足まわりコラム
車高調の異音「コトコト音」の原因と対策
車高調の異音が気になっている人は、けっこう多い。代表的なのは、地味にイヤな感じの「コトコト音」。ところが音の発生源は実に多岐に渡っていて、一つや二つではない。そんなコトコト音の原因と対策を、足まわりのプロに取材した。
コトコト音の原因は複数ある
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車高調の異音について、教えてほしいのですが……
●レポーター:イルミちゃん
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どんな音ですか?
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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「コトコト音」がするんですよー。
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うーん。
といっても、いろいろな種類がありますけどね。 -
種類? ……いや、だから、「コトコト音」だって言ってるのに! かなり限定的な言い方でしょ?
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……車高調の異音って、たいていが、「コトコト」とか「カタカタ」なんですよ。
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なんと!
コトコト音に種類があるのか!
シートがゆるんでいると音が出る
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まずは初歩的なところから。シートがゆるんでいると、コトコトとかカタカタという感じの音が出ます。
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シートって?
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ロックシートのことです。
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シートとショックの筒との間には、僅かながら隙間(遊び)がある状態。なのでロックシートがゆるんでいると、振動を拾って音が出るんです。
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車高調整したら、そのあと鳴り出した……なんてときは、怪しいですね。
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可能性は高いと思います。これが原因の場合は、走行中は微振動でコトコト鳴りっぱなしですね。
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なるほど。
常にコトコト音ね。
調整時にゆるめるロックシート
ハンドルを切ったときに音が出る場合
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次のケースですが、ハンドルを切ったときに、バネの部分から出る異音というのもあります。
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ハンドルを切った時だけコトコト?
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これは、コトコトというより、「ゴンゴン」という感じが表現としては近いと思います。金属同士が擦れて、ズレる時に発生している音なので。
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金属同士の音?
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新品で付けたばかりのピロアッパーマウントだと、ピロボールを使ったジョイント部分が動いていないことがよくあるんです。
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ほほう。
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ピロボールのジョイント部がキツめで回りが悪いと、ハンドルを切ったときに、バネのほうによじれるような力が加わって、バネが回ってしまいます。で、バネが座っているスプリングシートとズレる時、音が出る。
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ふーむ。
ピロボールが動かない、なんてことがあるのか。 -
それは、車高調だとけっこうな頻度であります。全然珍しくありません。
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対策としては、どうすれば?
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音の出所はバネとスプリングシートですが、根本的な原因は、ピロアッパーのジョイント部にあります。
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動かないんですもんね。ピロボール。
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根本的な解決策は、ピロが回ること。キツく絞まりすぎているなら、ピロをほんの少しゆるめるとか……
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ただし! 普通はここは触らない箇所なので、ゆるめすぎないように注意しましょう。
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ゆるめすぎたら、逆効果ですね。
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あるいは、ピロボールの部分に潤滑剤を浸透させるのも有効です。
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また、もうひとつの対策として、バネとスプリングシートが擦れるのが前提のやり方もあります。
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つまりは、対処療法になるんですね。
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バネとスプリングシートの間には、もともと異音防止のための樹脂製のスペーサーみたいな部品がかまされていたりするんですが……
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このシートをもう一枚追加して、間にグリスなどを塗っておく。するとシート同士で滑るようになるので、異音がしなくなります。
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ほほう〜!
そんな裏技みたいなやり方もあるんだ。 -
ピロが動かないなら、こっちのほうがてっとり早く異音を消せる面もある。
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でもそのゴムスペーサーみたいな部品は、売ってませんよね? 1枚は車高調の付属品で付いていたとしても……
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補修部品用として売ってますよ。そういうのを1枚追加で買って仕込むんです。
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そういうことね〜。
ピロのトップ部のナットを少しだけゆるめる
キャンバー調整用の固定ネジや、減衰力調整のダイヤルと間違えないように注意。
潤滑剤で固着を解消する方法
このゴムシートのこと!
ハンドルを切ったときの異音│関連記事
リアからコトコト音が聞こえる場合
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リアの車高調からコトコト音が聞こえる場合は、リアショックが怪しいかも知れません。
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リアからのみ、異音がすることもあるんだ!
