プロに教わるデッドニング講習⑤
ドアデッドニングの制振材の貼り方には「全面貼り」もあるが、そのメリット・デメリットは?
デッドニング方法をプロに教わる連載。ドアデッドニングキットを使った制振材の貼り方の解説を終えたところで、ちょっと余談コラム。ドアデッドニングには、ドア鉄板に制振材を全面貼りするやり方もあるのだが……
ドア鉄板に制振材を全面貼りするデッドニング方法もある
-
「ドアデッドニングでの制振材の貼り方についての注意点」の続き。今日は、もうひとつ気になる疑問があるので、プロに聞いてみたいと思います。
●レポーター:イルミちゃん
-
なんでしょうか?
●アドバイザー:カーデン 佐伯研究員
-
ドアデッドニングの作業のひとつに、ドア鉄板のサービスホールを塞ぐことで、ドア自体をスピーカーボックス化するというものがありますが……
-
しかし、このように「サービスホールの型を取って塞ぐ」貼り方だけがドアデッドニングではありません。
-
型を取らずに、制振材を全面貼りするような貼り方もありますね。
-
大きい制振材を使ってドアに全面貼りすれば、同時にサービスホールも塞がるし、鉄板の制振もまとめてできる。
-
まあ、そうですね。
-
こっちのほうが、カンタンに終わるではないか!
-
そういう話ではないんですよ。
-
えーっと、では、両者の貼り方の違いは、なんなのでしょうか? 本当はどっちの貼り方がいいの?
-
ドア鉄板の全部を固めてしまう「全面貼り」のほうが強度は出ます。アウターパネル側は貼ればいいというものではありませんが、インナーパネルに関しては、全面貼りでも問題はありません。
-
だから、ドアデッドニング=制振材をインナーパネル全面に貼る、というオーディオショップももちろんあります。
-
カーデンの場合は? どっち派なのでしょうか?
-
ケースバイケースですね。お客さんの予算にもよるので、使い分けていますよ。
-
そうか。
費用はけっこう変わるんだ。 -
ひとつ言えることとして、全面貼りする貼り方はどうしてもお金がかかります。
-
穴だけを塞ぐより、制振材がたくさん必要になるから?
-
そうですね。使う制振材を最小限にするには、どうしてもサービスホールだけを塞ぐ貼り方になってきます。
-
ドアデッドニングキットは、そういう貼り方を前提にしていますね。
-
キットに付属の制振材の量は、全面貼りするにはぜんぜん足りませんから、型取りするのが前提ですね。
-
ドアに全面貼りしようと思ったら、単品売りの制振材が必須になる。
-
そうです。「全面貼り」にするならキットは使いません。単体で部材を揃える「ショップオリジナルのデッドニング方法」になります。
-
キット VS ワンオフみたいなノリか。
-
仮に同じ質の制振材を使うにしても、使う量が違うので、費用も高くなってきます。
-
使う総量は、ざっくりですが、倍ぐらいの量の制振材がいるんじゃないでしょうか。
-
そんなに変わってくるんだ。両者でどのくらい、デッドニング費用に差が出るんだろう?
-
あくまでもカーデンの例ですが、キットを使ったお手軽コースの場合、左右ドアで4万円位~(※車種や材料によっても変化)が目安だとすれば、全面貼りのオリジナルコースでは6~7万円位が目安でしょうか。
-
全面貼りは、より上位グレードのドアデッドニング、みたいな位置付けなんですね~。
✔ ひとくちメモ
インナーパネルとは室内側のドア鉄板のこと。サービスホールが空いている鉄板がインナーパネル。
全面貼りのほうがラクできるわけではない?
-
制振材の貼り方としては全面貼りのほうがカンタンで、DIYでやりやすそう、と思ったんだけどなぁ。
-
あれ……? 全面貼りのほうがカンタンだと思っていますか?
-
だって全面貼りなら、大きいシートをそのまま貼ればいいんでしょう? サービスホールの型取りなんかをチマチマやらなくていい分、ラクなはずでは…?
-
いやいや、全面貼りのほうがラクってことはないですよ。
-
む?
それはなぜ? -
だって、大きい制振材をそのままバーンと貼るにしても、けっきょくクリップの穴のところをくり抜かないといけないとか、配線を逃がしたり、とかいろいろやる手間がありますから。
-
……それもそうか。
-
逃げを考えながら全面貼りしようとするのは、サービスホールを型取りする以上に、かえって手間がかかるかもしれません。
-
そ……そうなんだ。
-
それに全面貼りと言っても、大きな制振材をそのままのサイズでベターっと貼れるとは限りません。
-
けっきょく切るってこと?
-
なぜかというと、全面貼りするときも、サービスホールは繋ぎ目なしで埋めないといけないので。
-
あ、そっか。シートとシートのつなぎ目は、サービスホールにかからないように貼るんでしたね。
-
サービスホールは、とにかく1枚貼りになるようにしたいので「いくつかのブロック毎に分けて貼る」やり方になることが多い。
-
というわけで、サービスホールの型を取って埋めるやり方に比べて、ラクができるということはありません。
-
つまり、ラクしたくて全面貼りしているわけではないよ、ってことね。
-
もちろんです。あくまでも「最大の制振効果」を得るための貼り方です。むしろ手間もかかるし、材料費も高くつくのが、全面貼りのドアデッドニングと言えます。
-
よりこだわる人向けの制振材の貼り方、なんですね。
DIY Laboアドバイザー:佐伯武彦
コワモテだけど優しく謙虚な佐伯(さえき)研究員。オーディオイベントでは数々の賞を取っている、腕利きインストーラーだ。●カーデン TEL:0561-35-5015 住所:愛知県みよし市黒笹町西新田1205-1 営業時間9:00-18:00 火曜・水曜定休
関連記事
- プロローグ:カーオーディオプロショップは敷居が高い、という誤解
- カーオーディオの順番。どこから手を付けるのがよいか?
