足まわりコラム
タイヤ交換後のナット増し締めの必要性とは? やり方は? いつやるの?
タイヤ交換をした後の、ホイールナットの増し締め。「増し締め」というと、さらにギュッと締め込むイメージがあるが、コレが言葉通りではないという不条理がある。そこで、増し締めの正確な意味・必要性・やり方・距離(何キロ走行してから行うか)を一挙に解説。
タイヤ交換後の「増し締め」は、必ずしも「締め足す」意味ではない
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タイヤ交換後は、「ホイールナットの増し締めが必要」と言われたりしますが、なんのことか知っていますか?
●レポーター:イルミちゃん
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「増し締め」とは、ホイールナットを締め付けたあと、100キロ位走行してから再度、締め付けトルクをチェックすることです。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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100キロ走った時点で、さらに締め込む?
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いいえ。それだとちょっと、意味が違いますよね。ホイールナットは、規定トルク以上に締め込んではいけませんので。
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「増し締め」は、あくまでも「ゆるんでいないかチェックする」「締め付けトルクを再度確認する」という意味合いで使われる言葉です。
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そうなんだ。
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規定トルクで締まっていれば、それでいい話です。必ず「締め足す」ということではありません。安易に増し締めして、オーバートルクになったら逆効果。
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……なんか表現が紛らわしいですね。
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しかし、増し締めの必要性を問われたら、それはもちろん必要ですね。
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タイヤ交換後に、締めたばかりのホイールナットがゆるみやすいってこと?
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うーん、ゆるんでくる……という表現は、ちょっと適切ではないかも知れませんが。
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フム?
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もちろんホイールナットがしっかり取り付けできていなかったり、オーバートルクがかかったりしていれば、「ゆるむ」ケースもたまにはあります。
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それはどちらかというと、取り付けミスの話ですね。
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そうです。締めるときにトルクレンチできちんと締めていれば、基本的にはそれほど心配はないんです。それによってセンターも出ている、という理屈なんで。
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しかし、厳密に言うと、タイヤ&ホイールを取り付けた時点できっちりセンターが出ているとは限りません。
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トルクレンチを使っていない人も多いし。
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それなら、なおさらですね。
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で、少し走って馴染んでくる過程で、ホイールナットとホイール側の座面に、厳密に言えば小さな隙間ができたりといったことが起こりうる。
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走ることで、あぶり出されてくるようなイメージ?
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そうですね。だから万が一を考えて、初期段階でもう一度ホイールナットにゆるみがないか確認しましょう、というのが「増し締め」です。
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振動でゆるんでくるとか、そういう心配ではないのか……。
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そういうことではないですね。だから、トルクレンチを使ってきっちりセンターが出ていれば、チェックしても何も問題ないことも多いです。
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……でもやらないとダメなんですよね?
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そこは万が一を考えて、ということですね。ホイールナットのゆるみは、重大事故につながるから。
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なるほど。
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また、自分で(DIYで)タイヤ交換して、そのときに車載工具のレンチで感覚的に締めて終わりにしている場合。
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DIYだと、まだまだトルクレンチは浸透していないでしょうね。持っていない人が多いと思われます。
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こういう場合、締め付けが適切に行われていない可能性は、多いにあるわけですよ。
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締めるときには均一に、平均的に締め込むと教わりましたが……
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それにしたって、人間の感覚ですからね。そういう場合は、少し走行するうちに回転ブレでガタが出たりとか、無いとは言えません。
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トルクレンチを使っていないなら、なおさら増し締めは重要ってことか。
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そうですね。どっちにしても増し締めは必要ではありますが、より必要性が増します。
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ところで、増し締めって、純正ホイールでも社外ホイールでも必要?
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そこは同じですね。「社外ホイールに交換」「ノーマルホイールに戻す」「冬タイヤと夏タイヤの入れ替え」など、とにかくタイヤ&ホイールを脱着をしたあとで増し締めの必要性が生じる、ということです。
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なるほど、なるほど。
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あと、塗装されたホイールの中には、座面まで塗られているようなものもある。そういうのは塗装が削れて、隙間ができたりとかあり得るので注意です。
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……塗装ホイールはなおさら注意しましょう。
トルクレンチ
定番的なのはむしろクロスレンチ
タイヤ交換の手順そのものは、「タイヤ交換方法╱正しいやり方を車のプロに取材」参照。
タイヤ交換後、増し締めはいつやるの?(距離など)
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増し締めって、ず〜っと定期的にやらないとダメなんですか?
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基本的には、タイヤ&ホイール装着後、走行距離100キロを目安に1回やればOKです。
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ようは締めた直後だけ、警戒しておきましょう、ということか。
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増し締めの意味としてはそうです。もちろん、ホイールナットのトルクチェックを定期的にやるのは、悪いことではありませんが。
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ナルホド。
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ただし、例外があります。
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……と言うと?
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最近流行りの、アルミ製(あるいはジュラルミン製)ホイールナット。
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いわゆるカラーナットですね。オシャレなのはいいんですが、鉄(スチール)のナットに比べると、強度的には弱いんです。
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まあ、アルミですからね〜。
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中には特にモロいものもあって、ホイールナットの規定トルクで締め付けると、ネジ山がごっそりもげてしまったケースもありました。
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……ウーム。
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もともと、規定トルクに耐えられる強度がない……というアルミナットもあるんです。
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そういう場合は、規定トルクで締め付けようがないってこと?
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そのナットを使うなら、そうなりますね。その手前でやめないと、ネジ山がつぶれてしまうので。
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ということは?
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つまり、結果的にトルク不足になっている車は多いと思われます。
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……なるほど。
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こういう車は、タイヤ交換時だけの増し締めというより、定期的なトルクチェックを行う必要があるでしょう。そもそも規定トルク以下なら、ゆるんでくる可能性がありますからね。
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……それは、重要な話ですね。
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最近は特に、値段が安いカラーナットがネットで大量に出回っていて、オシャレ目的で買う人は多いですからね〜。
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オシャレもいいけど、慎重に……ですね。
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ちょっと心配なナットを使っているような車の場合、スパイスでも定期的に見せてもらったりはしてますよ。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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