姿置きの工具セットを買ってしまうと、追加工具が入らない……は誤解?
姿置きの工具箱のデメリットは、追加工具が入らないこと……とよく言われるが、解決策はある。工具セット設計のプロフェッショナル・KTCに「姿置き工具セットでも収納力をUPしたい」要望が叶う、裏技を教わった。
工具の姿置きは、工具が追加できないのがデメリット?
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「工具箱のレイアウト(配置)の話。KTCの深いこだわりは、参考になる」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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今回は、姿置きの工具箱について、よく言われるデメリットについて解説したいと思います。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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姿置きのデメリットって?
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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それはガサ入れ(※)に対して、どうしても収納力で劣るという問題です。
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それは仕方ないですよね。トレイで塞がる容積があるんだから。
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そうなんですが、「追加工具が入れられないのは不便だ」と思っている人は意外と多いものです。
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ふむ。
確かに、まったく追加できないのは不便かも。 -
ちなみに、チェストタイプの工具セットだと、引出し一段分はフリースペースになっているものが多いです。
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あ!
では、そこに追加工具を入れられるんだ。 -
そうなんです。だからチェストタイプはまだいいんですが、両開きケースの工具セットの場合は、初期状態でこのように埋まっています。
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見た目はとてもキレイだけど、追加工具が入る余地がいっさいない。
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完璧過ぎるのも困りものってことね。
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そのように思っている人が多いんですが、そんなことはありません。
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え?
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どういうことよ?
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KTCの両開きメタルケースは、底のトレイの上に約50ミリ程度の空間があるんです。
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なので、実はある程度、追加工具を入れられます。
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そうだったのか。
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でもさ、せっかく姿置きになっている上から、工具をガンガン載せるのはどうなの?
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……ふむ。
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けっきょく工具と工具がぶつかって音が出たら、発泡樹脂トレイの良さも半減するし。
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そうですね。もともとガサ入れの工具箱なら気にしないとしても、姿置きで大切に収納したい人にとっては、気になるところです。
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でも、せっかく空間があるんだから、活用したい。
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この問題を回避するために、実はこういうトレイ(↓)があります。
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標準で付いてはいませんが、両開きメタルケース・底の空間にピッタリ入るトレイです。
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スゴイ偶然じゃない!
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……偶然なわけないだろ。
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もちろん、ここに収まるように設計されています。ただ、このキャリングトレイは部品扱い(※)の設定なので、KTCのカタログ等には掲載されていないんですよ。
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そうだとすると……
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このアイテムは、一般的には知らない人がほとんどだと思います。
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では、普通にお店にいっても売ってないということ?
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キャリングトレイは部品としてKTC製品取扱販売店に注文して頂けたら、出荷はできます。部品品番は取っ手付きがEK-1-10、取っ手無しがEK-1-9です。(オープン価格)
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それは良かった。
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このトレイの中に追加工具を入れれば、両開きメタルケースにも、スマートに追加工具が入れられます。
※ 工具をガサガサと入れる方式。
✔ 持ち運びにも最適な、両開きメタルケース「EK-10Aシリーズ採用工具セット」
両開きメタルケースのキャリングトレイ
※ 修理用の部品と同じ扱い、という意味。
両開きメタルケースの収納力を拡大させる裏技
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姿置きの両開きケースでも、工夫すれば追加工具は入るんですね。
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もうひとつ裏技的なやり方もあります。
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裏技……?
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底に入っている発泡樹脂トレイだけは、抜いてしまうんですよ。
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ほお。ガサ入れにするってこと?
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そうですね。トレイを抜き取ると、高さ85ミリ位の大きなスペースが生まれます。
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これはけっこう大きなスペースですので、オイルスプレーの缶なども収まります。
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ここ、ポイントですね。
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では、オイルスプレー缶と、さきほど取り出した工具類をいっしょにガサ入れしなおすと、どうなるか……
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全部入ったぁ~。
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なんなら、スプレー缶を2つ(↓)入れても、問題なく閉まります。
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てゆーか、まだまだ余裕タップリ。
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これはちょっと意外な展開!
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もちろんKTCとしては、最初の姿置きトレイの状態で使って頂くのが望ましいのですが、収納力を拡大したければ、こんな使い方も可能、ということです。
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だから裏技なんですね。
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姿置きの収納トレイはどうしても収納力が落ちてしまうというデメリットがあるので、こうやって使うユーザーさんも少なくありません。
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ただ、そうなると姿置きのメリットもなくなりますね。
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それは言えますが、底のスペースに入っているのは、ハンマー・モンキーレンチ・ラジオペンチ・ニッパー・プライヤーなので……
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これらのサイズが大きい工具は、姿置きにしなくてもそんなに困らないものではあります。
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ナルホド。確かにそうだ。ハンマーはガサ入れでよい気がする。
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いっぽうソケットレンチやめがねレンチなどは、ひとつ無くなっても分かりにくいので、姿置きが向いています。
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今回の話は、そのあたりを上手に組み合わせるように考慮した、工具の収納方法なんですね。
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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