フォグランプの光軸調整を、簡単に行う方法
フォグランプの「正しい光軸調整」方法は以前に紹介したが、ここでは「より簡単に光軸調整を行える方法」を解説。純正フォグランプの時点でのカットラインを、フォグ交換前に取っていなかった! という場合でも、光軸を調整できるのだ。
純正カットラインを基準にできない場合の光軸調整
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フォグランプをLED化した時などの光軸調整方法は、前に紹介していましたが……
●レポーター:イルミちゃん
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以前に紹介したやり方は、バルブ交換前の純正フォグランプの配光をマーキングしておいて、それに合わせる、というものです。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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ただ、この方法は、純正フォグランプ時点でのカットラインを(交換前に)取っておく必要がありますよね。
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現時点で付けているフォグランプの光軸が狂っている場合は、基準がないからどう合わせていいか分からない……。
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そうなんです。今日紹介する方法なら、すでに交換してしまっている状態でも、光軸を直せます。
純正状態のカットラインをマーキングしておく
フォグランプの光軸調整方法
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まず、平坦なところに車を停車。壁(あるいは大きなボードなど)に向けて、フォグランプを照射します(ヘッドライトは消灯)。
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このときの壁までの距離なんですが、目安としては、3メーター程度。
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なお、きっちり3メーターでないとダメ、というわけではないです。IPFのLEDフォグバルブの説明書でも、そこまでは指定していません。
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そうなんだ。
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ただし遠すぎると、壁が暗くなってカットラインが分かりづらい。そして近すぎると、実際に調整するときの変化量が少なくて……やはり分かりづらいです。
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フムフム。
それで「3メーター位」が目安なんですね。 -
あとは、環境次第。
可能な範囲でいいかな、と思います。 -
なるほど。
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次に、フォグランプ中心までの高さを測ります。
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今回のハスラーだと、57センチ位ですね。
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続いて今度は、フォグランプの光を当てている壁のカットラインの高さを見てみましょう。
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フォグランプの高さが57センチだった場合には、このカットラインの高さが「57センチより下になるように光軸調整」するんです。
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カットラインの高さは、フォグの高さよりも下。
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そうすれば、上向きに光が飛んでいくことはないので、対向車に眩しい幻惑光が出てしまう心配がありません。
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なるほど。フォグランプのもともとの高さを基準にするのか。
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ここで、フォグランプ中心の高さと水平のところにカットラインを持ってきてしまうのはNGです。
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え……。水平までなら、上方向には光は飛ばない気がしますが?
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それだと、マージンがまったくない状態です。後ろに荷物を載せたり、加速中の尻下がりな姿勢で、上に光が飛んでしまう可能性があります。
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あ、そっか。
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だから、「フォグランプ中心の高さより低い位置にカットラインを持ってくる」必要があるんです。
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リクツは分かますが、でも1センチ位カットラインが高かったとしても、対向車にはほとんど影響がないような気もしますけど……?
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いや、それは違いますね。1センチでも高い位置に来れば、対向車にとって幻惑光となる可能性はあります。
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それはなぜ?
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フォグランプの高さよりも、ちょっとでもカットラインが上に来る、ということは遠くに行くにしたがって上方に向かっていく、ということです。
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ナナメに上がっていく感じですね。
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そうです。だんだん光の位置が上がっていけば、いつかどこかの時点では、対向車に影響が出てしまいます。
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そういうことか〜!
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例え近くの対向車には眩しくなくても、遠くにいる対向車に対して眩しい光になる可能性がある、ということ。
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言われてみれば……そうですね。
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特にLEDなどは指向性が強く、遠くまで光が飛んでいますから、なおさらですね。
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遠くにいる対向車のフォグが眩しい、という現象も起こりうるんですね。
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後ろに人を乗せたりする機会があるなら、さらにもう少しマージンを取って低めにするようにしましょう。
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実際に光軸を動かす方法については、「フォグランプの光軸調整を正しく行う方法」を参考にしてください。
いわゆる壁ドン(※)
(※)壁に向かって車のヘッドライトやフォグランプを照射して、カットラインを調べる行為のことを指している。
純正OPフォグランプだとより厳密な指示がある
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ちなみに今回の話は、自動車メーカーの説明書にも、同じような表現が出てきます。より厳密ですけどね。
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そうなんだ。
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例えば今回のモデル車のハスラー。純正オプションフォグランプ(※IPF製)に添付される説明書には、下のように厳密な説明書きがあります。
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このように(↑)自動車メーカーの資料だと、何メートルのところで何センチ、という風にまで指定してあったりします。
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3メートル先で、6センチ下……かぁ。厳密に。
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ただ、それは車種や自動車メーカーによって数字が変わってくる面もあるので、汎用的に言うのは難しいんですよ。
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ううむ。
これは、あくまでもハスラーでの説明なんだ。 -
なおかつ、しっかりマージンを取った数字ですね。
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自動車メーカーの見解ですからね〜。
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例えばフル乗車した場合や、重たい荷物を載せた場合など……いろいろ考慮したら「フォグランプの高さギリギリ」では危ないですから。
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なるほど。
確かに。 -
ただ、普段は人を乗せたりはしない、というのであれば、3メーターの距離で6センチ下というのはかなり下向き照射になります。
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なんか、超安全にセーブし過ぎるのも……ちょっともったいない気もするなぁ。
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ですので、IPFの後付けLEDフォグバルブの説明書等には、「フォグランプ中心線よりカットラインが下になるように」と表現しているのです。
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なるほどね〜。
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2メーター先で測っても、3メーター先で測っても、フォグランプ中心からの水平ラインの高さは変わらないので、IPFとしては壁までの距離も明示はしていません。
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そういうことね! その場合は、5メーターで測っても問題はないわけだ。
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ただ自動車メーカーの説明のように、「何センチ下」というような厳密な指定に合わせるのであれば、車と壁の距離も厳密にやらないとダメです。
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それは壁までの距離によって、条件が変わってしまうからですね。
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そういうことです。それと、今回紹介したやり方は、あくまでも「カットラインがしっかり出ているバルブ」を付けているというのが大前提です。
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そもそもカットラインがモヤっていたら、合わせようがないですもんね。
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カットラインがしっかり出ている製品ならば、LEDフォグでもハロゲンフォグでも同じように光軸調整できます。
✔ 純正オプションフォグ例
●車を平坦な場所に停める
●タイヤの空気圧を規定圧力に合わせる
●運転席に1名乗車した状態でフォグランプを点灯
●壁またはスクリーンまで3メーターの距離で(↓)
●フォグランプ中心線から60mm下方にカットラインがくるよう調整
3メーターの距離に車を停める
フォグランプの高さを測るのは同じ
フォグランプの高さの6センチ下にカットラインを合わせる
カットラインがない状態ではどうしようもない
フォグランプをLED化するときの注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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