車検の知識
車高調は車検に通る? 通らないケースがあるとすれば…
車高調にまつわる車検の話。そもそも車高調は車検に通るのか。通らないのはどういうケースか。保安基準との兼ね合いは? ……など、気になる点を車検の専門家に聞く。
車高調は基本的には車検に通るパーツ。その理由は?
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今日のテーマは、車高調と車検です。
●レポーター:イルミちゃん
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車高調は「改造」には該当しないので、基本的には車検に通ります。
●アドバイザー:TIC 越川研究員
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車高調って、改造ではないんですね〜。ちょっと意外な気がします。
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法的にいうと、「構造変更」とか「記載変更」が必要になる改造の扱いではないという意味ですね。
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あのぉ、越川研究員。「車高調に交換してもよい」なんて法律あるんでしょうか?
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え〜っとですね、その前にまず、「車高調」っていうのは、正式名称ではなくて通称なんですよね。
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車高調整式サスペンション?
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それも通称というか、俗称に過ぎないのですよ。
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じゃあ、正式名称は?
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正式な自動車部品の名称で言うと「コイルスプリング」と「ショックアブソーバー」でしかないわけです。
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つまり車高調といっても、ダウンスプリング(ダウンサス)への交換とか、ショックアブソーバーの交換と同じってことか。
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そうですね。で、コイルスプリングとショックアブソーバーは、指定部品という扱い。これらは、交換することが認められている部品です。
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あー、なるほど。
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だから車高調を付けても、(基本的には)車検に通りますよ。
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基本的には……ってことは、例外もある?
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もちろんあります。車高調で、車検NGとなるケースを考えてみましょう。
コイルスプリングとショックアブソーバーの交換、という解釈。
保安基準を満たしていなければ車検に落ちるケースも
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指定部品だから交換が認められている、とはいっても、車検に通らないケースというのは当然出てきます。
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なんだか矛盾しているように聞こえるんですけど……。
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どういうことかというと、保安基準上の問題になってくるんです。車に関する根っこのルールである「保安基準」を満たしていないと、指定部品だろうが何だろうが車検には通りません。
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そっかー。
では、車高調に関係している保安基準って? -
まずは「最低地上高」の問題。よく言われる「最低地上高9センチの確保」ですね。
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ソレはよく聞きますね。車高調に限らず。
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それと、スプリングの遊びがないこと。クラック(亀裂)やゆるみがないこと、等もあります。
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ゆるみって、法的にもNGなんですね。
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ネジがゆるんでいたら、当然ダメですよ。
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DIYで車高調整した人とか、注意しましょうね。
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あと、これもたまにある例。車高調に交換後、結束バンドみたいなものでブレーキホースブラケットを取り付けるような車高調がありますが、それがどこかにいってしまい、ブレーキホースがグラグラしているとか。そういうのは問題視されることがありますよ。
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ハンドルを切ったときにブレーキホースに当たってしまうような状態だと、車検はNGになる可能性がありますね。
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ブレーキホースの固定かぁ。純正ショックと同じように固定できないケースで、出てくる問題ですね。
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地域によっては、結束バンドでの固定自体をNGとするケースもあるようです。その場合は、きちんとネジ止めされていないとダメってことですね。ただし、そこまではさすがに全国共通のルールというわけではありませんが。
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そのへんが、ややこしい。
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普通車の場合は、地域の「運輸局」ごとにある程度の裁量権を持っているので、そういった細かい部分で差が出てくることはあります。軽自動車の場合は、本部の見解で統一されていますけどね。
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ふーむ。まあ、いずれにせよ、ブレーキホースがプラプラしているのは、問題視される可能性がある、ということですね。
ブレーキホースがしっかりネジ留めできるなら何も問題はないが、そうとは限らない。
元がエアサス車なら「記載変更」が必要
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元々、純正でエアサスが付いている車に対して、車高調を取り付ける場合は、そのままでは車検に通りません。
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純正エアサスを車高調に交換する人って、セダン系ではけっこう多いですね。セルシオとかマジェスタとか。
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その場合は、走行装置の変更ということになり、「改造」に該当しますよ。
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いわゆる「公認取得が必要」なパターンですね。
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元々がコイルスプリングの車に、社外エアサスを付けたとか、アクスル交換などと同じ扱いになる。この場合は基本的には「記載変更」が必要になります。
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このへんの詳細は、前回教わった「構造変更と記載変更の違い」もセットで参考にしてくださいね〜。
指定部品だから、何を付けてもいいという解釈は×
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車高調に関していえば、メーカー製の車高調をそのまま付けている車だけではありませんよね。
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と言うと?
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例えばワンオフ車高調とか。あるいはユーザーが自分で部品を組み合わせた、半自作のような例もあります。
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バネはアレで、ショックはコレで、アッパーマウントはソレで……みたいな。
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そうです。ただ、そういう車高調の場合は、いざ装着する車種の重量などを計算すると、安全率が出ない(満たせない)ケースというのはあります。
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まあ、量産品じゃないから、そこまで考えていなかった……というのは多いでしょうね。
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そもそも、本来はもっと軽量な車用のスプリングを使っているとか、巻き数が足りないとかね。
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そういうのは車検の時、どうなるんだ?
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そこです。ここで問題なのは、元々がコイルスプリングの車の場合は、それを車高調に交換したからといって構造変更検査などは必要ない。言ってしまえば「そういう強度などの検討まではしなくていい」……ということになっているわけですよ。
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さっき教わった、指定部品だから、という理由ですね。
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そうです。しかし、もしも実際に検討(検査)したら、強度が出ていないものも中にはあるかも知れないですよね。構造的に持たない、ということだってあり得る。
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検査まではしなくていいルールだから、発覚しないだけ!?
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そうなんです。だから「指定部品だから何を付けても良い」という考えに立つのは危険、ということです。
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車検に通るから、強度的にも安心できる、とは言えないですね。
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指定部品の場合は、そういう強度の検討・検査などがはぶかれているというだけの話であって、それと車高調自体の品質は別問題ですよ。
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ウーム。
実に考えさせられる話だ。 -
「指定部品」=「どれを付けても問題ない」ということではありません。この点は注意しておきましょう。
部品をバラバラに集めて組む人もいる。
DIY Laboアドバイザー:越川 靖
公認車検専門店「TIC」代表。公認申請歴26年のベテラン。「車好きが堂々とカスタムカー・改造車に乗れるように」と使命感を持つ。自身も大の車好き。車検完璧対応のワンオフマフラーを自ら溶接する、職人系の公認車検屋。●TIC(http://www.tic-group.jp/index.html)
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