ボルト(ねじ)のアタマはなぜ六角なのか?
ボルト(ねじ)は、一般的には六角だ。四角ボルトや八角ボルトもあるにはあるが、スタンダードは圧倒的に六角ボルト。それはなぜか。理由がわかると、六角ボルト回す工具のことも深く理解できる。
ねじ(ボルト)が六角ではなかった頃から、スパナは活躍していた
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「スパナとは何か? 今どき必要性はあるのか?」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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スパナは、ねじ(ボルト)を回す工具としては、原始的な存在です。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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めがねレンチやソケットレンチより、歴史が古いのね。
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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めがねレンチやソケットレンチは六角ボルトを回す工具ですが、ねじのアタマは、最初から六角形だったわけではありませんので。
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ハイ。
ねじ講習スタートです。 -
じゃあ、最初は何角形だったの?
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棒状のねじの途中を削って、平行な面を2つ作った「二面幅」に工具をかけて回していたのが起源ですね。
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スパナなら、二面幅があれば回せる。
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つまりスパナは、その時代から使われていた工具なんですね。
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なるほど。
他の工具より歴史が長いって、そういうことか。 -
その二面幅を大きくしたほうが、より強い力がかけられるようになる。それで、今のボルトのようなアタマが生まれてくるのです。
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でも、二面幅のあるアタマを作るのが目的だったら、四角アタマ(↓)でいいのでは?
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しかし、今日のねじは、六角ボルトがスタンダードです。
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なぜ、四角ボルトは覇権争いに負けたの? けっこう可愛いと思うんだけど?
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四角よりも、六角のほうが二面幅が多いので、工具をかけやすいメリットがあります。
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四角アタマだとすると、90度ずつしかスパナがはまりません。
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確かにそうだ。
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六角であれば、60度ずつはめられるようになる。それで六角アタマのねじ……六角ボルトが標準になっていったのです。
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納得~♪
四角ボルト(四角アタマのねじ)
今でもあるが、どう考えてもスタンダードな存在とは言えない、マイナーな四角ボルト。
六角ボルトの二面幅は3つになる
四角でも八角でも十二角でもなく、なぜ六角ボルトがスタンダードなのか?
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……なにが『異議あり』よ!?
ビックリするじゃないの。 -
「四角ボルトより六角ボルトのほうが、工具をはめやすくてイイ」って言ったわね。
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言いましたが、なにか?
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その理屈なら、二面幅をもっと増やせばいいじゃないのよ!
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……ん?
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八角とか、十角とか、なんなら十二角とかどんどん増やせば、さらにはめやすくなるでしょ。
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そう言われてみれば……
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しかしそうなると、デメリットが生まれるのです。どんどん工具とねじの接触面積が少なくなる。
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むぅ……。
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工具をかけやすくなったあげく、なめやすくなっても……ねぇ。
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それは……困る。
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つまり、ねじ(ボルト)にとって六角が良い落としどころだったと言えます。
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バランスがいいから普及したんですね~。
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世の中には四角ボルトや八角ボルトも、あるにはあるんですけどね。
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???
八角ボルトなんてあるんですか? 四角は出てきたけど。 -
めったに登場しませんが、八角ボルトもありますよ。
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それ、接触面積が減るからダメって言ったばかりでは?
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しかし、サイズがとても大きいねじなら、八角でも問題ない場合もあるので。
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ほほう、なるほど。
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わざわざ八角にするメリットもあるってこと?
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八角のメリットを言うとすれば、六角よりも円に近くて大きい。大きいねじは、より強度があるとは言えます。比較すると六角は、削り落としてしまう部分が多くなります。
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二面幅の長さは減るけど、面積は大きくなる。
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そうです。だから一部の大きいねじだと、八角アタマも出てきます。
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なるほどね。ねじが100%六角ではないのは、そういう理由もあるからなんだ。
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ただ、大きいねじの一部例外を除けば、「ねじは基本的に六角が一番便利」。ですから、六角ボルトがスタンダードになりました。
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「ねじ(ボルト)はなぜ六角なのか?」という謎がすっきり解けたところで、再び、スパナ&めがねレンチ講習に戻ります。
カドが増えるほど二面幅が減る
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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