差し替え式ドライバーで「トルクス」や「いじり止めトルクス」に対応できる
差し替え式ドライバーのメリットは、ビット交換で多くの種類のねじに対応できることだが、実際に使っていて『助かった』と思うのは、めったに出てこないねじが出てきた時。例えば「トルクス」。さらにマニアックな「いじり止めトルクス」。それらに対応できる、差し替え式ドライバーを紹介しよう。
差し替え式ドライバーのビット交換で「トルクス」に対応できる
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今日は、差し替え式ドライバーについて、補足解説しておきます。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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「工具箱の収納スペース回復につながる、差し替え式ドライバーの存在」で登場、大活躍してくれた工具ですね。
●レポーター:イルミちゃん
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先端のビットを交換して、プラスにもマイナスにも変わるドライバーね。
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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そのほか、組み立て家具などによく使われている「六角穴付きボルト」にも対応できます。
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ということは、六角棒レンチの代わりにもなる。
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さらに、「トルクスねじ」にも対応できます。自動車整備でもときどき登場しますから、ここはポイントかと。
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トルクスねじ……ってなんだっけ? 聞いたことあるような、ないような。
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ねじ講習(※)で勉強したでしょう。こういうカタチの穴が開いているねじ(↓)よ。
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欧州車や、その流れを汲む日産車などでは、ときどき見かけます。
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忘れた頃に登場するから、出てきたときに困るやつだ。
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そうですね。トルクスレンチがあればいいのですが、持っていなかったら、そこで作業が止まってしまいます。
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そんなマニアックな工具は持ってないよ~!
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……という場面でもビット交換で対応できるので、差し替え式ドライバーは便利なのです。
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エラいな、この工具。
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これ1本でずいぶんと守備範囲が広い。
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そうですね。サイズ違いも含めて、14種類のドライバーを1本にまとめているので、世の中のねじの大半に、これ1本で対応できます。
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ドライバー13本分もの軽量化につながるのか〜。
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それだけではなく、これはラチェット機構がついたラチェットドライバーですから、早回しが可能です。
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工具を持ち替えずにねじを外せるのは、想像以上に便利。
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ラクなだけではなく、特に早回し時に「押し回し」しやすいです。軸もぶれにくく、安定してねじを回せます。
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普通のプラスドライバーとして使うにしても、メリットが多いね。
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なお、切り替えレバーを真ん中にすると固定になるので、普通のドライバーのようにも使えますよ。
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フムフム。
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これ1本で、本当に何でもできてしまうんだな。
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唯一、小さいスタッビドライバの代わりにはなりませんけれども、実は差し替え式のスタッビドライバもあります。
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小さいぶんだけビットの数は減って、さすがにトルクスのビットまでは付いていませんが、プラス・マイナス・六角のビットは付属しています。
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ナルホド。
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大きいのと小さいの、両方とも欲しくなるね。
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なおラチェットドライバには、他にもバリエーションがあって、その中の一つは、ちょっと面白い存在です。
KTCのラチェットドライバ(DBR14)
KTCのラチェットスタッビドライバ
「いじり止めトルクス」に対応する差し替え式ドライバーもある
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ラチェットドライバ(DBR16)というモデルがあります。
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これは……最初のタイプとどう違うのでしょうか?
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いじり止めトルクスねじ用のビットが入っているのです。
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いじり止めトルクス?
なにソレ? -
トルクスねじはアタマに穴が開いていますが、いじり止めトルクスねじは、その穴の中央に突起物があるんです。
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普通のトルクスのビットだと、この突起物に当たって工具が入りません。
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形状はトルクスだけど、普通のトルクスドライバーでは外せないんだ。
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「いじり止め」ってそういうことか。
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そうなんです。一般の人が触ったらいけないところに使われている、特殊なトルクスねじです。
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ロックナットみたいなものですね。
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でもけっこう普及した結果、あちこちに使われるようになって、「いじり止めトルクスを回す工具がほしい」要求も増え、結果的にそれを回すための工具も普通に売っている、という状態になっています。
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……もはやロックではない。
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……なんだかな。
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いじり止めトルクスレンチは、中央に穴が開いていて、ねじ側の突起物にはまるようになっています。
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なるほど。
この形状で対応できるんだ。 -
で、KTCのラチェットドライバ(DBR16)にも、いじり止めトルクスビットが付属しています。
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それこそ、普段は出てこないねじだから「差し替え式ドライバーのビットとして持っておく」のはイイ手かも。
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そういうことですね。
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登場頻度の低いねじへの対応……という意味ではビット交換のメリットは大きい。
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ビット交換できる重要なメリットは、もうひとつあります。
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まだあるのか。
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ドライバーの先端は消耗品なので、摩耗が進むと(通常のドライバーは)買い替えなければいけません。
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しかし、差し替え式ドライバーのビットは補給部品として設定されているので、本体を買い替えなくていいのです。
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ナルホド。
これなら長く大切に使えるね。 -
差し替え式ドライバーは単なる便利工具ではなくて、いろいろな意味で理にかなっている工具と言えそうです。
KTCのラチェットドライバ(DBR16)
トルクスと、いじり止めトルクスの違い
詳細はKTC公式サイトの「ラチェットドライバ ビット」参照。
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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