- 車の「スピーカー交換」入門
- ツイーターの取り付け位置・固定方法はどうすればいいの?
- バッフルボード(インナーバッフル)とは?
- パッシブネットワークとは?
- 車のスピーカーケーブルを交換する効果は? 引き直しの注意点
- スピーカーケーブルに使う端子の種類とつなぎ方。処理の注意点
- 車のスピーカー交換方法①純正スピーカー(リベット)の外し方
- 車のスピーカー交換方法②バッフルボードの取り付け方
- 車のスピーカー交換方法③ツイーターの取り付け方
- 車のスピーカーから音が出ない! 原因は?
- スピーカーを持ち込み取り付けしてもらう前に、知っておくべき話
- スピーカーのアウターバッフル(アウター加工)とは?
- 車のスピーカー交換でノイズがのることはあるの? 対策は…
- 車のスピーカーの選び方で、一番重要なこと
- スピーカー交換の次はデッドニングか、アンプか?
- プロが使っているデッドニングシートはいろいろ。おすすめは?
- バッフルボードの材質(素材)についての知識
- ワンオフでバッフルボードを作るメリットはなに?
- スピーカーのオススメを語るのは難しいが、選び方のオススメならある
- カーオーディオのプロに教わるデッドニング講習スタート
- ドア内張りを外すときの心得。傷をつけない養生のコツ
- ドア内張りを外すときの心得。傷をつけない養生のコツ(後編)
- ブチルゴムの取り方(裏技編)
- ブチルゴムの取り方(地道編)
- ドアデッドニング時のサービスホール型取り方法
- ドア外側の鉄板(アウターパネル)のデッドニング方法
- ドア内側の鉄板(インナーパネル)のデッドニング方法
- ドアデッドニングで配線の通っているサービスホールを上手に塞ぐコツ
- ドアデッドニングの仕上げ編
- ドアデッドニングでの制振材の貼り方についての注意点(補足)
- 天井デッドニングとフロアデッドニングの違い。どっちを先にやる?
- 天井デッドニングの材料(制振材・吸音材・断熱材)はどれを使う?
- パワーアンプ(外部アンプ)を追加する必要性は? その効果は?
- アンプのチャンネルとは?╱アンプの選び方入門
- RCAとハイレベルインプットの違いは重要╱アンプの選び方入門
- パワーアンプのA級、AB級、D級とは?╱アンプの選び方入門
- スピーカーやアンプの「インピーダンス」とは?
- パワーアンプの設置場所(置き場所)は、車内のどこがいいのか?
- 純正ナビにパワーアンプを追加するときの配線知識
- 純正ナビにパワーアンプを追加するときの配線知識(後編)
- パワーアンプの取り付け方法①╱純正ナビを外すときのコツ
- パワーアンプの取り付け方法②╱純正ナビを外すときのコツ(後編)
- パワーアンプの取り付け方法③╱純正ナビのスピーカー線を見つける
- パワーアンプの取り付け方法④╱純正配線を加工する場合
- パワーアンプの取り付け方法⑤╱純正ナビの配線から電源を取る
- パワーアンプの取り付け方法⑥╱純正ナビ裏にアンプを隠して設置
- スピーカー線のプラスとマイナスを間違えると何が起こるのか
- チューンナップウーファーとは? サブウーファーとの違いは?
- チューンナップウーファーのおすすめはどんなタイプ?
- サブウーファー取り付け時の、配線方法の知識
- サブウーファー取り付け時の、「電源」の知識
- サブウーファー取り付け方法①車内の設置場所を決める
- サブウーファー取り付け方法②純正ナビとの配線接続
- サブウーファー取り付け方法③床下に配線を通すための準備
- サブウーファー取り付け方法④スピーカーラインとACC電源を取る
- サブウーファー取り付け方法⑤バッテリー直結(バッ直)で電源を取る
- サブウーファーはリアスピーカーの配線を分岐して付けたらダメなの?
- ツイーターとサブウーファーを、純正配線「無加工」で増設できる小技
- サブウーファーの箱(ボックス)だけワンオフ製作してもらうのは可能?
- ディスプレイオーディオの純正配線を切らずにサブウーファーを取り付ける方法
- サブウーファーはフロント・リアどっちのスピーカー線につなぐのか?
- 車のシート下あるいは中に、サブウーファーを隠す方法
- 純正スピーカーにツイーターを追加するときの知識
- ツイーター追加時の配線方法。純正配線を傷付けたくない人は…
- ツイーターを追加(増設)する方法
- ツイーター埋め込みには、どの位の費用がかかる?
- リア(後部座席)にツイーターを追加する効果と、逆効果
- リア(後部座席)ツイーターを増設する位置と配線方法
- ツイーターがうるさいと感じるときに、単独で音量調整する方法は?
- ツイーターの高音が耳に刺さる……その原因と対策は?
- ツイーターが壊れる原因。修理はできるのか?
- スピーカーケーブルの値段 トータル価格は意外と高いかも…
- 車のスピーカーケーブルを交換する前に考えておくべきこと
- 外部アンプ追加だけ(純正ナビ&純正スピーカー)で音は良くなる?
- 純正ナビに外部アンプを取り付け(接続)する方法
- スマホの音楽を車のスピーカーで(イイ音で)聴く方法
カーオーディオ入門╱スピーカー交換編
カーオーディオ入門╱デッドニング編
カーオーディオ入門╱アンプ導入編
カーオーディオ入門╱ウーファー導入編
カーオーディオ入門╱ツイーター追加編
その他