることないとは言え……
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知識や技術に自信がない人は、プロに任せましょう。「車高調をDIYで取り付けする時の注意点まとめ」も参考に。
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以前に紹介した「ハブボルトの交換(打ち替え)方法」などと同じ扱いですね。やり方はネットで調べることはできますが、ミスやトラブルも多いんです。
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車高調の取り付けも、トラブルは多い?
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そんなに難しい作業ではありませんが、ネジの締め付けが甘くて異音が出たり、ショックを外すときに、ドライブシャフトが抜けてしまって戻せなくなるとか……そういうトラブルは多いです。
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この連載では、そのあたりも含めて、プロの佐藤研究員に取材。車高調取り付けを、徹底的に細かく解説します。
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まずはフロントからですが、車高調を取り付けるってことは、純正サスペンション(ショックアブソーバー)を取り外ししないといけません。
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あ……そっか。
そこからか! -
まずは車をジャッキアップして、タイヤ&ホイールを外して、純正サスペンションを外す……という一連の流れを解説します。
✔ ひとくちメモ
自分が所有する車の整備(つまり愛車のDIY)は、整備士資格を持っていなくても整備範囲が限定されることはない。つまりブレーキやエンジンなどの重要部品の整備をしても、法的に問題はない……が、技術的には整備士資格を必要とする作業であり、知識や技術に自信がない人は触らないほうがよい。車高調取り付けは、純正ショック取り外しから始まる
まずはジャッキアップする
両輪を持ち上げるフロアジャッキ(ガレージジャッキ)がほしい
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まずジャッキポイントに、ジャッキをかけます。
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車体を浮かせてしまう前に、ホイールのナットを少しだけゆるめておきます。浮いたあとでは、ホイールが回ってしまって外せませんので。
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なお、タイヤ&ホイールを外す作業は、「ホイール交換方法╱傷をつけない外し方」で詳しく解説しています。
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ジャッキアップしたのち、左右のジャッキポイントにウマをかけて降ろします。
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車高調への交換作業は、左右輪を同時に上げるフロアジャッキ(ガレージジャッキ)がないと無理?
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できなくはありませんが、スタビライザーが付いた車は、けっこうキツい。スタビが効いている状態になってしまうので、サスペンションが外しにくいです。
※「スタビリンクの外し方と付け方」参照。
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そういうことかー。
スタビリンクの取り外し
ショックに固定されている側を外す
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ホイールが外せたら、まずはスタビリンクを外します。
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スタビリンクってどこ?
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付き方(場所や向き)は車種によっていろいろ。スタビライザーが付く車種の場合は、フロントサスペンションのどこかしらにロッド(棒)がつながっています。
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スタビライザーなし車の人は、一生懸命探さないよう注意ですね。
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まあ、そうですね。
付いていない車もありますので。 -
なお今回は、付いているケース。
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これから純正ショックを外しますが、スタビリンクは先に外しておく必要があります。
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ネジのサイズは、14ミリや17ミリなどが出てきますので、自分の車のボルトサイズに合わせてレンチを用意しましょう。
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このシーンで「取れないよ〜」となる可能性は?
