足まわりコラム
ハブボルトをなめる(ネジ山がつぶれる)原因と、その対処法

ホイールを固定する、ハブボルトの破損についての注意。ハブボルトをなめる(ネジ山がつぶれる)ケースは意外と多い。その原因を理解して、トラブルを回避しよう。DIYでのホイール交換やスペーサー取り付け前に、読んでおきたい。
ハブボルトをなめるってどういうこと?
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前回、ホイールナットの締め付けトルク(※)の話をしましたが、今日はハブボルトの破損についての注意点に触れておきます。
※「ホイールの締め付けトルク(規定トルク)は何キロが正解?」参照。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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ハブボルトというのは、ホイールを固定するボルトのことですね〜。
●レポーター:イルミちゃん
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ホイール交換やワイドトレッドスペーサー取り付けなどをDIYでやるときに、ハブボルトを破損してしまうケースがあります。
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ハブボルトの破損って、どんな風に?
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多いのは、ハブボルトのネジ山をなめてしまったケース。こんな状態(↓)ですね。
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ネジ山が噛んでしまった時に、ムリヤリ締めにいったら、こうなります。
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「ネジ山が噛む」というのは? なぜ、噛んでしまったんだろう?
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え〜っと、原因はいくつかありますが、まず汚れは要注意ですね。
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鉄粉やサビや砂などで、どうしてもハブボルトは汚れる。そんな状態のままでホイールナットを締め込むと、噛む可能性が高まります。
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ウーム。
砂とかが、間に入るからか〜。 -
その場合は、今回のようにボルト側がダメになるか、あるいはホイールナット側がダメになるか、ですね。
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トルクレンチを使って、ちゃんと規定トルクで締めれば避けられるってことではナイですね。
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ですね。
「締め付けすぎ」とは違います。 -
どうすれば回避できるんでしょう?
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ホイールを付ける直前に、ハブボルトを掃除するんです。ワイヤーブラシでゴシゴシやったり。
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なるほど。
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それだけでも、噛んでしまうかも知れない砂を落とせるので効果的ですよ。
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ついでに、車高調のネジ掃除みたいに潤滑油を……、
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あ! ハブボルトに潤滑油のようなものを吹き付けるのはNGです。
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それはなぜ?
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ホイールナットがユルんでしまいます。ハブボルト専用のものならいいんですけど、一般的な潤滑油はNGです。
これがハブボルト

ネジ山がつぶれている

ハブボルトの汚れに注意する

ホイールナットの付け方で防止できる!?
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ところで、さきほどのネジ山がなめたハブボルトは、噛んでしまった状態でムリヤリ締めたのが原因って言いましたよね。
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そうですね。
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ということは……締める前に噛んでいると気づけば、防げそう。
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ですね! 正常な状態だと、ナットがスムーズにクルクル入っていきますが、これが回っていかないとすると噛んでいる。
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その場合は、いったんナットをゆるめて外し、ハブボルトの状態を確認してみましょう。
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ハブボルト、汚れているかも。
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あるいは、ハブボルトに問題がなくても、ナットがナナメに入っていて、噛んでしまうケースもあります。その場合は外して付け直しましょう。
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どっちのパターンも、そのまま強引に締め込むから、ハブボルト破損につながってしまうんですねぇ〜。
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そうなんです。だから、ホイールナットを締め付ける時は、いきなりクロスレンチ(十字レンチ)とか使わないほうがいいんです。
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では、どうするの?
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手でソケットを持って、手回しでナットを回し込む。手の力でも軽く入っていくのが正常な状態です。
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手回しなら『あれ? 普通に入っていかないぞ』という異常にも、手の感覚で気づけます。
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なるほど、なるほど。
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チョビっとナットを入れたところから、いきなり工具を使って締め付けるのはトラブルの元。いけるところまでは、ソケット手回しでナットを入れていく。それが一番の安全策です。

分かりやすく、ホイールなしの状態で撮影。
最初からクロスレンチはNG?

クルクル……

ナットの締め付け過ぎで、なめてしまうケース
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今回紹介した「ネジ山をなめる現象」が、ハブボルトの真ん中付近で起こっているケースも多いです。
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ほほう。
その原因は? -
オーバートルクですね。ホイールナット締め付けの力が強すぎると、そういうことが起こります。
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そして締め付け過ぎは、最悪はハブボルトをねじ切ってしまうケースもあるので、なお危険です。
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気づいたらボルトが切れてホイールナットが1個なくなっていた……なんてことにならないよう、オーバートルクには注意しましょう。

インパクトレンチも、オーバートルクになりがち。
ハブボルトを破損してしまったどうなるの?
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ハブボルトを破損してしまったら、ホイールが付けられなくなるのでしょうか。
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そのときはハブボルト自体を交換します。これは1本単位で交換が可能なパーツですよ。


DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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