独自形状を極めた工具! KTCのプロフィットツール
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KTCのプロフィットツールは、工具業界の常識破り。過去の概念にとらわれず、実際の使い手である職人の方を向いて作ることが優先された結果としての、独自形状。その理由を知ると、「確かにそのほうがいいかも」と思う人も多いはず。
KTCのプロフィットツールは、普通の工具とは形状も違う
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「KTCのプロフィットツールは、普通の工具と何が違うのか?」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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プロフィットツールが、他の工具とはぜんぜん違う考え方で軽量化されていることはよ〜く分かった。
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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実は、工具としての形状もまた、独自路線を行っているのです。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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そういえばスパナとかめがねレンチって、どれも同じような形状だもんね。
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めがねレンチやスパナといった古くからある工具は、JIS規格がベースになっているものが多いので、通常は大きく形状が異なることはないんですよ。
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なるほど。
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例えばスパナの柄は真っ直ぐで、コンビネーションレンチのめがね側には15度の角度が付いている。これもJIS規格に沿った要素です。
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どおりで……スパナとめがねレンチは、メーカーごとの差があまり感じられないはずだ。
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まあ、そんな中でも、オフセットのバリエーションなどには変化もありますが。以前に勉強しましたね。
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KTCのめがねレンチのオフセットは、独自に進化させた形状でしたよね。
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しかし、プロフィットツールは、いろいろな意味でもっと大胆に、独自形状を極めたものになっています。
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ほほう。
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例えばスパナ。片側は普通のスパナと同じストレートですが、片方は曲がっています。こんなスパナは他にはないんです。
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おお、曲がっているほうが手が入るスペースがあって、回しやすそう。
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その通りです。平べったいところでスパナを回そうとしたときに、手の入るスペースを確保できます。
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普通のスパナにはそれがないのが欠点なんです。
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……それはいいけど、なにかヘンな話ね?
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なによ?
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この形状だと、例えば10ミリの口径部はまっすぐだけど、12ミリは曲がっているみたいな話になるから、それってどうなのかなと?
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そこも独自形状でして、プロフィットツールのスパナは、両側の口径部とも同じサイズなのです。
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なにィ!?
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「8×10」とか、「10×12」っていう発想ではなくて「10×10」ミリってことか。
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工具業界の常識を完全無視するとは。
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(ユキマちゃんが常識をうんぬんするとは……)
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……悪くないわね、プロフィット君。親近感わく。
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通常の「8×10」「10×12」等のサイズバリエーションは、ねじサイズが不明のときは便利です。しかし、ねじのサイズが10ミリだと分かっているなら、10ミリ以外は不要です。
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確かにそうだ。
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それならば、同じ10ミリで2つ形状があるほうが「状況に応じて回しやすいほうを選ぶ」使い方ができて便利です。
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作業場所によって、2つの形状を使い分けるってことか。
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だいたいのねじのサイズを把握できているプロにとっては、そのほうが都合がいい。それがプロフィットツールの発想ですね。
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そういう意味でもプロ向け、ってことか~。
KTCのプロフィットツールスパナ
プロフィットツールめがねレンチの特長
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プロフィットツールのめがねレンチも、同じ考え方で作られています。
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「10×12」とか「14×17」ではなく、左右とも同じ口径サイズになっている。
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さらにオフセットについても、KTCのめがねレンチとは異なります。
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KTCの標準的なめがねレンチは、45度×6度の2段階(↓)でしたね。
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一般的な45度めがねレンチの進化版ともいえるカタチでしょ?
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そうですね。口径部付近の高さを抑えるいっぽうで、柄は平行に近くて力をかけやすい形状です。
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標準モデルでも、十分イイトコ取りはできている……
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ただ「柄をなるべく平行にする」を優先して、手の入るスペースを最小限に抑えているため、平らな場所にあるねじを回す場面では、指が作業面に接触することもあります。
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いっぽう、プロフィットツールのめがねレンチの場合、片方は45度×15度です。
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KTCの標準モデルより、柄の角度が大きいんだ。
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45度×15度だと、手の入るスペースには余裕があり、指は作業面に接触しません。また、少し凹んだ場所にあるねじも回せます。
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確かに、KTCの標準モデルより手の入るスペースに余裕があります。
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でも柄の角度が増えることには、デメリットもある。
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「平行に近いほうが力をかけやすい」点では、標準モデルに軍配が上がりますね?
