車高調 取り付け方法/フロント編(ストラット式)
車高調のDIY取り付け方法を、プロショップに取材した特集記事(後編)。ここではフロントの足回り(ストラット式)を例に、車高調への交換手順を説明。なお、アッパーマウントやショックアブソーバー取り付け(締め付け)には重要なコツがある。
車高調を取り付ける前に注意すべきこと
-
前ページの記事、「車高調 取り付け方法 / まずは純正サス(ショック)の取り外し方」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
-
さて、純正ショックを取り外したので、いよいよ車高調を取り付けます。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
-
今回はまずフロント(ストラット式)の取り付けです。
-
リア用のショックを、間違えて付けないようにしないと。
-
……それは、付かないから大丈夫。今どきの車はフロントがストラット式で、リアがトーションビーム式の組み合わせが主流で、バネやショックの形も全然違います。
-
そ、そっか。
……見れば分かるな。アハハ。 -
そんなことより、左右を間違えないようにしてください。
-
ええッ!?
車高調って、左右指定あるんだッ!! -
……こういう人が、平気で左右逆に付けます。皆さんは注意してね。
-
でもっ!
見た目、まったく同じに見えますが? -
逆にも付くぐらいですからね。でも、どこかに書いてありますよ「L(左)」と「R(右)」などと。
-
あー。
ホントだ! -
ただし! 僕の経験では、この「L」と「R」のシールが、貼り間違えられているケースがありました。
-
そんなバカな。
-
でも、仕組みが分かっていると、メーカーのミスにも気づけます。アッパーマウントを付けるときに、補足説明しましょう。
今回取り付ける車高調はシュピーゲル
軽自動車用の車高調では超定番ブランドのシュピーゲル。www.spiegel.co.jp/
フロント用(ストラット式)
リア用(トーションビーム式)
ショック下部のボルトを差す
-
では車高調のショックを付けます。
-
ぶつけないように、タイヤハウス内へ。
-
純正ショックのアッパーマウントが付いていた車体の穴に、車高調のアッパー部分を合わせます。
-
アッパーマウントの固定が先ですか?
-
いや、上側は位置を合わせただけで、固定は下側から。車高調のショックを、ブレーキの後ろ側にまわりこませて、ナックルアームとショック下部(ブラケット)の穴位置を合わせます。
-
純正ショックを外すとき、後ろにスライドさせましたが、今回はその逆。後ろから手前方向に向かって、車高調を入れました。
-
そして、ナックルアームと車高調のブラケット穴を貫通させるようにボルトを通します。
-
このボルトって、純正ショックを外したときのボルトの流用?
-
そうですね。ここは純正を流用。ちなみにボルトを入れるまでは、ブレーキがフリーの状態。注意しましょう。
-
そういえばつっかえ棒(またはヒモ)で、ブレーキを支えていましたね。
-
ボルトを入れるまでは油断は禁物なのです。ドライブシャフトが抜けたりしないよう、ブレーキには支えが必要。
-
フムフム。
-
それと、この場面で車高調のショックを下に落とすと、真下にいるドライブシャフトのブーツを傷付けてしまったりもするので注意ですね。
-
ボルトを入れてしまえばひと安心。ふぅ。
-
締め付けるのは後にして、次はアッパーマウント側の固定に入ります。
アッパーマウントの固定
ショックのボルトを天井に通すコツ
-
車高調のアッパーマウントのネジを、ボディ側の穴(タイヤハウス天井付近)にしっかりと差し込みます。しかし手作業だけだと、ショックを支えながらナットを締め付けるのが大変です。
-
ひとりで作業してたら、大変そうですね。
-
そこでジャッキを使って、ロアアームを持ち上げながらやるんといいんですよ。
-
ジャッキでアーム類を持ち上げつつ、ショックを上に持って行ってる感じですね。
-
なるほど〜。こうやるのか〜。確かにジャッキを使うとラクですね♪
-
ジャッキでしっかり上げることで、ピタっと付く。面がナナメの状態で締め込むミスも、防止できます。
-
ここで念のため、確認しておいてほしいことがあります。
-
例の……
左右逆付けの可能性? -
そうです。キャンバー調整式アッパーマウントは、左右を正しく取り付けていれば、左右方向にキャンバー調整ができるようなミゾ(調整穴)の向きになります。
-
ところが! 車高調を左右逆に付けると、このミゾの向きがヘンにナナメになります。
-
知っていれば、この場面で気づけますね。……ところで車高調を左右逆に付けると、何が起こるのでしょう?