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リアショックを固定する穴の、ゴムブッシュが破けてしまうこともあるんですよ。
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このケースでは、金属の穴が上下左右に遊ぶことになるので、振動でコンコン、コトコトと音が出ます。
ショック固定部も異音源になりうる
取り付け時のミスが原因の場合も
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次は、車高調の取り付け時の問題です。ショックを固定するボルトの締め込みが甘いと、コトコト音が出ます。
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取り付け部分がガタついている?
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そういうことです。これが原因なら、しっかりボルトを締め込めば解決します。
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付けたばかりの車高調で、最初から異音が鳴っていたら、怪しい感じ。
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ちゃんと締め込んだつもりでも、車重のある車ではもっと締め込んでおく必要があったりする。重量級の車だと、特に考えられます。
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なるほど、なるほど。
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取り付けに原因があるとすれば、スタビリンクがつながる部分も同様です。ココがしっかり締め付けられていない、というケースもあります。
古い車高調なら、ショック抜けの可能性も
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次は、使っているうちにコトコト音が出だしたケース。
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長く使ってきて異音が出だしたとすれば、ショックが抜けてしまっている可能性もありますよ。
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それは……寿命みたいなもの?
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そうですね。この場合、タイミングとしては走行中に段差を拾うと音が出る。
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対策は?
どうすればいいんでしょうか? -
これはもう、ショックをオーバーホールするか、交換するしかないですね。
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となると、安価な車高調だとすれば、オーバーホールより買い直したほうが安いケースもありそうですね。
ショックは消耗品
バネレートが柔らかい場合
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バネレートが柔らかいと、段差を越えるときなどに、縮みきったバネ同士が接触して異音が出ることがあります。
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バネが縮みきった状態だと……金属同士の接触でゴンゴン鳴るんだ。
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ですね。この場合は、音が出るのは走行中にバウンドしたときに限られると思いますが。
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なるほど。そうやって音の出るタイミングを考えて、原因を絞り込んでいくのか〜。
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そうなんですよ。よく電話で「コトコト音が出るんです」という悩み相談を受けるんですが、なかなか答えるのが難しい。
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どうしても消えないなら、コトコト博士のいるお店(スパイスなど)に持ち込んだほうが早いかも知れませんね。
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まあ確かに実際に車に乗らせてもらえば、特定できるとは思いますよ。
バネ同士の接触(線間密着)もある
そもそもピロアッパーは音が出やすいので、ゴムアッパーを使う手は有効
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車高調の異音について、いろいろ紹介してきましたが……
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根本的なところを言ってしまうと、「ピロアッパーマウント式の車高調は、どうしても異音が出やすい」です。
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ウーム。でも車高調で人気があるのは、調整式のピロですよね。キャンバー角が付くから。
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そうなんですけど、ピロボールを使った金属のジョイントなので、細かい振動によって異音が出やすい。
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金属同士が接触しているわけですからねぇ。
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使っているうちにピロボールが削れてくると、隙間ができて、それはそれでまた異音の原因になる。
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つまり新品のピロボールも、使い古したピロボールも、異音の原因になりやすいってことですね、けっきょく。
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だから最近の車高調は、箱とか説明書に、「ピロだから音は出やすいです」みたいな注釈が書いてあったりします。
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……なるほど。
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ジョイントにゴムブッシュを使ったゴムアッパーなら、異音を吸収します。細かい音が気になるタイプの人は、根本的にゴムアッパーを選ぶという手もありますね。
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そもそも、車高調選びの問題ですか〜。
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ゴムアッパーか、もしくは純正アッパーマウントを流用するタイプの車高調のほうが、異音の問題は起こりにくいので。
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でもそれだと、キャンバー角は付けられないってことですよね?
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そうなんですが……例えばフロントがストラット式なら、ピロ調整でキャンバー角がすぐに付きますが、ダブルウィッシュボーン式とかだと、ピロだけではキャンバー角が付かなかったりもします。
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ピロだけでは、付かないということは……
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アッパーアームやナックルアームなどまで交換する前提なら、ピロアッパーマウントでキャンバーを付けられるようにはなりますが……
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そこまではしない、という人も多そうですよね。
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そうなんですよ。ならば、最初から異音の原因になるピロアッパーよりゴムアッパーを選んだほうが、正解のケースもあるでしょう。
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これから車高調を選ぶなら、異音の出にくいゴムアッパーも含めて、検討したほうが良さそうです。
ゴムアッパーのほうが異音は出にくく乗り心地も良い
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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