タイヤ交換方法╱車のタイヤの正しい外し方をプロに教わる
タイヤ交換の正しいやり方。自分でタイヤ交換をしたことがない初心者を想定して丁寧に解説。ここで使うのは、基本的に車載工具のみ。もしもの時に備えて、正確な手順をマスターしておこう。
少しだけジャッキアップさせてホイールナットをゆるめる
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「タイヤ交換の安全なやり方。車載ジャッキは使い方を間違うと倒れる」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前ページでジャッキポイントを詳しく説明したので、実際にジャッキアップしましょう。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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では!
車載工具を引っ張り出してきましょう。 -
パンタグラフジャッキのほかに、クルクル棒(補助工具)やL型レンチなどが入っています。
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基本的なことですが、ジャッキアップするときはシフトレバーを「P」に入れた状態で、サイドブレーキもかけておきます。
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まずは何をすれば?
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ジャッキが車体のジャッキポイントに当たるところまでは、手でクルクル回します。
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あれ!?
クルクル棒は使わないのでしょうか? -
それは、車体を持ち上げる段階になったら使います。負荷がかかっていない状態は手で回るし、棒なんか付けたら回しにくいだけ。
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なるほど。
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この段階で、正しい位置に当たっているのか(かんでいるのか)を確認しましょう。
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大丈夫そうですね。
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次に付属のクルクル棒(補助工具)を付けて、その先にL型ボックスレンチを付けて、こんな状態にします(↓)
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こうすることでジャッキのネジが回しやすくなって、重たい車体を人力で持ち上げられるのです。
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ナルホド。
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なお、車種によってはクルクル棒を付けるだけでT型になる場合もあります。
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この場合は、ボックスレンチをかまさなくていいんですね〜。
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ハイ。いずれにしてもT型にすることで、軽い力でジャッキのネジが回せます。
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……で、単にジャッキアップするだけならこのまま上げればいいのですが、今回の目的はタイヤ交換ですよね。
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そうですね。
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その場合は、少しだけ車体を持ち上げた段階(タイヤはまだ接地している状況)で、ホイールナットを少しゆるめておくのです。
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それはなぜ?
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タイヤが完全に浮いてしまうと、タイヤが回ってしまってホイールナットがゆるまなくなるからです。
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だったら、一番先にホイールナットをゆるめておけばいいのでは?
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うーん。荷重がかかっている状況でホイールナットをゆるめるのは、あまりイイコトではないですね。
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ムムム。
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ホイールや、ホイールを固定しているハブボルト側に負担がかかる可能性があるので……。
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気持ち車体を持ち上げて、荷重を減らした状態でホイールナットをゆるめる、というのがベストです。
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ところで「キモチ持ち上げる」……とは? 具体的には何センチぐらいですか?
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う〜ん。
……1センチぐらいかなぁ。 -
フムフム。
キモチ=1センチね。 -
いやいや、こういうのは状況によりますよ。だから「キモチ」って言ってるのに。
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……と言いますと?
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例えば今回のモデル車のコペンも車重は軽く、車高調が付いています。こういう場合、ちょっと持ち上げただけでもタイヤは浮きます。
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フムフム。
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付けている車高調によっては、1センチ持ち上げただけでも、ホイールナットがゆるまなくなったりしますよ。
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え。
どういうコトですかソレ? -
要するに足回りを交換していて固めてある車は、ジャッキアップしても足回りが伸びないから、すぐにタイヤが浮き始めます。
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そういうことか〜。
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タイヤが浮くまでにどの位ジャッキアップするかは、車種や仕様によるんです。
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それで感覚的な話になってしまうんだ。
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そうなんです。とにかく「タイヤはまだ地面に接地しているけど、車重がモロにかかっているわけではない状況」にして、ホイールナットをゆるめる作業に入ります。
✔ 車載工具
クルクル……とネジを回せばジャッキが伸びる(開く)
ジャッキポイントに正しくかける
ジャッキポイントについては前ページ参照。
簡易的なT型レンチ状態になる
ヴェルファイアの車載ジャッキ
クルクル棒を付けるだけで、回しやすいT型になる。
クルクルクル
ホイールを固定するハブボルト
タイヤ交換の重要ポイント。「ホイールナットをゆるめる時」の注意点
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次に、ホイールナットをゆるめます。
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車載工具でやるとすると、このL型ボックスレンチを使うんですね。
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ただし、コレはあくまでも純正ホイール用の工具と考えておきましょう。
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と言いますと?
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ホイールを社外品に交換している車の場合、こんな分厚いレンチはナットホイールに入らないことが多いんです。
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あー。
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ホイールによっては、入る場合もありますが、ギリギリだとナットホールが傷だらけになるのでやめましょう。
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では社外ホイールに交換している人は、どうすればいいのか?
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薄口のクロスレンチなどを、あらかじめ用意しておくか……
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つまり……クロスレンチを車載しておかないとダメということ?