-
キャンバー角のスライド調整などで、支障が出ます。真横にスライドしなくなるので、キャスター角までズレたり……とか。
-
な、なるほどね。
-
もしこの段階で、ミゾの向きがヘンにナナメになっていたら……逆付けを疑いましょう。
-
向きを確認したら、アッパーマウントのナットをかませて締め付けます。
-
これで車高調のアッパーマウント側は、完全に固定できました〜。
ショックのボルトを入れたのでブレーキのつっかえ棒はもう不要
ジャッキでロアアームを持ち上げる
アッパーのボルトが通った
調整式の場合はミゾの向きを確認
アッパーマウントのナットを締め付け
車高調のショック下部の取り付け作業
ボルトの締め方でキャンバー角に差が出る
-
上は固定されたので、下のボルトを締め付けますが……この場面は、ただ単に締め付ければいいという話ではない。
-
と言いますと?
-
純正ボルトを外した時の、「ガタ」の話を思い出してください。
-
ああ、そういえば。ボルトの締め方で、キャンバー角が変わるという……
-
そうです。そして今は、車高調のショックに変わっていますよね。車高調によっては穴が少し長穴になっていて、わざとガタが大きくなっていたりするんです。
-
加工する前から、ちょっと長穴加工みたいな感じ?
※長穴については「車高調のブラケット加工でキャンバー角を付けるってどういうこと?」参照。
-
ですね。それによって、上側のピロアッパーマウント調整と、下側のスライド(隙間による動きの範囲)の両方で、キャンバー角が付けられるようになっていたりする。
-
ちなみにスマホの分度器アプリで簡易的に測ってみる(↓)と、おおよそのキャンバー角の目安が分かります。
-
ボルトの付け方で、キャンバー角が2度〜4度も変化するってことォ!?
-
あくまでも簡易的な測定ですが、今回のシュピーゲル車高調の例だと、そういうことになりますね。
-
へぇ〜。
イイコト聞いたなぁ。 -
ただし、こういう車高調の場合、調子にのって倒すとキャンバー角の付けすぎになるので注意ですね。ピロアッパーマウント側でも、調整はできるわけですから。
-
なるほど。W(ダブル)でキャンバー角を付けたら、付けすぎになるかも。
-
タイヤは内減りするし、特にフロントばかりキャンバー角を付けても、バランス悪いですしね。リアにアクスルまで組むというのなら別ですが。
-
そっか。
この場面は各自の判断ですね〜。 -
で、キャンバーを起こすにしても倒すにしても、「反対側に車高調を付けるときは同様に付ける」という点は重要! どう付けたか、覚えておきましょう。
-
今回は起こして付けておきます。その場合は、ブレーキを手前側にガコンと起こしながら、ボルトを締め付けます。
-
右手はレンチを持ちつつ、ブレーキにも力を加えた状態で締め付け。手が2本しかないので、ちょっと大変そう。
-
そしてブラケットのボルトを締め付けるときは、ボルト側にメガネレンチをかけて固定した状態で、ナット側にかけたレンチ(今回はインパクトレンチ)で締め付けます。
-
ボルトではなく、ナット側を締め付けるってことですね〜。
ブレーキを押したり引いたりすると、ガコンガコンと動く
ブレーキ&ハブを起こして付けると……2度
ブレーキ&ハブを寝かせて付けると……4度
ブラケットのボルト締め付け
ブレーキホースやABSセンサー線の固定
-
車高調のショックが固定できたので、あとは純正ショックを外すときにフリーにしておいた、ブレーキホースやABSセンサーの線を付け直します。
-
どこに付けるかは、純正を外した時を思い出しましょう。……確かブレーキホースは、背面側にステーが付いていたんですよね。
-
そうですね。ステーをショックにネジ留めして、ブレーキホースを固定します。
-
ABSセンサーの線も、ショック背面にボルト固定し直します。
-
……ところで、純正ショックを外すときに、ABSセンサーはクリップでも固定されていたのを覚えてますか?
