工具箱のレイアウト(配置)の話。KTCの深いこだわりは、参考になる
工具を収容する工具箱の、レイアウト(配置)考察。どこに何が入っているかによって、作業効率は変わってくるもの。工具箱づくりにも深いこだわりがあるKTCの最新の工具箱をモデルに、使い勝手のよい工具の配置を聞いた。
工具箱の使い勝手を左右する、工具のレイアウト(配置)
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「工具の姿置きを進化させる、KTCの発泡樹脂トレイ」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は「工具の姿置きのメリット」を解説しましたが、今日は工具のレイアウトについて、お話しておきたいと思います。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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レイアウトってなに?
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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「どの工具をどこに置くか」の配置ですね。KTCの工具セットは、この点にも深いこだわりがあります。
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皆さんの工具の整頓にも役立ちそう。
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前回は両開きメタルケースを例にしましたが、発泡樹脂トレイを使った姿置きは、チェストタイプの工具箱にも採用しています。
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KTCのチェストタイプの工具セットは、自動車整備に特化したセットであることは去年解説しました。
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そうか。チェストタイプも発泡樹脂トレイで進化したんだ。
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それだけではなく、トレイの素材を変更するにあたって、工具のレイアウトも見直しました。
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どう見直したのでしょうか?
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去年までのチェストタイプの工具セットは、こういうレイアウト(↓)になっていましたが……
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それが、2021 SKセールの新モデルでは、こう変わりました。
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ん?
何がどう変わったんだ? -
分かったぁ!
めがねレンチが、一番上に移っている。 -
そうですね。
そこが重要です。まずは。 -
そうかな。
そこ、そんなに重要?
自動車向けとしてはイチオシの、チェストタイプ工具セット(入組67点)。写真は限定色のピンク。
従来モデル
新モデル
チェストタイプの工具箱は、引出しを開け閉めする回数を減らしたい
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大前提として、チェストタイプ(引出し式)の工具箱は、引出しを1段ずつしか開けられません。
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そうなの?
なんで? -
転倒する危険があるからです。
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タンスと同じですね。
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つまり、こういう写真(↓)はあくまでも商品の内容説明のためであって、工具箱の使い方としてはNGです。
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では、一段だけ開けっぱなしするのはいいの?
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引出しは、基本的に開けっぱなしもNGです。開けっぱなしにしておくと、ぶつかってケガをするかも知れないし、やはり危険です。
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では引出しを開けて、工具を取り出すたびに、引出しを閉めろと。
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当たり前でしょう。
タンスと同じだってば。 -
そう言うけどさ、タンスと違って、作業中はいろいろな工具を出し入れするから、そこを考えるとけっこう手間じゃない?
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文句ばかり言っていないで、開けたら閉めなさいっ!
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そういう話じゃないでしょうが!
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いっぽう、トップパネルは開けたままにしておいても問題ありません。
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……あれ?
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フタは開けっぱなしでもいいんだ
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そうなんです。だから、チェストタイプの工具箱においては、トップ部によく使う工具を配置すると良いですね。
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なるほど。
そういうことか。 -
よく使う工具ってなんだろう?
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自動車整備に特化して考えると、まず六角ボルトを外す工具の使用頻度が高いわけです。
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六角ボルトを回すときに使う工具は、ソケットレンチかめがねレンチの2択の中から選ぶのがセオリーです。
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ふむふむ。
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ラチェットハンドルが使えるスペースがあるなら、ソケットレンチを使うことが多いですし、スペースが狭かったらめがねレンチの使用頻度が高い。
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ということは……
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これらの工具は引出しを開けなくても取り出せるよう、新しい発泡樹脂トレイではトップに配置しました。
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このレイアウトなら、たいていの作業は、引出しを開けなくてもできます。
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トレイの素材だけでなく、工具のレイアウトも見直して進化させているんだ。
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う~ん……。
でも、この話にはウラがあるね。 -
……なにが?
✔ ねじの勉強をイチからしたい人は、「車で使われている〈ねじの種類〉と〈サイズの謎〉〉」参照。
工具の使用頻度に応じて、工具箱のレイアウトを見直す
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今回の発泡樹脂トレイでレイアウト変更したっていう話でしょ、コレ。
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そうですけど、何か?
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ならば、めがねレンチを上に持っていけたのは、もともとトップに配置していた何かを、下に移したからでしょう!
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あ。
そういえば、そうなるか。 -
いいところに気がつきましたね。
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けっきょく、下に移した工具が、取り出しにくくなったっていう話なのよ、コレは。
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……では、どの工具が下に行ったのでしょうか?
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使用頻度の低い、プラスドライバーやマイナスドライバーの3番(※大きいサイズ)です。
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あー!
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ドライバーの使用頻度を考えると、車の場合はプラスの2番がほとんどです。これは前に解説しましたよね。
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小さな部品の分解などだと、1番を使うことはありますけど、大きい3番はほとんど使う機会がありません。特に車では。
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だから下に持っていったのか。
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そうです。あまり使われない工具を、2段目の引出し(トップから数えて3段目)に移動させたのです。
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そういう考え方で、工具のレイアウトを決めているんですね~。
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新型の工具セットでは、トップパネルを開けておけば、プラスの1番と2番・ソケットレンチとラチェットハンドル・めがねレンチが選べる状態になっています。
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引出しを開け閉めする回数が激減しそう。
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では、その間にある、1段目の引出しには何が入っているの?
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プライヤー・ラジオペンチ・ニッパーといった、地味にそこそこ使う工具を第二優先として、1段目の引出しに配置しています。
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そして、普通の工具ではゆるめられないねじに使う工具、スピンナーハンドル・スタッビドライバー・六角棒レンチなどは、さきほどの大きいドライバーと同じ、2段目の引出しに入れました。
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作業頻度に合わせて、トップ→引出し①→引出し②という順になっている。
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そうです。ここまではまあ、考えれば思いつくことではありますが、実際のレイアウトの組み立ては難しいものがありました。
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ふむ。
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特に発泡樹脂は柔らかいので、壁があまりに薄いとちぎれやすくなります。壁にある程度の厚みはいるんです。
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そういう条件も加わってくるんだ。
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それに、スペースに収めただけでは意味がなく、指が入る隙間なども作り、取り出しやすくしなければなりません。
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確かにね。
マネできそうでマネできそうにない面もある。 -
それらの要素を踏まえて、KTCが最適解として作り出したのが、今回の姿置きのレイアウトなんです。
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工具のレイアウト……パズルゲーム的だな。
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まさに、そういう面がありますね。
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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