車検の知識
最低地上高のよくある誤解。9cm以上必要なのは「どこ?」
車検の決まりごとで、よく知られているのが「最低地上高9センチ」。しかし、9センチとは「どこから」の高さなのか。ちなみに地面から車体の一番低い部分まで……では少々あいまいで、誤解が生じる。そこを明快に語れる、車検の専門家に取材した。
最低地上高9センチとは無関係なパーツとは…?
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最低地上高9センチを確保しないと、車検には通らない。このことは広く知られていますが……、
●レポーター:イルミちゃん
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今日は、最低地上高についてのよくある誤解についてお話したいと思います。
●アドバイザー:TIC 越川研究員
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誤解とは?
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最低地上高が、「どこからどこまでの高さ」なのかという問題ですね。コレって意外と分からないでしょう?
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ええ〜っと、「地面から、車の一番低いポイントまでの距離」ですよね?
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その認識だと、ちょっとあいまいですよね。タイヤはどう考えますか?
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タイヤを地上高に入れられたら、0センチにしかならないからあり得ないッ! タイヤは車体でもないし……除外!!
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では、タイヤ&ホイールを支持するアーム類はどう考えますか?
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これ(↑)は、ロアアームが最低地上高9センチを割り込んでいるケースです。非常によくある話ですが。
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ええっと、これはNGっぽいなー。車高をもっと上げないと。
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いや、でも、例え車高を上げても、この部分の低さは変わらないですよ?
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ありー?
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そもそもこのケースは、NGではないんです。「ボディを含む構造物以外の、可動する部位」というのは、最低地上高を決める対象にはならない。
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可動する部位は対象外?
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そうです。さっき例としてあげたタイヤも、可動する(回転する)パーツですよね。だから地面に付いていてもいい、というリクツなんですよ。
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へぇ〜。
そういうルールなのか! 面白いですねぇ。 -
で、足まわりって可動するパーツが多いですよね。
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可動する足まわりパーツというと、具体的には……
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例えばロアアームとか、リアアクスルとか、スイングアームとか。そういうのは地上高の対象ではない。
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ほほう。
アクスルも、9センチを割っていいんですねー。 -
アクスルだって、可動しますからね(上下方向に動く)。アーム類だけでなく、いわゆるコントロールアームの類いも対象外です。ラテラルロッドとか、トーコントロールロッドとか。
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なるほど、なるほど。
全部、可動する足まわり部品ですもんね〜。 -
そうなんです。しかし、アーム類が含まれないことは、意外と知らない人も多いです。
タイヤの地上高は0センチである
スイングアームが割り込むケースもOK
「どこ」が最低地上高を決めるのか?
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アームやロッドは、低い位置でも問題ないことは分かりました。しかし、だとすると、現実的な最低地上高はどこなのか?
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車種の構造によりますけど、マフラーであったり、サスペンションメンバーであったりすることが多いと思います。
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メンバーも可動しませんから、メンバーのボルトが出っ張っている部分とかは、最低地上高ポイントになりやすいですよ。
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フムフム。
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車種によって、フレームの場合もあります。でもフレームよりは、マフラーのほうが低いケースが多いと思います。
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自分の車の、可動しない部位で一番低くなるポイントがどこなのか、知っておきましょう。
マフラーが9センチを割り込めばNG
メンバーのボルトも定番ポイント
エアロパーツと最低地上高の関係は?
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エアロパーツは最低地上高の対象にはならないから、9センチを割ってもいいって言いますよね?
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ただし灯火類が付いているエアロは別ですよ。……例えばフォグランプとかウインカーが付いていると、扱いとしては「ボディを含む構造物」になるため、最低地上高の対象になってきます。
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では、よくあるフォグランプ付きのバンパースポイラーは……、
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エアロパーツではあるけれど、最低地上高を決める対象になるということですね。
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つまりフォグ付きのエアロなら、その下端が、最低地上高9センチをクリアしていないといけない。
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そういうことですね。
自動車メーカーの「地上高」の測り方はバラバラ!?
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車の地上高について、突っ込んだ話をしておきましょう。自動車メーカーが最初に届け出している時点での「その車種の地上高」は、話がまた別だったりします。
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と言いますと?
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「可動部位も含めているケース」があるのです。あ、もちろんタイヤは除きますが。
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それだと、けっこう低い数値になってしまうのでは?
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そうなんです。
最初からけっこう地上高が低めになる。 -
カタログスペック上の話ですね。
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例えば、もともとの地上高が16センチの車があったとして、8センチローダウンしたら、最低地上高9センチを割り込み、8センチになるはずですよね。
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普通に考えると、アウトに思えますが……、
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ところが、意外とその時点では最低地上高9センチを割っていない車もあるってことなんです。
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それは、純正の地上高が「可動する部位」を含めていた数字だったから、か。
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そうなんです。だからスペック上の地上高を見て、「この車は地上高16センチだから、7センチまでしか落とせない」という風に考えることはない。
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なるほどね!
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中には、タイヤ以外で、最初に地面に接触する部分で、地上高を算出する例もあるんですよ。
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そういうのは、車検時の最低地上高9センチ問題とは、分けて考えないと計算が合わなくなる。
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ですね。自動車メーカーが公表する「地上高の基準」と、車検に関連する「最低地上高の基準」は、そもそも同じとは限らないので。
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実車で判断するのが、最も確実ということですね。
DIY Laboアドバイザー:越川 靖
公認車検専門店「TIC」代表。公認申請歴26年のベテラン。「車好きが堂々とカスタムカー・改造車に乗れるように」と使命感を持つ。自身も大の車好き。車検完璧対応のワンオフマフラーを自ら溶接する、職人系の公認車検屋。●TIC(http://www.tic-group.jp/index.html)
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