知れば「工具の選び方」が変わる!? KTCの工具の進化を番外解説
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「工具なんて興味がない」「ねじが回せればなんでもいい」と思っている人にこそ、知ってほしい工具の話。KTCが東京モーターショーのブースで伝えようとしていたことは、工具を使う全ての人に関わる大切な話。
工具選びの基準は人それぞれだが、大事なことは全員に関係がある
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あなたは何を基準に工具を選ぶ?
●レポーター:イルミちゃん
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なによ、唐突に。
●DIYラボ別館 ユキマちゃん
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値段? 見た目? 機能? 握り心地? ブランド?
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工具に興味がない人は、「ねじが回せれば何でもいい」と思ってると思う。私も最近までそうだったし。
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だとすると、値段の安さだけで選ぶのが一番合理的ってこと?
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まあ、そうなるわね。
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工具にとって、最も大切なことは何か? その答えは案外シンプルなんだけど、“普通に工具を使えている、日常の中”では気づけません。目には見えないし。
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私にはアンタの話が見えないんだけど?
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それを目に見える形で伝えようとしたのが、東京モーターショー2019のKTCブースの正体。
東京モータショーのKTCブースは、なんだったのか?
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先日行われた東京モーターショー2019の会場で、KTCが工具の進化の歴史をブースで再現していました。
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……そ、そうだったのか。(←行ったが、意味が分かっていなかった人)
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「工具を深く理解する」という意味では、とても重要な内容でしたが……ユキマちゃんのように、よく分からなかった人も多数いると思うので……
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改めて、KTCが皆さんにお伝えしたかったことを、DIYラボで解説しておきます。
●アドバイザー:KTC トリー研究員
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まずは今回のKTCブースで目立っていた「壁」の意味なんですが……
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工具の進化には、3つの要素があります。まずらせん部分の意味ですが……
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そして、その2本を結んでいるのが「統合の進化」になります。
これは、KTC工具の進化の歴史を、DNAのらせんで表現したもの
KTCの重要なコダワリ①「工具に魂を入れる製造工程」
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ここから具体的に材質の話ですが、KTCが昔からこだわっているのが、工具専用鋼。
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あれ?
工具の材料は鉄じゃないの? -
鉄の中でも、工具に適した鋼材を使っています。軽くて強くて使いやすい工具というのは、鋼材も大切なんです。
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あー。
それで例の棒を展示していたのか……。 -
ただの鉄ではなかったんですね。
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(なんて回りくどいブースなの?)
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そして、重要なのが次に出てくる熱処理工程。これは「工具に魂を入れる工程」と言われるほど、重要なんです。
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タ、タマシイ? すんごい大げさだけど工具のタマシイってナニ???
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それは「強さ」なんですね。そして強さというのは、「硬さと粘り強さ」です。これがいい案配になっていることが大切です。
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粘り強さ……?
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硬いだけでもダメってことですか?
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硬いだけの工具は危険です。そのためKTCの熱処理には、「焼き入れ」と「焼き戻し」の工程があります。
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「焼き入れ」で硬さを出して、「焼き戻し」でねばり強さを出すんです。
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へぇ~。
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焼き入れしかしていない工具だと、どうなるんだろ?
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硬いけどモロいってことです。それだと、割れたときにも危ないんですよ。
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……割れたとき?
縁起悪いわね。 -
いや、そこを想定しておくことは重要です。KTCの工具は、壊れ方もコントロールしているんですよ。
東京モーターショー2019のKTCブースに展示してあった、工具に適した鋼材。
熱処理後の状態の工具。
KTCの重要なコダワリ②「工具の壊れ方のコントロール」
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これは「構造・機構」の進化の話ですが、時系列でいうと一番昔からKTCがこだわっていることに、〈最弱部設計〉があります。
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サイジャクブ設計?
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一番弱いところ……という意味でしょうか。
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そうですね。カンタンに言えば、「工具の一番弱い部分をどこにするのか?」という話です。
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てゆーか、全部強く作ってほしいんですけど???
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その考え方ではダメなのです。
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だって、コダワリの熱処理で強度を出しているんでしょ?
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それでも、工具を使っているうえで、壊れるリスクはゼロにはできません。
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……想定外の力がかかるかも知れないし。
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めがねレンチを例に取って考えてみましょう。当然ながら、壊れるときは、力をかけているときに壊れます。
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ここでもし、口径部がバラバラになるような壊れ方をすると、勢い余った手は周囲にぶつかり、ケガをするかも知れません。
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思いっきり力をかけている時だと危ないなァ…。
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工具が壊れる、なんて思ってないもんね。
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その時がきたら、ケガをしてから気づくことになる。
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そうならないよう、KTCの工具では、口径部の一部がパキっと割れるように設計してあるのです。
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この割れ方なら、壊れたとしてもいきなり滑ることはないし、バラバラに破片が飛び散ることもない。
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な……なるほど。
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「安全な壊れ方をする」っていう面も含めて、さきほどの熱処理が重要なんですね。
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素晴らしい技術力。
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つまり、壊れた瞬間に、「あー、KTCで良かったぁ!!」ってこと!?
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まあ、そうなるか。
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な、なによ。
アンタの意見なんて聞いてないわよ。 -
KTCの技術がスゴイのは分かった。でも、そこにこだわっても、工具が売れることにはつながらないじゃない!
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う~ん……。まあ、それはそうだが。なんでアンタがその心配を?
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そういう話ではないんですよ。企業としては売上も大切ですが、KTCはそれだけを追っているわけではありません。KTCには究極の目的があるんです。
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究極の……目的?
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そんなのは、私も聞いたことありませんが?
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今回説明している工具の進化も、最終的にはそこに向かうためのものです。
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企業の目的といえば……上場?
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いや、上場ならもうしてるだろ。
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KTCの究極の目的ってなんだ?
展示されていた、割れためがねレンチ。
※ KTCは東証二部上場企業です。
DIY Laboアドバイザー:トリー研究員
KTC・ブランド戦略部に所属。『なるほど!工具ノート』でおなじみの「朝津かな」さんの先輩にあたり、工具のイロハを教えた師匠のひとり。多忙な中でも、工具のことについて質問されるとトークが止まらなくなる生粋の先生気質。
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