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それはよくある話。
原因はいくつか考えられます。 -
スタビリンクのネジが取れない原因と対策も、知っておかなきゃ、ですね。
スタビリンクはココ
※今回のモデル車両はキャスト
スタビリンクのナットが外れない理由
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まずは基本的な注意点。ここには「ゆるみ防止ナット」が使われているケースがあります。すると、普通にレンチをかけてゆるめようとしても、空転してしまう。
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回ってるのに、取れない状態。
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その場合は、ネジの頭に六角レンチ用の穴があったりするので、六角レンチで軸を抑えながら、もう一方の手でレンチを持って、ナットをゆるめます。
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なおスタビリンクが外せない理由は、これだけではありません。
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フム。
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最初のジャッキアップの話と関連しますが、もし1輪ずつジャッキアップした状態だと、スタビライザーが効果を発揮。すると、サスペンションにテンションがかかった状態になって「スタビリンクを外す」作業ができなかったりするのです。
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力がかかっている状態だからかー。
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左右輪を水平に持ち上げていればスタビライザーは働いていないので、スタビリンクも素直に外れます。
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なるほどねー。
だから両輪を持ち上げるのか。 -
あとは、単純に固くてゆるまないケースもあります。ミニバンだと17ミリ等の太いボルトが使われていて、スタビリンクが固くてゆるみにくかったりします。
ゆるみ防止ナットのゆるめ方
スタビリンクは純正流用する車高調と、セット交換する車高調がある
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今回付ける車高調もそうですが、車高調によってはセットで社外品のスタビリンクが付いてくる場合もあります。
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つまり今回は、スタビリンクも付け替えるってことですね。
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そうです。でも、純正のスタビリンクを流用するタイプもあります。
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そこは車高調によって分かれるんだ。
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純正流用タイプなら、スタビリンクはショック側だけ外せばいいことになります。
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フムフム。
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反対側の、スタビライザーとの接続側は、外す必要ナシ。ショック入れ替え中は、プラーンとさせておけばいい。
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社外品を付け直すパターンなら、純正のスタビリンクは完全に外してしまいます。
✔ ひとくちメモ
車高調を取り付ける時に、社外品の調整式スタビリンクをセットで買う必要があるかどうかという問題については、下記記事で詳しく解説。
ABSセンサーの線をショックから外す
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次は、ABSセンサーの線が純正ショックに固定されている部分があるので、それを外します。
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ABSセンサーとか言われると、なんだか難しそうですが……
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いや、ただ単に線が遊ばないようにショックに固定されているので、それを解除するだけですよ。
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どれだろう?
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これがABSの線です。ショックの裏を通しながら、背面でも固定されています。
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つながったままだと、純正ショックを外そうとしたところで引っ張られてしまうんだ。
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そういうことですね。なお、ABSセンサーの線の固定は、ボルト+クリップという固定パターンが多いです。
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固定箇所は、ひとつじゃないってことか。
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一箇所クリップで引っ掛けてあって、奥はボルトを取らないとフリーにならない仕組みになってます。
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ではまずはクリップ固定の解除を……アレ、取れないぞ! グイグイ。
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……とやって、壊す人が非常に多いので注意です。
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ウッ。
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ABS線の固定に使われているクリップは、単なるプラスチック製で意外とモロい。外し方が分からず、無理矢理やっているうちに割れます。
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どうやって外すのコレ?
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クリップ外しやマイナスドライバーみたいなものを使って、フタを持ち上げる。すると「パカっ」と開く構造になってます。
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なんだ!
それだけのことかぁ。 -
分かってしまえば……なんですよね。そういえば、DIYで割ってしまった人が、このクリップだけ単品だけで販売してもらえず、ABSセンサーごと買うハメになった話を聞いたこともありますね。
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ウッ。
たかがクリップと侮ってはいけません。 -
次は、ショックのウラ側です。ボルトによる固定も外しましょう。
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外れると分かりますが、こんな感じ(↓)のステーみたいなのが、ショックに固定されているんですよ。
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なるほど。
で、線がフリーになればいいんですね。 -
そうです。
ショックへの固定部分を外せれば十分です。
まずはクリップ固定を解除
今回の車のボルトは10ミリだった
ブレーキホースをショックから外す
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ショックにくっついているのはABSの線だけではなくて、ブレーキホースもあります。
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これも、ABSセンサーの線と似たようなパターンか。
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ブレーキホースが通過しているステー上のボルトを外すと、ステーごとフリーになります。
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この車の場合は、12ミリのボルトが使われていました。
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外して見ると分かりますが、ホースの途中にステーが付いていて、それがショック本体にネジ留めされていました。
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フリーの状態になったらそれでOK。それ以上どこかを外す必要はないですね。
ロアアームにジャッキをかける
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さあ、邪魔者(?)もいなくなった! いよいよショックを外しますよ〜。
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その前に!