-
ABSセンサー線は、ボルト+クリップ固定が多い……という話でした。
-
ハイ。車高調のショックにクリップを取り付ける穴がある場合は、純正ショックからクリップを外して流用しましょう。まあ、車高調側の穴に付かない時もありますが。
-
外すときは、クリップ外しのようは細い工具で裏から取ります。裏にツメがあるから、オモテ側から引っ張るだけでは取れませんよ〜。
スタビリンクは取り付けタイミングに注意!
-
車高調の取り付け工程は、純正ショックを外す工程の逆回しなので……最初に外したスタビリンクを付ければ、完成ってことだ。
-
そうなんですけど、今は完全に付けない方がいいですよ、スタビリンクは。
-
え?
それはなぜ? -
完全に付けてしまうと、反対側の車高調取り付けのときに大変だったりするので……
-
ああ、スタビライザーが効いてしまうという、例のアレ……。
-
だからスタビリンクは、反対側の車高調も付け終わってから最後に締め付けるのがいいんです。
-
そして反対側の車高調も、取り付けが終わったら……スタビリンクのボルトを締め付けます。
-
今回はスタビリンクも車高調の付属品。ゆるみ止めナットが使われているので、六角レンチでボルトの軸を押さえながら、ナットをレンチで締め付けます。
-
なお、スタビリンクのボルトはしっかり締めておかないと異音の原因になりやすいですよ。
この段階ではとりあえず完全固定しないでおく
車高調整はいつやるのか?
-
車高調なんだから、付けたら車高調整するんですよね?
-
そうなんですが、最近の車高調は「デフォルトの状態で何センチ落ちる」など説明書に書いていない例が多い。付けてジャッキから降ろしてみないと、現時点の車高が分からない面があります。
-
そうなんだ〜。
-
だから、ひとまず4本とも車高調を付けてしまい、タイヤも付けて降ろしてみてから、現状の車高をチェック。
-
そして……またジャッキアップして、車高調整するしかないわけか。
-
そういうことになりますね。
-
ここまででフロント左右は取り付けできたから……次は、リアの車高調の取り付けです。
車高調整方法については、別記事の「車高調の正しい調整方法」参照。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
関連記事
- 車高調 取り付け方法╱リア編(トーションビーム式)
- 車高調 取り付け方法╱まずは純正サス(ショック)の取り外し方
- 車高調の正しい調整方法(フロント)
- 調整式スタビリンクの必要性は? 車高調とセットで必要?
- 車高調のアッパーマウントでキャンバー調整する方法
- 車高調のバネ交換(スプリング交換)入門ガイド
- 車高調のバネ交換方法
- アッパーマウントの外し方
- 車高調をDIYで取り付けする時の注意点まとめ
- 車高調取り付けに必要な工具は?
- 車高調の異音「コトコト音」の原因と対策
- 車高調が固着して動かないときの対処法
- 傷を付けずにホイールを外す方法
- 最低地上高のよくある誤解。9cm以上必要なのは「どこ?」
- 車高調は車検に通る? 通らないケースとは?
- 車高調の乗り心地が悪いときの改善策は?
- 初心者のためのホイールアライメント講習スタート
- トー角の調整(サイドスリップ調整)はDIYでできるのか?
- 車高調のプリロード調整でありがちな失敗
- ジャッキアップ方法。片輪か両輪か? 車高が低い場合は?
- ジャッキポイントが曲がった!潰れた! 曲がりの原因と対処法
- パンタグラフジャッキの危ない使い方に要注意…!