>>> バネ交換ガイド(第10回)
アッパーマウントの外し方╱バネの交換方法
車高調のバネ交換のやり方・フロント編(ストラット式)。アッパーマウントを外してバネを交換するので、作業としてはほぼアッパーマウントの外し方だ。なお外した後、戻し方についての重要な注意点もある。
フロントのバネ交換は、アッパーマウントを分解しないとできない
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「車高調のバネ交換方法」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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前回はリアバネの交換方法を紹介したので、今日はフロントのバネ交換方法です。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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フロントのほうが、難しいっていう話でしたよね。
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難しいというか、リアに比べると手間がかかりますね。
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ふむ。
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フロントの足回りは、ストラット式の車が多いです。
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この場合はまず、ストラット(ショック&バネ)全体を外さないとバネ交換はできません。
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フムフム。
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その上でアッパーマウントを外して、バネを抜き取って、入れ替えるという作業手順です。
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つまり、アッパーマウントの外し方を知らないとできないんだ。
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そうですね。アッパーマウントをDIYで分解してトラブる人もけっこう多いので、注意が必要な作業です。
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なお、ストラット自体を車から取り外す方法は、下記記事で詳しく解説していますので、ここでは省略します。
✔ ストラット式ってなに? という人は、「ストラット式サスペンションの仕組みと、キャンバー角の動き」参照。
車高調のアッパーマウントの外し方
プリロードがかかっていない状態にする
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それではここから、車高調のアッパーマウントの外し方(分解方法)です。
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アッパーマウントの分解は、バネにプリロードがかかっている状態(つまりバネが縮んでいる状態)だとスプリングコンプレッサーが必要になりますが……
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え!?
そんな特殊工具がいるの? -
ただ、車高調のバネ交換の場合は、スプリングシートを下げればプリロードのかかっていない状態にできますよね。
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プリロードがかかっていなければ、そのままアッパーマウントは外せます。
●純正サスペンションでバネだけをダウンサスに交換するケースでは、バネをギューっと縮めた状態にしないと、アッパーマウントが外せないため、スプリングコンプレッサーが必要になる。
●しかし、スプリングコンプレッサーは使い方を誤ると危険なので、DIYでのダウンサス取り付けは難易度が高い。比べると車高調のバネ交換のほうが難易度は低い。
アッパーマウントのボルト&ナットの外し方
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アッパーマウントのトップの部分には、ナットが付いています。
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このナットを外しますが、ショックのシャフトの延長線上に付いているから、トップをゆるめようとしても供回りしてしまいます。
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シャフトといっしょに、クルクル回ってしまうんですね~。
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それでよく、インパクトレンチで無理矢理ダダダーってやったりもする(=少しずつ回る)んですが……ショックに対して、あまり良くないです。
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では、どうやって外すの?
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てっぺん部分に押さえるところが付いているので、そこをレンチで押さえながら、もう1本のレンチでナットを回すのです。
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ここ(↑)ではてっぺんをモンキーレンチで抑えながら、スパナでナットを回しています。
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そうすると、アッパーマウントを固定しているナットが外れます。
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細かい部品は車高調によって多少違いがありますが、ワッシャーがあればワッシャーも外します。
アッパーマウント、ベアリング、アッパーシートを外す
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トップに付いていたナットを外せば、アッパーマウントは手で抜けます。
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ブッシュ式のアッパーマウントの場合は、ベアリングが入っています。
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そして、バネのアッパーシートを取ります。
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アッパーシートが取れれば……
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バネが抜けます。
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これでバネの交換ができる!
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なお、車高調のバネは、上下の向きが決まっているものと、決まっていないものがあります。
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フムフム。
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上側が平らになっていて、下は切りっぱなしとか、中には上と下でID(径)が違うバネもありますので。
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バネの上下が決まっている場合は、間違えないようにしましょう。
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このように手順だけ紹介すると、そんなに難しい作業ではないのですが……
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アッパーマウントのナットさえ取れれば、手でポンポン抜いていくだけでしたね。
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しかし、そこには重要な注意点もあります。
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え……? そんなのあった???
アッパーマウントを分解する前の注意点!
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最後に、アッパーマウントを分解するときの重要な注意点を言っておきます。
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なんでしょうか?
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部品は、アッパーマウントだけではありません。間にベアリングも入っているし、入れる順番があります。
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フムフム。
それで? -
なにも考えずにポンポン外すと、戻す時に困ることになりますよ。
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あ~!
順番が分からなくなるっていう。 -
そうです。アッパーマウントの組み方(戻し方)が分からなくなるというのは、DIYではけっこうありがちですよ。
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細かい部品は車高調によって多少違うし。
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ピロアッパーマウントは単純なのでまだいいんですが、問題はブッシュ式。
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何が違うの?
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ブッシュ式のアッパーマウントは、間にベアリングが付いているから、これは絶対に付け間違えてはいけないパーツです。
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ハンドルを切ると足回りはナックルと共に回転しますが、アッパーマウントは固定されていて動かない。だから、間にベアリングが入っているのですから……
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ベアリングを入れ忘れたりすると、こんな事態(↓)が起こったりします。
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馴れている人には「ベアリングが入っているのは常識」でも、一般ユーザーからしたら、初めてみる部品ばかりだから……
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見ても、何だか分からないかも?
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そうなんです。ぱっと見で、それをベアリングだと思ってない人は多いです。
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見た目だと単なるワッシャーみたいな感じだし。
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そうです。なんだこれ? みたいな感じで、逆向きに無理矢理挟んでいるようなケースも見たことあります。
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ベアリングがうまく回転しなかったら、大変なことになりますね。
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アッパーマウントを分解していくときは、各部品の順番と向き(上下)が分からなくならないようにしましょう。順番に並べておくとか……。
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スマホで写真・動画を撮っておく、なんていう方法もありますね。
アッパーシートとアッパーマウントの間に、ベアリングがある。
こんなのもあれば……
こんなのもある……
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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