ねじサイズ表記の注意点。M(首下径)とアタマ(二面幅)は別モノ
「二面幅」も「首下径」も「M」も、ねじのサイズを表している言葉。1本のねじにサイズが複数ある……と聞くと、初心者的にはややこしい気がするが、慣れれば大丈夫。人間で例えると、胴幅や股下サイズなどがあるようなものだ。
ボルトのアタマのサイズは「二面幅」と呼ぶが、これは「ねじのサイズ」ではない?
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今日はねじのサイズ表記について。初心者の人が誤解しがちな点を、解説しておきます。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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ねじのサイズの話なら、前回(※)教わりましたよ。絶対タイクツだと思ったら、意外と面白かった!
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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出だしから失礼だな。毎回。
せめて小声にして。●レポーター:イルミちゃん
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前回、「車によく出てくる六角ボルトのサイズは、8・10・12・14・17・19ミリあたりが定番」みたいな話をしましたよね。
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それなら私もそろそろ、九九のように空で言えるようになったわ。はち・じゅう・じゅうに・じゅうよん……
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しかし、そのサイズは「正確に言うと、ねじのサイズではない」というのが今日のテーマです。
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ウソ教えたのッ!?
覚えたのに!! -
……ウソではありません。しかしそれは、工具の側から見たときのサイズですよね?
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あん?
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六角ボルトの場合、アタマの部分の「並行する2面の幅」が「対応する工具のサイズ」。ちなみにこの幅のことを、「二面幅(にめんはば)」と言います(↓)
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でも、これは工具を選択するときのサイズの話です。
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え〜っと、二面幅が12ミリのボルトなら、12ミリのレンチで外せる。
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そうですね。
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なにを当たり前のこと言ってるのよ!
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しかし、ねじの側からすると、ねじとは、本来はココの部分です。
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あ〜。
一番最初にならった、厳密な「ねじ」部分ですね。 -
そうです。つまり「ねじのサイズ」といえば、正しくはこのねじ部分の直径のことを指すのです。
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ボルトのアタマに対して、ねじを切ってある所は「首下」と言ったりしますが、この部分の直径を「首下径(くびしたけい)」と言います。
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いろいろな用語が出てくるなァ。
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あれ〜? てことは、12ミリ・アタマのボルトの首下径は何ミリなんだ???
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問題はそこです。工具の視点でモノを考えている先輩から「何ミリのねじ持ってきて」と頼まれたら、それは、六角ボルトのアタマのサイズ(二面幅)を意図している可能性が高い。
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確かに。
工具のサイズを言っていることが多いですね。 -
しかし、問題はそういう人から「12ミリのねじ買ってきてくれ」と言われたときです。
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……「12ミリ」ッスね〜。
了解ッス。 -
そして、ねじ屋さんに行って、「12ミリのねじをください」と言ったら、ここで話が変わってきてしまう。
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こ、これは……。
首下径が12ミリのねじが出てくるヤツでは!? -
普通に考えて、そうでしょうね。ちなみに首下径12ミリの六角ボルトのアタマは、車の小形ボルトに照らすと17ミリなんです。標準ボルトなら18または19ミリ。
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オイ! なんでこんな、デカイボルトなんか買ってきやがったんだオメーワ!?
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あれ〜??? ちゃんと12ミリのねじをくれって言ったのに、あのねじ屋め!
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なお、ここでその先輩が求めていたであろう、12ミリアタマの小形六角ボルトの首下径は8ミリです。
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……まぎらわし過ぎるッ!!
✔ 「ねじとは? ねじとボルトの違い」参照。
ねじの直径
首下径12ミリの六角ボルト
✔ ホームセンターなどに並んでいる一般的な標準六角ボルト(↑)だと、18ミリ/19ミリアタマとなっている。
※ ねじ屋さんは、もちろん間違っていません。
ねじのサイズ表記に出てくる「M」は首下径のこと
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エム?
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ねじのサイズを表すときに、M8(エムはち)とか、M10(エムじゅう)などと、Mに数字を付けて呼びますが……
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フムフム。
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そういう呼び方をした場合は、これはもう間違いなく、「首下径」つまりねじ山部分の太さを指しています。
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では逆に言うと、M8のボルトを8ミリのレンチでゆるめることはできないってことね。
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そうです。では「M8の六角ボルトは、何ミリのアタマ(二面幅)なのか」……それは前回話した通り、規格で決まっています。
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しかしMのサイズ表記を使うとき、逆に注意が必要なのは、前回紹介した小形ボルトと標準ボルトの違いです。
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M8でも、アタマは12ミリだったり13ミリだったりするという展開……。
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そうです。M8の六角ボルトを例にすると、自動車・バイク・それに関連する製品だと12ミリ(アタマ)が使われていることがほとんど。
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けれど、車やバイクはむしろ特殊だというお話でしたね。
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ハイ。普通の標準的なM8の六角ボルトの場合は、アタマは13ミリとなります。全てとは言いませんが、機械類、家具類などはほぼそうです。
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ということは、車業界において先輩から「M8ボルトを買ってきてくれ」と言われたときに……
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この場合は、ねじ屋さんは、二面幅13ミリの標準的なM8ボルトを出してくれるでしょうね。
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オイ! なんで13ミリアタマなんて買ってくるんだオメーワ! ウチには13ミリのレンチなんてねーんだよ!
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こんな会社辞めてやる!!
そういうトラブルを防ぐために使われる表現が、「M」です
ココがM
【M8】六角ボルトの二面幅
小 形 | 12ミリ |
---|---|
標 準 | 13ミリ |
高 力 | ----- |
【M10】六角ボルトの二面幅
小 形 | 14ミリ |
---|---|
標 準 | 16ミリ or 17ミリ |
高 力 | ----- |
【M12】六角ボルトの二面幅
小 形 | 17ミリ |
---|---|
標 準 | 18ミリ or 19ミリ |
高 力 | 22ミリ |
✔ ひとくちメモ
ねじサイズ(M)と工具サイズの相関関係について調べたいときは、KTC公式サイトの「ねじの呼びと工具のサイズ・締付トルク参考値」が便利。一般的な条件での既定トルクまで調べがつく。
標準的な六角ボルトと、小形六角ボルトの比較
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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