もうひとつ、ジャッキを用意します。。 -
え!?
またジャッキ? -
ロアアームを持ち上げたいんですよ。こんなふうに(↓)。
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これは……なんのための作業ですか?
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このあとショックを外したときに、スコーンと落ちて、ドライブシャフトが抜けてしまったりなど……そういうトラブルを防ぐためですね。
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ほほう。
つまり下側を支えておく役割か。 -
あと、ショック下側を支えていないと、アッパーマウントを外す途中でどんどんアーム位置が下がってしまい、ナットをゆるめる作業もやりにくい……という理由もある。
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なるほどね〜。
こんな感じにセット
ショック下部のボルトをゆるめる
ゆるめ方にはコツがある
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ようやく!
純正ショックを外せますね。 -
ショックは上下で固定されている。上下どちらかから外しますが、今回は下からゆるめるパターンでいきます。
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ショックのボルトは軽自動車だと17ミリで、ミニバンだと22ミリなど太いのが出てきますね〜。
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上下、どちらから外してもいい?
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順番はどちらでもいいですが、インパクトレンチを使う場合、どっちにインパクトレンチを当てるかは注意が必要。
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ん?
どっちとは? -
片側からボルトがささっていて、反対側に貫通してナットが留まっているわけですよね。
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ふんふん。
ボルトとナットですね。 -
どっちを回してゆるめるか、という話なんですが、ナット側がゆるむように外します。
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なにコレ?
どう違うんだ? -
ボルト側にインパクトレンチをかけて、ガガガって回して、最悪ボルトが折れたら(切れたら)大惨事ですから。
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ボルトは回さないってこと?
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ハイ。ボルトはレンチをかけて押さえている状況で、ナットのほうをゆるめてます。
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まあ、ボルトが折れることはそうそうないけれど、念のための保険。それから、ナット側をゆるめるほうがスムーズに行きます。ボルトのほうが固着していて、固かったりもするので。
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なるほどね。……ところでインパクトレンチ、持ってないんですけど?
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その場合、2本のメガネレンチをかければできます。ボルト側を押さえながら、ナット側をゆるめましょう。リクツは同じ。
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そうか。
レンチが2本あればいい。 -
大型車などでは、ここにゆるみ止めのナットを使っている車種もある。その場合、両方からレンチをかけないと供回りしてしまったりします。
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この段階ではまだボルトは抜かないでおきます。ゆるめるだけです。
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それって、何か意味があるんですか?
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ボルトがない状態だと、上側のボルトを外した時点でショックが落ちてしまうので、下側のボルトは入れたままにしておくほうがいいのです。
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そういうことね〜。
ショックの転落防止。 -
上側を外して、ショック本体を抜く直前に、このボルトを外します。それならひとりでもやりやすい。
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なるほど。
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ショックのボルトをゆるめたときに、余裕があったら見ておくといい点があります。
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フムフム。
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ボルトをゆるめたら、ガタがあるのが分かります。
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ガタって?
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ようはボルトの径より、穴のほうが少し大きいから、ゆるめたらガタガタする状態になるんですよ。
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それって……。
なんだか、キャンバーボルトみたいですね? -
そうですね。純正ボルトとはいえ、ガタはあるんですね。キャンバーボルトでなくても。
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そうなんだ。
……で、それが何か? -
このとき、どっち方向にガタがあるかを覚えておくと良いんです。もともとのボルト固定状態がキャンバーを寝かせる方向なのか、起こす方向だったのか。
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そんなの覚えておいて、どうするんですか?
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基本的には、付けるときには、元と同じ状態で付けたほうが、よいかなとは思いますが……
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フムフム。
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ただホイールも交換している状況であれば、ナックルアームを寝かせ気味の状態で固定したほうが、太いホイールが履けたり……そういうテクニックはあります。
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純正ボルトのガタを利用して、僅かながらキャンバー角が稼げるのか!
