タイヤ交換コラム
スタッドレスタイヤへの交換を自分でやる前に、おさらいすべき知識⑤
自分でスタッドレスタイヤに交換する作業において、最後の関門がホイールナットの締め付け。厳密なトルク管理はトルクレンチ無しでは無理だが、「トルク不足」あるいは「オーバートルク」の問題を意識しているかどうかでも、ずいぶんと精度は変わりそうだ。
スタッドレスタイヤを純正ホイールで履かせる場合はナットにも注意!
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「スタッドレスタイヤへの交換を自分でやる前に、おさらいすべき知識④」のつづき。
●レポーター:イルミちゃん
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ハブボルトの掃除も終わったわよ。
●DIYラボ別館:ユキマちゃん
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さて、ホイールナットを付けるにあたっては、まだまだ重大な注意点があります。
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まだあるの?
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社外ホイールに交換している車の場合だと、スタッドレスタイヤを純正ホイールに付けている人も多いと思いますが……
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まあ、その運用スタイルは定番的だよね? ノーマル民だとスタッドレスタイヤのほうが社外ホイールだったりするけど。
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ここで注意しないといけないのは、社外ホイール用のテーパーナットを、うかつに純正ホイールには使ってはいけない、ということ。特にトヨタ車乗りは要注意。
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え? ホイールナットは流用すればいいんじゃないの?
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以前に学んだ、この話を思い出しましょう。読んでいない人はぜひ見てね。
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ちなみにトヨタ車以外でも、ホンダ車・その他一部の車種の純正ホイールは、専用ナットを使っているそうな。
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では純正ホイールを固定するときは、純正ホイール専用ナットを使わないとダメなんだ。
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そういうことなのよ。
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スタッドレスタイヤの純正ホイールを付けようとする段階で「あれ? ナットがないな。いいや、今外した社外ホイールのナットで付けておくか」なんて、普通にやりそうなことだが……
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それは危険なので、改めてここで触れておきました。
社外テーパーナットとトヨタ純正ホイールナットの違いに注目。「社外ホイールのテーパーナットを、トヨタ純正ホイールの固定に使うのは危険」参照。
ホイールナットの仮締め
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よーし。前回言われた通り、手回しで全部のナットを付け終わったわよ。
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ここからは工具を使って締めていく段階ですが……
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今回は純正ホイールだから、車載レンチでグイグイグイっと。
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ねえ、1本だけ先に強く締め込むのはやめて。
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え?
なんでよ? -
ホイールのセンターがズレた状態で付いてしまったりするから。
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センターがズレるとどうなるの?
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回転ブレが起こるので、ハブボルトなどにも負担がいくらしいよ。
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ほえぇ。タイヤ交換ってホント落とし穴がいっぱいあるな。
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ということで、ホイールナットを締め込むときは少しずつ平均的に締めていきます。
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全体的に締まってきたら、フルパワーで締めればいいのね?
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いや、本締めはまだ早いんだけど? しかもフルパワーってなに?
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いつ本締めするのよ?
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それは最後にジャッキを降ろした状態で行うのです。
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そうなんだ。……なら、浮いている状態では、どこまで締めるの?
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仮締めのチカラ加減としては「手で締め込んで止まったところから、パンパンって叩くぐらいのチカラ」とスパイス・佐藤研究員に教わりました。
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「パンパン叩くチカラ」というけど、どのくらいのチカラでパンパン叩くかは、人によるのでは? この表現、大丈夫なの?
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そりゃそうだけど、この段階はまだ仮締めだから、目安として言っているわけですよ。フルパワーユキマちゃんに、表現について言われたくないわね。
1本軽く締め込んだら…
次の1本を軽く締め込む
ホイールナットの本締め。トルク管理の問題が残る…
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ホイールナットの仮締めが終わったら、ジャッキから降ろします。
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それから本締めか。
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本締めするときも、ホイールナットを対角線上に締め込んでいきます。
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対角線上ね。1本目がココだとすると……
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次はココってことね。
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この場面でも丁寧に平均的に攻めていこう、ということですね。
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よし。フルパワーで締め込みだッ。
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ねえ、ユキマちゃんが言っているフルパワーって、どのくらいのトルクなわけ?
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え?……し、知らないわよ、そんなこと。私なりに全力で頑張る、という意味よ。
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チカラをかけすぎるとオーバートルクになって、ネジが切れたり、かえってゆるみの原因になるというリスクもあるが……
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むむ。じゃあ、フルパワーは止めたほうがいいの?
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しかし、いっぽうで「ゆるい」のも危ないに決まっている。一般的に女性の腕のチカラでホイールナットを締め込んだ場合は、後者のほうが危惧されます。
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そっか。私、こう見えてけっこう「か弱い」しな。
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以前にスパイス・佐藤研究員に聞いたこんなエピソードが印象に残っているんだけど……サ。
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ふむ?
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佐藤研究員のようなプロは、トルクレンチでしっかり適正トルクで締め込んでいます。
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そりゃそうだよね。
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ところが、そうやって佐藤研究員が締めたホイールナットを、たまたま常連客が自分で外そうとしたら、固くてなかなか外れやしない。
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ほぉ?
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その常連さんから「佐藤さん、ナット締めすぎだよッ!!」って怒られたそうな。
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佐藤研究員がバカヂカラで締めすぎていたのかな。
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いやいや。だからそこは、トルクレンチで規定トルクで締めているわけですよ。
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どういうこと?
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つまり、そのDIYユーザーの人が「ふだん自分で締めるときのトルク」は、「規定トルクにはぜんぜん達していない」という意味のエピソードですね、これは。
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あ〜〜。
そっちだったか! -
チカラの差もあるだろうし、使っている工具の違いもあるだろうね。そもそも短いレンチではチカラかからないし。
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そういえば佐藤研究員みたいなプロは、そこそこ長さのある工具でホイールナットを締めているもんね。
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つまりユキマちゃんが、短い車載工具のレンチでフルパワーで締めたところで、規定トルクにはぜんぜん足りないのではあるまいか? というのが私の予想。
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でもさ、そんなにいろいろ不確定要素があるとしたら、ホイールナットの本締めは人によってバラバラってことになるよね。
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そうなんだよねー。現実問題として、世の中の「手ルクレンチ」で締め込んだホイールナットのトルクは、バラバラなのかなと。
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手ルクレンチ……。
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そこで一番安心なのは、自分で作業する人は「トルクレンチを持っておくこと」になるのです。
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〈工具再入門〉(※)でトルクレンチの勉強が終わったら、やっぱりトルクレンチ買おうかな~。
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お金のかかることを提案したいわけではないけど、ホイールナットに関してはそうするのがオススメです。
2本目は対角線上のナットを締める
規定トルクで締め付け可能なトルクレンチ
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