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しかし、プロフィットツールは反対側の形状が異なります。片側は1段階だけ曲がり、柄の角度は15度となっています。
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つまり、15度めがねレンチね。
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15度は普通のコンビネーションレンチと同じ。でも口径部からすぐ角度が付くのではなく、平行に柄が少し伸びた先に角度が付いているため、口径部と平行に力をかけやすいのです。こじるような力がかかりにくい。
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オフセットが必要ない状況なら、1段階だけ曲がっている方を使ってね、ってことか。
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こちらのほうが、先端付近の上空はさらにコンパクトだしね。
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そういうことです。
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以前勉強したオフセットレンチのバリエーションの、イイトコ取りをしているんだ。
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両側とも口径部が同じサイズで、2種類の形状が採用できるからこそ……の手法と言えます。
KTCのプロフィットツールめがねレンチ
KTCのめがねレンチ
プロフィットツールコンビネーションレンチはさらに独創的な設計思想
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コンビネーションレンチにいたっては、さらに独自形状を突き詰めたものとなっています。
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え~っと、コンビネーションレンチの場合、一般的な形状だとどうなっているんだっけ?
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スパナ側は真っ直ぐで、めがねレンチ側だけ15度の角度が付いている。
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これがプロフィットツールになると、どう変わるのか。
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めがねレンチと同様に、口径部から平行に柄が少し伸びてから、角度が付いていますね。
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さらに、めがねレンチの口径部のサイズによって、柄の角度が変わるんですよ。
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え?
角度がバラバラなんだ。 -
そもそも柄に角度を付ける目的は、平べったいところで回すときに手の入るスペースを確保するためですが、レンチ類はサイズによって柄の長さが変わりますよね。
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口径部が小さいほど短く、口径部の大きいものほど柄も長くなるんでしょ。
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そうです。そして柄が長いものほど、角度を浅くしても、手の入るスペースを確保できます。
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あー、そういうことか。
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15度も傾斜を付けなくても手の入るスペースが確保できるなら、もっと角度を浅くして、柄を水平に近づけたほうが、真っ直ぐに力をかけやすい。
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そうか。全サイズ共通で15度だとすると、大きいサイズでは無駄も多くなるんだ。
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逆に、柄が短い8ミリくらいまでのコンビネーションレンチは、15度では手が入るスペースとしては不十分で、18度くらいまで上げておかないと手が入りません。
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サイズによって、理想の角度は変わってくるね。
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プロフィットのコンビネーションレンチの場合、小さいサイズは角度がきつく、14ミリサイズで標準的な15度となり、そこから先はどんどん角度は減っていきます。
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大きいサイズになるほど、一般的なコンビネーションレンチより、真っ直ぐ力をかけやすいんだ。
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こういった点でも、独自性を持って作られているのがプロフィットツールの特長です。
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普通のKTCバージョンより、ある意味では、よりKTCっぽいと言うか……。
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「職人に向けた工具」がコンセプトなので、こだわりを追求した製品になっています。結果的にそれが受け入れられて、息の長い人気シリーズになっていますよ。
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前回の話の通り、使い方を間違えるとデメリットもあるから、本来は一般ユーザー向けではないのですが……
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しかし、トリー研究員が「スパナ&めがねレンチ講習」の最後にコレを出して来たのは……なんで?
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この連載で、工具の正しい使い方を勉強されているユーザーさんにこそ、ぜひ使って頂きたい工具ではありますので。
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分かる。
それ、私のことね。 -
……え?
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プロフィットツールは、スパナ&めがね講習を修了した、私にこそ相応しい工具。ユキマフィット的な?
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いやぁ、トルクに対する意識が低いユキマちゃんにはちょっと向いていないかと。
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そうですねぇ……。
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……。
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プロフィットは、あくまでも工具の扱いを分かっている人向けではあります。
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まだまだ工具を分かっていないユキマちゃんには不向き、ってことになるわね。
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さんざん見せびらかしておいて、なんなのよッ!!
KTCのコンビネーションレンチ
プロフィットツール
14ミリのコンビネーションレンチ。
8ミリのコンビネーションレンチ。
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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