DIYラボ

ソケットレンチのクイックスピンナーとは何か？そのメリットとデメリット

ソケットレンチの駆動工具の一種であるクイックスピンナー

ソケットレンチの駆動工具の一種・クイックスピンナーについての解説を、クイックスピンナーを普及させてきたメーカーでもあるKTCに聞く。どういう位置づけの工具なのか？またクイックスピンナーのデメリットも知っておきたい。

クイックスピンナーはラチェットハンドルのオプション的存在

「ラチェットハンドルの使い方で、ヘッド（頭）を持って早回しするのは正解？」の続き。

●レポーター：イルミちゃん
ねじの「ゆるめ始め」や「最後の締め付け」以外は、ラチェットハンドルのヘッドを持って回すほうが早い、という話をしましたが、その話の流れで登場してくるのがクイックスピンナーです。

●アドバイザー：KTC トリー研究員
クイックスピンナーとは？それもソケットレンチのハンドルなの？

●DIYラボ別館ユキマちゃん
ラチェットハンドルとソケットの間に取り付けるオプションのようなものです。

KTCのクイックスピンナー

KTCの9.5sq.クイックスピンナ

ラチェットハンドルのヘッド部分よりもひとまわり大きいので、これを持ってクルクル早回しできるんです。
あ、ラチェットハンドルを振る必要がないんだ。
そうなんです。ねじのゆるめ始めと、最後の締め付け以外はクイックスピンナーだけで回すほうが、作業としては圧倒的に早くなります。
ラチェットハンドルみたいに、戻るアクションもないんですね。
ヘッドを持って回す使い方より、さらに高速な早回しができるのね。
クイックスピンナーの機能は2つありますが、ひとつはこの早回し。
もうひとつは？
供回り（ともまわり）の防止です。
供回りの防止？
なんのこと？
ラチェットハンドルは、空回りするときは基本的にソケットは動かずにハンドルだけが動く（戻る）仕組みですよね。
一方向にしか回らないラチェット機構の仕組みは以前に勉強した通り。
しかしたまに、戻すときにハンドルといっしょにソケット自体も回って（戻って）しまうことがあります。それを供回りといいます。
戻すときにいっしょにソケットが回ってしまったら、ねじもいっしょに回ってしまうよね。
そうなんです。締める→ゆるめる→締める→ゆるめるみたいな動きになるので、いつまでたっても締まらない（ゆるまない）ことになります。
なんでそんな現象が起こるんでしょう？
これは噛み込みとか、相手の状況とか、いろいろな条件が重なって起こるんですが……ラチェットハンドルで作業していると、ときどき起こります。
それがクイックスピンナーで対策できるの？
クイックスピンナーを持って抑えておくことで、供回りを防げるんですよ。
あー。
そういうことか。
クイックスピンナー、いいことづくめじゃない。
そうとは言えません。デメリットは当然あります。いつものことですが、便利工具には裏がある。

クイックスピンナーのデメリット

クイックスピンナーのデメリットは、なんといってもまず厚みが増えてしまうことです。
ラチェットハンドルとソケットの間に挟むんだから分厚くなる。
ただでさえ大きいラチェットハンドルの頭がさらにデッカクなってしまうと……ジャマなときもあるか。
ちょっとでもコンパクトな状態で使いたい人は、クイックスピンナーは使わないでしょうね。
なるほど、なるほど。
それから、これは特にKTCの場合は……なのですが、KTCのラチェットハンドルにはユニオン機構（※）が付いています。
ユニオン機構とは、ソケットが脱落したりしない安全機構のことでしたね。

ラチェットハンドルとソケットの脱着部分

✔ 詳しくは「別メーカーのソケットとラチェットを組み合わせても（相性）問題はないの？」参照。

>>>リンク先で詳しく読む。

しかしクイックスピンナーにはそんな機構はありません。
ということは…？
ラチェットハンドルとクイックスピンナーの接合部は外れることはないけど、クイックスピンナーとソケットの接合部ではユニオン機構は働かないわけです。
つまりソケットが取れたりするかも。
そういうことになるか。
ただ、ユニオン機構はKTCのラチェットハンドルの独自機構ですから、その状態で「一般的な駆動工具と同じ」とは言えます。
KTCのラチェットハンドルを使っている人は、その点ではちょっと損をするという。
そういうことですね。
KTC的には、本当は使ってほしくないとか？
いや、そんなことはありません。クイックスピンナーを使うかどうかは、完全に好みの問題かと。
なるほど。
そもそもKTCはこのクイックスピンナーを早くから工具セットにも取り入れて、普及させてきたメーカーでもありますから。

※製品名称である「クイックスピンナ」は、KTCの登録商標。

へー！
そうなんですね。
単体で発売した頃は「使い方がよく分からないが、これはなんなのか？」という問い合わせがよくありましたが……
分かる気がする。
KTCが工具セットに標準的に入れるようにしてから、一般の方にも広く知られるようになっていったんです。
今のはKTCがクイックスピンナーを広めた、っていう自慢ね、つまり。
おい。
言い方……
……。

「ディープソケットとエクステンションバーは、どう使い分けるのが正解？」に続く

イルミ

KTCのトリー研究員

DIY Laboアドバイザー：トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど！工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生体質。

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