インチアップと車検
何インチアップまでなら車検に通るのか?
インチアップしたいが、車検が気になる。一般的に何インチアップまでなら大丈夫といえるのか? という質問が時折り寄せられるので、プロに回答してもらった。「車検に通る範囲でインチアップしたい」と考えている人が、知っておくべきこと。
車検に通るインチアップとは?
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ホイールと車検について、こんなふうに聞かれるケースが時々あります。
●レポーター:イルミちゃん
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ストレートに回答してしまうと「それは分かりません」になってしまうのですが、ここはひとつスパイスの佐藤研究員に優しく解説してもらいます。
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車検の問題は、ホイールのインチでは答えられないんですよね~。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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ふむ。
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だからといって、何インチアップしても車検に通るという意味ではありません。
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……ふむ。
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車検で問われてくるのは、おもにタイヤ外径とロードインデックスです。
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ホイールをインチアップするときは、タイヤを薄くして「タイヤ外径は純正外径とあまり変わらないようにする」のがセオリーです。
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引っ張りタイヤとか、そういう話は横においときます。
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タイヤ外径が大きく変わってくると何が問題かというと、スピードメーターの誤差が生じることです。
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これは外径が変わると、タイヤ1回転で進む距離が変わってしまうから、ですね。
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車検場ではスピードメーターの狂いがないかどうかを測定しますので、タイヤ外径が大きく変わっていると、車検には通りません。
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問われてくるのはホイールサイズではなくて、タイヤ外径ってことですね。
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スピードメーター検査における誤差の許容範囲は、プラス6%〜マイナス22.5%となっています。
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つまり「何インチアップまでなら車検に通るか?」の質問の回答は「そういう問題ではありません」になってしまうのですが……
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そうなんですよね。純正から何インチまでならOK、とかいうルールではありませんので。
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そうはいっても、一般論として目安みたいなものはないのかな?
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明言はできませんけど、一般的には2インチアップくらいなら、車検にも通るようなマッチングで履けることが多いです。
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純正で18インチの設定がある車種なら、20インチまでは無難だろうってことね。
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ただし、タイヤサイズの選び方などによっては、2インチアップで車検に通らないマッチングもあります。
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……それを言ったらまあ、インチアップしなくても、タイヤをドーンと厚くしたら車検には通らないし。
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そういうことですね。
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では、3インチアップは?
現実味としてどうなんでしょう? -
3インチアップまでいくと現実的に心配になってくるのが、ロードインデックスの問題です。
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出たな、ロードインデックス。
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いわゆるタイヤの強度みたいなものですね。
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3インチアップするとなると、純正外径に近づけるためには、相当に薄いタイヤを履かないといけなくなりますよね。
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ホイールを大きくすればするほど、タイヤを薄くするしかない。
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しかし、薄いタイヤで外径の問題は回避できたとしても、ロードインデックスの方がシビアになってくるかと。
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薄いタイヤは当然ながら、ロードインデックスが低くなるし。
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昔はロードインデックスってそんなに厳しく見られてなかった気がするんですけど、最近は厳しいですよ。
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そうなんですね。でもロードインデックス不足って車検場でどうやって判断するの?
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ドアを開けたところにタイヤサイズと空気圧の表記がありますよね。そこに純正タイヤのロードインデックスの表記もあるので、車検場で見るのはカンタンなんですよ。
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ただ、これは純正タイヤのロードインデックス。その車種の重量(軸重)とかから計算しないと、ロードインデックスが足りているか不足しているか、判断できない気がするんですけどね?
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でも現実には、ロードインデックスが純正より低いと問題視されるケースが多いです(※)少なくとも僕がいつも行く車検場ではそうです。
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実際に僕が行っている車検場でも、ロードインデックスは必ずチェックされています。
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純正より下回っている人は、注意ってことか。
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逆に言うと、外径とロードインデックスの条件が満たせていれば、何インチアップであってもいいわけです。
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ただ、両者は相反する要素だから、現実的には限界がありますね。
Q
何インチアップまでなら、車検に通りますか?
ロードインデックスとは「荷重指数」のことで、そのタイヤが耐えられる重量(最大負荷能力)を示した数値。
予備解説
本来のルールは、純正インデックスを下回ったら即NGではなく『〈総重量〉に対してタイヤの負荷能力が足りているかどうか』の問題なのだが、乗用車の場合は軸重の設定(記載)がないため、例えばフロント2輪にかかる軸重がわからない。となると、フロントタイヤに必要な負荷能力もわからないことになる。
一般ユーザーが前軸重・後軸重の計算をするのは現実味がないため、「純正ロードインデックスを下回らないようにするのが無難」ということになってしまう。
※詳しくは「引っ張りタイヤは車検に通る?」で専門家に取材している。
✔ ハミ出しや、ハンドルを切ったら干渉するなどといった問題はまた別。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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