スパナの正しい使い方╱正しい向きは?
スパナの正しい使い方・正しい向きを解説。「ねじをなめずに外せたら、それでOK」「スパナは頑丈そうだから」と、なんとなくで扱われることも多いスパナについて、改めて理論的に考える。
間違った使い方をすると、スパナの体力ゲージが少し減る
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「スパナを回す振り角(回転角度)は60度? その話には裏がある」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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今日はスパナの正しい使い方を勉強します。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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……。
(ねじにかけて回すだけでは?)●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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ユキマちゃん、顔に出てるわよ。
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正しい工具の使い方で、よくこんなフレーズ(↓)を耳にすると思うんですよ。
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当たり前過ぎる話ね。
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という風に、アタマでは分かっている人が多いとは思うのですが。
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ナナメがけがダメなのは、誰の目にも明らかですね。いかにもねじをなめそう。
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でも、そのいっぽうで「ちょっとぐらいはナナメだったり、奥まで入っていなくても……」という気持ちの人が多いと思うんですよ。
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ふむ。
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奥まで差し込むのが正解ではあるけど、そうはいっても……みたいな。
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そうよね〜。完全に奥までスパナを入れなくても、二面幅をとらえていればねじは回るんだし。
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ダメなんですよ、それ。
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い、今のは誘導尋問では???
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カンタンにのっかるユキマちゃんが悪い。
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でも、ねじをなめずに外せたなら、結果オーライでは?
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そう思うかもしれませんが、ナナメがけや浅がかりで回すとねじを傷める可能性があるだけでなく、工具にも負担が大きいことは、意外と知らない人が多いと思います。
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ほほう。
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スパナって、かなり丈夫そうに見えるけど。
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もちろんすぐにどうにかなるという話ではないんですが、目には見えない負担が工具に溜まっていきます。
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スパナに体力ゲージだと???
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スパナのヘッドの形状は、強度が必要なところが肉厚で、そうでないところは薄くなっています。
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そういえばスパナは、単なる円形ベースではありませんね。「やり形」っていうのか。
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こういう形状も含めて、正しくねじにかかった状態で強度が出るように設計されているので、接触面積が少なくなると負担がかかるんです。
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ホホウ。
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「ナナメがけ」「奥までかかっていない」「浮いた状態で回す」などの使い方を頻繁に行っていると、工具が壊れる原因になります。
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こういうスパナの使い方(↓)のことですね。
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こんな間違った使い方をすると、スパナの体力ゲージが少し減るんだ。ナルホド。
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か、回復させるにはどうしたらいいの?
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もちろん、「外れやすくなるから危ない」という問題もありますね。
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確かに。
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……私のことは無視ですか。
回復の呪文とかは、ナイってことね。 -
スパナを回すときのコツは「柄を平行に回すこと」だけを意識するのではなくて、「口径部がしっかりボルトに接触していること」を意識するのが大切なんです。
✔ しっかり奥まで差し込む
✔ ナナメがけは、しない
スパナの体力ゲージが減っていく、というふうにイメージしてもらうとよいかと
✔ 現行モデルのKTCのスパナはネプロスから受け継いだ「新やり形」。
✔ 従来の「やり形」よりヘッドが小さく世界最小クラスに仕上がっているいっぽう、力のかかる部分はボリュームアップしており、まさに無駄のないフォルム。
3大間違ったスパナの使い方
①ナナメがけ
②奥までかかっていない
③浮いた状態
スパナをねじにかけるときの向き
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スパナをねじにかけるときの、「向き」についても知っておきましょう。
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向きって?
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前回、スパナの口径部は、柄に対して15度の角度が付いている、という話をしましたよね。
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つまり、ねじにスパナをかけるときは、アゴが下向きになるかけ方と……
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アゴが上向きになるかけ方があります。
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オモテ面もウラ面も使っていいって言うくらいだから、どっちでもいいってことじゃないの?
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狭い場所でスパナを回すときの話はさておき、原則としては、スパナを回す方向にアゴを向けるのが正解です。
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ねじをゆるめるときは回転方向が逆なので、スパナの向きも逆になります。
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どっちの場合も、回す方向にアゴを向ける、という意味では同じですね。
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なんでコレが正解なの?
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この向きのほうが、スパナが抜けにくいからです。
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なるほど。
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「スパナを回す方向とは反対方向にアゴが向いている」と、回していった先で抜けやすくなります。
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狭い振り角で回すときは大差はありませんが、大きな振り角で回せる状況で、スパナが身体に近づいてきたときに、差が出ます。
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言われてみればそうかも。
実際に振ってみると分かる。 -
スパナの回転に合わせて、人間も回転しながら回すなら別ですけど……
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そんなヘンな回し方しませんね。
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作業者の身体は固定した状態で、腕の動きだけでスパナを回す都合上、抜けやすくなる角度がやってくるのです。
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確かに、そうなる。
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スパナのアゴの向きが回転方向を向いていれば、抜けやすくなる角度に達するのを遅らせることができるんですよ。
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なるほどね~。
理論的だなぁ。 -
どっちでもいいと思っていた!
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このへんは、テキトウにやっている人も多いかも。
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それと、これはスパナに限らずレンチ類全般に言えますが、自分の身体に近づける向きで回すのが、一番力をコントロールしやすい。この点も覚えておきましょう。
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へー。
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右利きの人は、右手にスパナに持って身体に近づける向きに回すと……ねじが締まるようになっていますよね。
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スパナのアタマの向きには、そんな意味があったんですね。
スパナの正しい向き(締めるとき)
スパナの正しい向き(ゆるめるとき)
こっちのほうが抜けやすい
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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