ヒューズのアンペア数(容量)の選び方
純正のヒューズ交換なら、純正ヒューズと同じアンペア数を選べばいいが、電装品を後付けした時のヒューズは、何アンペアを入れたらいいのか。地味ながら大切な話なので、ここでしっかり覚えておこう。
ヒューズ自体を後付けするときは、何アンペアを入れる?
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ヒューズのアンペア数の選び方について教わります。
●レポーター:イルミちゃん
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それはときどき聞かれる質問ですね〜。
●アドバイザー:エーモン 中塚研究員
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まず「純正のヒューズが切れた!」という場合には、純正ヒューズと同じアンペア数のヒューズを入れる。
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この場合は、アンペア数を変えたらダメですよね。
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うかつに違うアンペア数のヒューズを入れると、その先にある純正機器に不具合が生じる可能性があります。だからアンペア数を変えるのはNGです。
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しかし、いっぽうで、電装品を後付けするときには、自分で配線にヒューズホルダーを後付けして、ヒューズを入れます。
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この場合「はて? 何アンペアのヒューズを入れておけばよいのか?」という疑問にぶつかります。皆さん、テキトウにやってませんか?
ヒューズホルダーの付け方は、「後付けヒューズのかませ方」参照。
付ける電装品の合計アンペア数を上回るヒューズを選ぶ
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後付け電装品の保護目的でヒューズを入れる場合は、その電装品の消費電流に合わせて選びます。
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え〜、ここでは例として、エーモンLEDでフットライトを付けたとしましょう。
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LEDなら消費電流も小さいので、1アンペアとか2アンペアのヒューズを入れておけばいいですよ。
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ちょっと待った!
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……なにか?
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1アンペアでも2アンペアでも……って、なんかテキトウな感じですけど?
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え〜っとですね、これはテキトウに言ってるわけではありません。
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じゃあ、1アンペアと2アンペアのどっちですか?
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では厳密に説明しましょう。まずLEDの消費電流は、使うLEDの種類×数量によって変わってきますよね。
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それはそうですね。
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例をあげると、フットライトを作るときによく使うのが、3連フラットLEDです。
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LEDの色によっても消費電流は異なりますが、ここでは3連フラットLEDの白を使うとして、1個あたりの消費電流が60ミリアンペアです。
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その数字はスペックに書いてありますね〜。
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そうですね。単位をアンペアに戻すと、0.06アンペアですね。
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これを運転席と助手席の両方に付けるとすれば、2個で0.12アンペアですね。
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フムフム。
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仮に前後4席にフットライトを付けたとしても、0.24アンペアです。
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ということは?
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1アンペアヒューズを入れておけば、全然足ります。
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……フムフム。
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エーモンで販売しているヒューズの最小容量は、0.5アンペアなので、それでも足りますが……
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あれ? だったら0.5アンペアのほうが、マッチしますよね?
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ただ、LEDの場合は、細線のミニ管ヒューズホルダーがオススメなんですね。
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で、この中に入れるミニ管ヒューズは、単品で買えるのは1アンペア以上なんです。
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つまり、0.5アンペアでもいいけど、1アンペアでもいいと?
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この場合は、そうなりますね。
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しかし、LED側が4席分でも0.24アンペアだとしたら、1アンペアも流れたらLEDが壊れてしまう(保護できない)のでは?
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そこなんですけど、1アンペアのヒューズを入れたところで、通常は、電装品の消費する電流しか流れないわけですよ。
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つまり、LEDフットライト4席分なら、0.24アンペアしか流れない。
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ハイ。ただし、どこかでショートさせたりすると、1アンペアどころではない過電流が流れてきます。この場合は、1アンペアのヒューズでも切れて保護機能が働きます。
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つまり0.5アンペアでも1アンペアでも、ショート対策としての電装品の保護にはなります。
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なるほど。
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まあ、電装品の合計アンペア数に近いヒューズを入れておくに越したことはないですが、LEDの場合は数字が小さいので、ざっくり1アンペアを入れておく、で大丈夫です。
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……でも、ショート対策としてなら、1アンペアと言わず、何アンペアでもいいことになってしまう気がしますが?
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いや、それはダメですね。そもそもヒューズを入れる理由として、電装品だけでなく配線の保護という目的がありますから。
Amazonでも販売されているエーモン 3連フラットLED 白
✔ 1A(アンペア)=1000mA(ミリアンペア)
エーモンのガラス管ヒューズのラインナップ参照。
詳細はAmazonのエーモン ミニ管ヒューズホルダー(2845)
✔ ホルダーの選び方は、「ヒューズホルダーの種類と選び方」参照。
✔ エーモンの「ミニ管ヒューズセット」には0.5、1、3、5アンペアが1本ずつ入っているが、0.5アンペアは単体販売されていない。
ショートの概念については、「電気のショートとは何か? 車いじりで起こる原因と対策」参照。
配線に流せる電流容量は下回るヒューズを選ぶ
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例えばさっきの例題で、3アンペアとか5アンペアのヒューズを入れたとしましょう。
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それでもショートしたら切れて、LEDを保護してくれるはずですが……
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ここで問題になるのが、配線コードのキャパです。LEDの取り付けでは、0.2スケアの細線などで電力的には十分足りる。でもこの配線のキャパとして流せるのが、最大2.5アンペアです。
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あー。
そういえば配線には限界がありました。 -
つまり、0.2スケア線なのに、5アンペアのヒューズを入れていたのでは、配線のキャパを超えた電流が流れた場合でも、遮断されないことになります。
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ということはどうなるの?
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ヒューズのアンペア数が大きすぎると、ショートさせたときに配線が発熱したり、燃える可能性があります。
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な、なるほど。
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あるいは、電装品をたくさん付けすぎた場合も同じですね。
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知らない間に配線のキャパを超えてしまった……みたいな話か。
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だから、大きいアンペア数のヒューズを入れるにしても、その配線に流せる最大の電流容量は超えない範囲のヒューズを選んでおく必要があります。
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電流容量を知っておかないと。
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ようするにヒューズのアンペア数の選び方としては、「付ける電装品の合計アンペア数」を上回っていて、「配線の最大容量」を下回っていればいいわけです。
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その間で、選んでおけば問題ないんですね。
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そうですね。電装品の消費電流のギリギリのヒューズを入れよう、とまでシビアに考えなくても大丈夫です。
DIY Laboアドバイザー:中塚雅彦
カーDIY用品メーカー・エーモン広報担当で、エーモンの顔と言える人物。端子や配線コードの仕様など細かいところまで深い知識を持っているので、DIYラボでは「電装DIYのきほん」に関する記事を担当。中塚ハカセ、とも呼ばれている。
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