めがねレンチの選び方。柄の角度は何度がいいのか?
めがねレンチの選び方。めがねレンチの持ち手になる「柄」にはいろいろな角度があり、前回はそれぞれの違いを学んだ。その中で自分に合うのはどれなのか。1種類だけ買うとしたら? 最初の1本のオススメは? という視点で、KTCに取材した。
0度のストレートめがねレンチを選ぶメリット
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●レポーター:イルミちゃん
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それでは、前回の話をふまえて、めがねレンチの「形状・角度」の選び方について解説しておきます。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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いろいろな角度のめがねレンチがあるから、どれがいいのか分からなくなるもんね。
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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まず、手の入るスペースを確保しなくていい場合。つまり工具が浮いている状態で使うなら、ベストな選択はストレートめがねレンチです。
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ストレートめがねレンチは、回転軸と手をかけるポイント(力点)が同一線上なので、力がかけやすいし、力のコントロールもしやすいのです。
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ナルホド。
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柄に角度が付いためがねレンチは、使いやすく工夫されているとは言っても、回転軸と力をかけるポイントがズレています。その点を意識しないと、こじるようなことになりがちです。
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その点、ストレートめがねレンチは、何も考えずに回すだけでいい。
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もうひとつメリットを言うと、ねじの上空の隙間が小さくても使えます。
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ホホウ。
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めがねレンチはスパナと違って、必ず「上からねじにはめ込む」必要がありますよね。
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……ということは、ねじの上側には必ず空間が必要ですが、この点で一番有利なのは、ストレートめがねレンチなのです。
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柄がナナメだと、上側に当たってしまうから。
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そうですね。極論を言ってしまえば、ストレートめがねレンチが使える状況であれば、ストレートめがねレンチを使うのがベスト、ということです。
KTCのストレートロングめがねレンチ
一般的な45度めがねレンチと、KTC流の45度×6度めがねレンチは、どっちがいいの?
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ストレートめがねレンチのメリットは分かったけど……
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しかし、そうはいっても現実は、手の入るスペースをつくったり、手前にある障害物をよけるためにオフセットレンチが主流になっているんですよね。
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口径部をオフセットさせためがねレンチの定番は、45度めがねレンチです。
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ただ、KTCが独自に進化させた45度×6度めがねレンチもある。
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KTCはどっちもラインナップしているけど、どっちを選べばいいの?
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自動車整備に使うのであれば、口径部付近がコンパクトな45度×6度めがねレンチがいいですよ。
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KTCのラインナップは、基本的には自動車整備を中心に考えています。スタンダードモデルに位置づけている45度×6度めがねレンチは、ようするに「車向け」のめがねレンチなんですよ。
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狭い環境で作業しやすいめがねレンチってことですね。
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だから、KTCの標準モデルは45度ではなく、45度×6度なんだ。
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ちなみに、45度×6度めがねレンチは、一番最初はネプロス(※)が採用した形状だったんですよ。
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ネプロスは最初から、車の整備士のために開発されている工具だからか~!
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ハイ。それが、今日ではKTCのめがねレンチにもフィードバックされているのです。
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車いじりなら、45度×6度のめがねレンチが大本命なんですね。
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……では、そのKTCが45度めがねレンチを未だに売っているのはナゼなの? いらないのでは?
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そこは使い手の好みの問題もあります。
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45度めがねレンチは、狭い場所においては扱いにくい場合もありますが、柄が水平なため力がかけやすく、好む人も多いのです。
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そういう棲み分けがあるのかぁ。
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では、どっちがいいかと聞かれたら……
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そこは作業環境と、好みの問題ですね。
KTCの45°ロングめがねレンチ
KTCの45°×6°ロングめがねレンチ
狭い場所ではこの差が効いてくる
※ ネプロスは、KTCの上位ブランド。
✔ 21世紀バージョンツールとして登場した、2000年以降のKTCでは、45度×6度めがねレンチが採用されている。
あえて15度めがねレンチを選ぶメリットは?
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こうなってくると、柄が真っ直ぐでもないし、かといって(厳密には)オフセットレンチでもない15度めがねレンチの存在意義がいよいよ謎ね。
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確かにね。
このタイプを選ぶメリットはなんでしょう? -
15度めがねレンチは、ねじの上空スペースが極端に狭く、かつ、手を入れる隙間もほしい場面に向いています。
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そうか。口径部付近のコンパクトさで言えば、0度のストレートめがねレンチに迫るものがある。
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ただ、15度めがねレンチが理想的……という場面はレアケースですけどね。ほとんどの場合は、45度×6度の標準めがねレンチで作業はできますので。
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何種類も持っていて、使い分けるならいいかも知れませんが……
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車をいじる人が1種類だけ買うなら、やっぱり45度×6度めがねレンチが一番バランスが良さそうね。
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45度×6度めがねレンチと、ストレートめがねレンチが両方あったら、言うことなしですね。
KTCの15°ロングめがねレンチ
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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