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あるいは、薄口のアダプター(ソケット)だけ、常に車載しておくんです。
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こういうの(↑)は、社外ホイールを買ったときに付属で付いてきたりする。コレを使えば、車載工具のレンチでも、社外ホイールのナットをゆるめることができます。
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それを車載しておく必要がある、ということですね。
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そうですね。車載工具だけあってもタイヤが外せないことになりますので。
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出先でパンクしたときに、自分のホイールが車載工具で外せるのかどうか、普段から考えて準備しておきましょう。
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そういう意味では、ロックナットを付けている人も注意ですね。
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「車内に隠しておくより、家に隠しておくほうが安全」という考え方の人もいますが……
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まあ、セキュリティだけ考えると、一理あるけれど……
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しかし、それだとパンクしたときにタイヤ交換できないことになりますね。
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車内に置いておくのが嫌だったら、鞄に入れて持ち歩きましょう。
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ちなみに、ロックナットに限らず、社外ホイールを付けている人はホイールナットも交換しているケースが多いと思います。
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そういうものですか。
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純正のナットは、あまり見栄えが良くはないので、メッキや黒のホイールナットに替えていたりする。純正ナットそのままという人は、少ないと思います。
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……ただ、そういうナットのサイズは、純正ナットとは異なっているケースがあります。
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そうなんだ。
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もともと付いていた純正ナットは21ミリだけど、今付いているナットは、19だったり17ミリだったりする可能性があります。
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ということは……
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車載工具のレンチは、純正サイズのホイールナットしか外せませんので、この場合も注意が必要です。
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やはり、自分の車のホイールが外せる装備を車載しているかどうかは、要チェックですね。
✔ なお、社外ホイールを付けているなら、別記事の「傷を付けずにタイヤ&ホイールを外す方法」も参照。
✔ 純正&社外ホイールナットのサイズの種類については、別記事の「タイヤ交換の工具②╱ホイールナットのサイズは…?」参照。
ホイール盗難防止用のロックナット。専用ソケットがないと外せない。
タイヤの外し方。ホイールナットをゆるめる時のコツ
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ホイールナットは、反時計回しすればゆるみます。
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けっこう固いですね、コレ。
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ゆるめるときのコツなんですが、ゆるむ方向に体重をかけやすい姿勢のほうが、ラクに外せます。
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ん?
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ようは、こういう向き(↓)に自分が座ってゆるめるほうがラクです。
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反対にこっちからやると(↓)、持ち上げる力でゆるめることになりますので……
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このやり方だと、体重がかからないから、けっこうな力が必要となります。
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これは回しにくい。
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回しにくいばかりか、滑って外れて、車体にゴツンとやりかねません。
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ちょっとしたことですが、知っている方がクロウトっぽくていいですね。
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この段階では、ホイールナットをゆるめるだけです。固い状態からすっとゆるくなったら、それ以上進んではいけません。
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そのまま、ホイールナットを取ってはダメ?
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まだ、ジャッキアップしていない状態ですので。
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あわわ。
そういえば。 -
このままホイールナットをゆるめると、(特にキャンバーが付いているような車だと)ハブボルトのネジ山をつぶしかねません。
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外し急がないようにしましょう。
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それと、ホイールナットをゆるめる時は、1本ゆるめたら、2本目は対角線上のナットをゆるめます。
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そのあとは、左右どっちに行ってもいいのですが、その次は、また対角線上をゆるめます。
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ようするに1本目をゆるめた後、隣接するナットではなく、対角線上に飛ぶ、ということですね。
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そうですね。隣接するナットを順番に外すやり方だと、片側に負荷がかかりますからね。
✔ この段階で、もしもナットが固くてゆるまなかったら、別記事の「ホイールナットが外れない! そんなときの対処法」を参照。
タイヤ交換時のジャッキアップは「必要最小限」がベター
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ホイールナットをゆるめたら、ジャッキアップを再開します。
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今度は、ガンガンに上げていいですよね〜!?
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いいえ。ガンガンに上げるのではなく、ジャッキアップ量は、必要最小限にとどめてください。
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え?
必要最小限っていうのは…… -
つまり、あんまり上げないでね、ってことです。
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……はあ。
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前回も言いましたが、車載のパンタグラフジャッキは、上げすぎるとどんどん不安定になるんです。
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今回の目的はタイヤ交換ですから、タイヤが取れる状態までジャッキアップできていればいいのです。
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それ以上は無駄……というか、リスクが増えるだけ。
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そういうことです。タイヤが浮いて、タイヤの下に手が入るくらいのスペースができる位まで上がったら、ジャッキアップは十分です。
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タイヤが完全に持ち上がったら、ホイールナットを完全にゆるめて外します。
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この状態はすでにホイールナットはゆるんでいますから、ゆるめる順番は気にしなくても大丈夫。
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手でやってますね。
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すでにゆるめてあるので、あとは手回しでも取れますよ。工具を使って回すより、ラクだし早いです。
この位のジャッキアップ量で十分
タイヤを取り外すときの注意点
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ホイールナットを外したら、あとはタイヤ&ホイールを外しますが……
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今のこのホイールがナナメっている状態でそのまま引っ張ると、ネジ山がガジガジになります。
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最後まで丁寧に作業しましょう。
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タイヤを真っ直ぐに立てた状態で、そのまま水平に引き出してください。
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タイヤが外れました〜!
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なお、タイヤを外した状態でちょっと間を空けるような時は、外したタイヤを腹下に入れておきます。
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これ、なんのためにやっているの?
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ジャッキはいつ倒れるかも分かりません。ウマもかかっていませんので、例えばパンクしてスペアタイヤに交換するときなんかも、本当はこうやるのが理想です。
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大切なホイールをタテに使うんだ。
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大切なのは、何が起こっても人間がケガをしない状況を作っておくことです。その次に車体を守ること。
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こういう保険まで含めて、安全なタイヤ交換方法ってことですね〜。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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