ヘッドライト光軸調整をDIYで正しく行う方法
ヘッドライトをHIDやLEDに交換した場合、光軸がズレたままだと対向車に迷惑がかかる。しかしやり方さえわかれば、光軸調整はDIYでできる。正しい光軸に戻す方法を解説します。
光軸調整をする前にレベライザーを0にする
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光軸調整をやるときは、マニュアルレベライザー車の場合はレベライザーの数値を「0」(ゼロ)にしておきます。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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このダイヤル、そういえば室内で見かけますが……何でしたっけ? というか、コレについて考えたことなかった。
●レポーター:イルミちゃん
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後ろに重たい荷物を積んだ時など、光軸が上向きになってしまう。それを下方向に調整するためのレベライザーです。ダイヤル付きなのは、手動の「マニュアルレベライザー」ってことです。
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光軸調整とは違う?
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レベライザーは、あくまでも一時的に光軸を下げるためのものですからね。
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そっか。レベライザー調整っていうのはあくまでも応急処置なんだ。
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そうなんです。「バルブ交換時にやるべき光軸調整」は、ヘッドライトの灯体自体のリフレクターの向きを微調整する作業を指します。
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なるほど。本来の光軸調整の作業は、ヘッドライト側でやるんですね。
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ハイ。しかしそれをやる前に、マニュアルレベライザーのダイヤルを「0」に戻しておかないと「基準がズレてしまう」のです。
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ところでこのダイヤル、知らないうちに回してしまっている人も多い気が……。
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そうですね。でも「4」にしたから明るさが変わるなどということはなく、光軸が下向きになってしまっているので、これを機会に「0」に戻しておきましょう。
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「0」が本来の光軸の状態なんだ。
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なお最近の純正HIDや純正LED車なら、オートレベライザー付きで自動調整します。そういう車の場合は何もせず、すぐに光軸作業に入ってOKです。
マニュアルレベライザーのダイヤルはココ
ハロゲン車の場合、ステアリング右のスイッチ類の中にレベライザーのダイヤルがあることが多い。
マニュアルレベライザーなら「0」にしておく
ダイヤルで調整。これで光軸調整前の準備OK。
バルブ交換前の純正の光が基準になる
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光軸調整するのは当然、HIDやLEDバルブに交換したあとですよね。ではまずバルブ交換を……。
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ちょっと待った。
「バルブ交換前にやること」があります。 -
え?
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光軸調整するときに基準となるのは、もともとの純正ハロゲンバルブの配光です。
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フムフム。
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だから、純正ハロゲンバルブを外す前に、純正状態のカットラインをマーキングしておくといいんですよ。
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ほほう。
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そのあとでバルブ交換して、「最初の純正のカットラインに合わせるように」光軸を調整していけばいいのです。
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なるほど!
そうやれば純正と同じ光軸に戻せるんだ。 -
順番的には「純正のカットラインをマーキング」→「バルブ交換」→「光軸調整」という流れになりますね。
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でも純正のカットラインをマーキングって、どうやるんですか? 相手は光ですよ???
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カンタンですよ。壁や白いボードに、ヘッドライトの光を当ててみればいいのです。いわゆる、壁ドン(※)ですね。
(※)壁にヘッドライトの光をあてて配光を見ることを指す。
純正状態で壁にドーンと照射
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このとき至近距離だと誤差が大きくなるので、距離は遠いほうが理想です。でも遠すぎると照射が弱くなるので、3メーター程度がいいかも知れません。
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今回の実験での壁までの距離は、約2.5メーターです。
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壁に対して車体を垂直にして、真っ直ぐ光を当てるのもポイント。
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ナナメに当てるのはダメってことですね〜。
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そしてこの状態で、純正カットラインをマーキングしておきます。
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このときカットライン上の、左上がりのラインが立ち上がるL字の部分(エルボー点)を2箇所マーキングしておくといいですよ。
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カットラインを全部マーキングする必要はない?
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ライト左右分のエルボー点(2箇所)さえ押さえておけば、上下左右のズレが分かるので、問題はないです。
カットラインをテープ等でマーキング
バルブ交換後に光軸調整
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続いてバルブ交換。やり方は、こちらの記事(↓)が参考になります。
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純正のカットラインをマーキングした位置のまま、車を動かさずにバルブを交換。そして再び照射して、配光をチェックします。
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わずかながら、テープの位置より上まで光が飛んでしまっていますね。
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そうですね。光源の位置が純正とまったく同じではないので、こういうズレが生じるのです。
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で、どうやって光軸を動かすかという話ですが…
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ヘッドライトに光軸調整用のネジがあるので、それを探します。ネジは2箇所あります。
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2箇所もあるのか。
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「リフレクターを上下方向に動かすネジ」と「左右方向に動かすネジ」で2つ。ネジはヘッドライト裏側のどこかにあります。
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2本のネジで、リフレクターを上下左右に動かせるようになってるんだ。
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よく見ると、片方はレベライザーで動かすためのモーターが付いているはず。「モーターが付いている側=リフレクターを上下方向に動かすネジ」となります。
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じゃあ上下方向だけ動かしたいときは、片方のネジだけ回せばよい?
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いや、そう単純でもない。上下と左右にきっちり分かれて動くものではなく、対角線上に配置されていて「上下だけ動かそうとしても、リフレクターがナナメに動く」ので、左右方向も微調整が必要です。
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なるほどぉ〜。
光軸調整用のネジ【その1】
まずひとつ目はココ。
光軸調整用のネジ【その2】
もうひとつも、すぐ見つかった。
ネジは少しずつ回すこと!
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光軸調整用の専用ツールも売られていますが、ネジを回せればいいので普通のドライバーでも作業はできます。
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へぇ。
そんなのまであるのか。 -
一般ユーザーは普通のドライバーでやると思いますが、「長いドライバー」でないと届かないケースが多いです。ドライバーを意外な向きから差し込む構造が多いので。
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持ち手の部分が当たってしまうんですね。
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今回のモデル車・ハスラーの場合はこのネジを回すことで主にリフレクターが上下方向に動きますが、同時に左右も少しズレました。
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一気にたくさん動かすと光軸がメチャクチャになってしまいますので、壁の照射を見ながら少しずつ回します。
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なるほど。軸が短いと届かないってこういうことか。
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長さがあって、軸が丸いタイプのドライバーを使いましょう。軸が六角のタイプだとネジがうまく回りません。
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わ〜。
ピッタリになりましたね! -
これで純正のカットラインと揃ったので、対向車に迷惑な光が飛んでしまう心配はいりません。きちんと路面を照らすようになるので、明るくもなります
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バルブ本来の性能が出し切れるんだ。
光軸調整専用の工具も存在する
✔ 光軸調整専用の工具が、普通のドライバーとどう違うのか? という疑問を持った人は、「光軸調整の専用工具〈光軸調整レンチ〉の存在は、知らない人も多い」参照。
ドライバーを入れる方向は車種によりいろいろ
拡大!
ドライバーをミゾに差し込んで回転させると、調整ネジが回ってリフレクターが動く。
左右方向のネジも回して微調整
ドライバーを入れる方向がまったく違う。
長いミゾの先にネジがあるパターン
ドライバーの軸に長さがないと、そもそもネジまで届かない。
エルボー点を純正位置に揃える
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF(http://www.ipf.co.jp/)企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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