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そうです。ただし寝かせてボルトを固定するってことは、トーインにもなる(※タイロッドが後ろ側に付いている車の場合)。だから、絶対にトー角が大きく狂います。
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けれど、車高調を付けたらどのみちアライメント調整なりサイドスリップ調整なりが必要なんでしょう?
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そうなんですよね。そこをキッチリやるなら……という前提の小技ですね。
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なーるほど。
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それと、両側のショックで同じ付け方をする、というのがポイント。でないと両側のキャンバー角が大きくズレてしまいますから。
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それは重要なポイントですね。それにしても、キャンバーボルトでもないのにキャンバー角が変わるとは……。
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そうなんです。「ショックのボルトを外したらアライメント調整が必要」と言われるのは、これが原因です。
ショック下側はボルト2本でナックルアームとつながる
つまりこうではなくて……
こういう向きでいく
ボルトはまだ抜かないでおく
どっち方向にガタがあるか
ブレーキを押したり引いたりして純正状態のガタの方向を確認
アッパーマウントの取り外し方
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次はショックの上側。
アッパーマウントを外します。 -
これはボンネットを開けて、エンジンルーム側からの作業ですね〜。
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アッパーマウントのネジは、意外と細い。今回のモデル車は12ミリです。軽自動車は2本、普通車は3本というパターンが多いですね
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ゆるめれば、あとは手で取れます。
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上側のナットが外れたからって、いきなりガコンとはならない?
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それはロアアームをジャッキで支えていて、なおかつショック下部のボルトもささったままなので大丈夫。
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もし両方とも、ない状態だったら?
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そりゃ、スコーンって落ちますよ。
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なるほどね。
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つまり今の状態はもう、下から引っ張れば純正ショックが抜けるという状況です。
ショックのアッパーマウント
普通にソケットレンチでゆるめる
純正ショックの取り外し方
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いよいよ、純正ショックが外れます。
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まず、ロアアームを支えているジャッキを降ろしておきましょう。
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……なんか。
緊張してきた。 -
次に、ゆるめておいたショック下部のボルトを抜けばショックが外れるのですが……
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その前に先に注意点を言っておきます。
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ウンウン。
ここはマジメに聞いておこう。 -
ショックを外すと同時に、ブレーキまわりがフリーの状態になる。それがこっち側に、ガコンって思いっきり倒れたりすると……
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すると?
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ドライブシャフトが抜けます。抜けたら、戻すのはけっこう大変。抜けた状態だと奥にいかないから、ショックを付けようにも付かない状態になるし。
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ドライブシャフトって、そんな簡単に抜けるの?
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ええ。
けっこう簡単に抜けますよ。 -
やっぱりこの作業はショップに任せるか。
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え?
ここまで来て? -
だって。
恐いよー。 -
だから片手でブレーキを押さえながら、ショックを奥方向にスライドさせて外すんです。
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そしてさっきフリーにしたブレーキホースとかをかわしつつ、足でブレーキが倒れてこないように押さえつつ……
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ショックが外れた!
やったぁ〜。 -
……と油断して、ブレーキの支えを離したら、ボーンってなって、ドライブシャフトが抜けます。
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……でも、いつまでも足で押さえておくわけにもいかないと思う。
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そこで、つっかえ棒でブレーキを支えておきます。ヒモがあれば、どこかにヒモでくくり付けて固定しておく。
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上のは、佐藤研究員流の簡易バージョンってことで。
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あれ?
なんか今、スパイスが手抜きみたいな言い方を? -
……してません。スパイスのアドバイスが細かすぎて今日は疲れました。
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車高調取り付け工程は、ここからですよ?
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……そういえば、まだ作業の半分か。車高調の取り付け方法、後半に続く!
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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