車検の知識
「構造変更」とは? 「記載変更」との違い
わかりにくい車検をわかりやすくひも解く「車検の知識」シリーズがスタート。まずは「構造変更」と「記載変更」の違いについて。改造公認のきほんでありながら、「よくわかっていなかった」という人が非常に多い専門用語だ。
構造変更と記載変更の違いはなに?
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「構造変更」とは、継続車検には通せない状態になっている車に対して行う検査です。正確に言うと、「構造変更検査」……ですね。
●アドバイザー:TIC 越川研究員
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車を改造して、そのままでは違法の状態になってしまう、というときに、受ける検査?
●レポーター:イルミちゃん
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そうです。そして、それとよく似たもので、「記載変更」(きさいへんこう)というのがあります。
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あー。
そんな用語もありますね〜。 -
記載変更は、「検査をともなわない変更」。「軽微な改造」であれば「記載変更」だけでいけますよ、ということです。
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なるほど。
そういう違いなんだ。 -
「大きな改造」の場合は、車のいろいろなところに影響をおよぼすかも知れないから、「検査(車検)を取り直してください」というのがルール。これが構造変更で、受けた日から2年間、有効になります。
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それってつまり、車検を取り直すということ?
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そうですね。車検が1年残っている状態で、構造変更検査を受けるというのは、残っていた1年は切り捨てるっていうイメージですね。
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えー、まだ車検が残っているのに、なんかもったいないなぁ。損した気がする。
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でも、その残っている期間って、「改造する前の状態で受けた車検」ですよね?
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ムムム。
言われてみればそうですね。 -
だから、改造した状態で、新しく検査(車検)を取り直してください、というルールになっているのが「構造変更」なんです。
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なるほど、なるほど。
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それに対して「記載変更」は、車検が1年残っている状態で受けても、その残っている1年は有効な状態です。
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へー、そうなんだ!
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「車検を取り直す必要まではない」というのが、記載変更検査なので。
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じゃあ車検が残っている状態で受けても、損した気分にはならないで済みそう。
まずはアクスルやエアサス等のメーカー側に公認取得の申し込みをし、記載変更をするための書類(審査結果通知書)を入手して、それを車と共に車検場に持ち込む。
なにが「構造変更」で、どれが「記載変更」なの?
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……ここで気になるのは、どこまでの改造なら「記載変更」で済むのか、という点。
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それを説明するには、「構造変更に該当するものは何か?」を考えたほうが早いですね。
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フム。なるほど。
では、構造変更に該当する改造とは? -
主なところでいうと、以下のようなものです。
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おおむねこのあたり(↑)が、「構造変更検査が必要な改造」です。
●大幅な外寸の変更があるもの
車の長さ・高さが4センチ以上、幅が2センチ以上の変更となる改造。(※)オーバーフェンダー等。
●乗車定員の変更をともなうもの
(※)オーディオカスタムでリアシートをなくした等。
●形状の変更をともなうもの
車検証の「形状」の変更をともなう場合。(※)箱型の車の屋根を切って、オープンカーにした等。
●原動機の変更、総排気量の変更
エンジン載せ替え。ボアアップによる総排気量の変更。アクスル交換やエアサスは、記載変更の範囲
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足まわりの改造を例に、「記載変更」でいけるメニューを考えてみましょう。
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例えば「もともとバネサスの車でエアサスに換えた」「エアサス車に車高調を付けた」「リアアクスルを交換した」という場合は、基本的には「記載変更」でできます。
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記載変更で済むから、車検の残っている期間に受けても、残りの車検がなくなるわけではない。
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そうですね。
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ということは、意外とエアサスやアクスル公認の敷居は低いんだ。
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ただし、それを付けることによって車の高さが5センチ変わりました、といった変更をともなう場合は、当然ですが「構造変更」の扱いになります。
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あー。「車の高さが4センチ以上変わっている」というルールがあるんですよね〜。
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そうです。これは最低地上高9センチウンヌンの話ではなく、「車の高さの変更」に抵触するわけですね。
リアアクスルの交換は、記載変更でOK。
✔ ひとくちメモ
ただし、アクスルなら何でも記載変更できるわけではない。例えばJ-LINEリアアクスルキットは、国の検査機関VIA(日本車輌検査協会)で耐圧試験等を受けて、精度や安全性について認定登録されている。だから記載変更の手続きをすれば車検にも通る、ということ。次の車検の時にやればいい?
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例えばエアサスを付けたりアクスルを交換したときの公認に関して言えば、一般的には車検が近くなってからあわてる人が多いんですけど……、
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まあ、そうですよね。
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ただ、厳密なことを言えば、改造した時点でやっておかないと、次の車検までは違法状態になってしまいます。
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交換したときにやるべき話なんですね。本当は。
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そうなんです。
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でも、それだと残りの車検がもったいない、って考える人は多そう。
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しかし、さっき言った通り、エアサスやアクスルについては基本的には「記載変更」でできるケースが多い。パーツを付けた時点でそれをやっても、残りの車検はなくなりません。……そこは、誤解がありますよね。
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そっかー。そのへんも含めて「構造変更」と「記載変更」がごっちゃになっている人が多そうですね。
DIY Laboアドバイザー:越川 靖
公認車検専門店「TIC」代表。公認申請歴26年のベテラン。「車好きが堂々とカスタムカー・改造車に乗れるように」と使命感を持つ。自身も大の車好き。車検完璧対応のワンオフマフラーを自ら溶接する、職人系の公認車検屋。●TIC(http://www.tic-group.jp/index.html)
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