足まわりコラム
タイヤ外径が小さくなると……デメリットは?
タイヤ外径を小さくするのは、足回りのドレスアップでは定番のやり方。それによって車高を落とせて、インチアップも叶うのがメリットだ。しかしタイヤ外径が小さくなると、それにともなうデメリットも当然ある。ここでは敢えて、不都合方面に目を向けてみる。
タイヤ外径が小さくなると、タイヤ1回転で進む距離が減るので……
-
車高を低くする車だと、「タイヤ外径が小さくなるようにインチアップする」のは定番的ですが……
●レポーター:イルミちゃん
-
……とはいえ、あまり極端にタイヤ外径を小さくし過ぎると、デメリットも多いです。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
-
タイヤ外径が小さくなることで生じるデメリットを、整理しておきましょう。
-
まず、実用上のデメリットから。タイヤ1回転あたりに進む距離が、ノーマルより減りますね。
-
フムフム。
-
だから、タイヤ外径を小さくすると、クルコン(クルーズコントロール)を使ったときなども、イラっときたりするんです。
-
それはなぜ?
-
従来の国産車のクルーズコントロールって、設定速度の上限が、115キロになっていたじゃないですか。
-
タイヤ外径が極端に小さい車だと、クルコンの設定速度よりも、実際の速度が遅くなるので……
-
そう言えば。
-
あれ? なんか周りの車に抜かれていくなァ? ……ってことになるんですね。
-
実速度は、ズレているから……
-
クルコンを115キロに設定しているはずなのに、実際は90キロ走行でした、という具合です。
-
ナルホド。
-
まあクルコンの設定上限が上がっていけば、設定で調整できることにはなりますが……
-
新しい車ならそうでしょうね。
-
しかし、問題はクルコンだけではありません。そもそも1回転あたりに進む距離が減るということは、燃費も悪くなっています。
-
エコカーでタイヤ外径を小さくするのって……考えてみるとアレな気も。
✔ ※現状では、高速道路の一部区間で制限速度が上がっているのに合わせて、クルーズコントロールの設定上限も引き上げられている。
外径が小さくなりすぎると、車検時のメーター誤差の検査で引っかかる
-
クルコンや燃費などの、実用上のデメリットはガマンしたとしましょう。
-
まあ、クルコンなんてどうせ付いてないしぃ、とか。
-
あとは車検の問題ですよね。外径が小さくなると、スピードメーターの表示に誤差が生じますから。
-
車検時の許容範囲をおさらいしてきましょう(↓)
-
実際の速度が遅くなる方向のズレについては、許容範囲が大きめではありますけどね。
-
ちょっとくらい外径が小さくなるのは、OKってことか。
-
ただし、外径の小さいタイヤが車検NGとなりやすい理由は、メーター誤差だけではありませんからね。
-
……と言うと?
✔ 車検時のメーター誤差の許容範囲
(平成19年1月1日以降製造の車)
スピードメーターが40km/hの時点で、実速度が30.9km/h〜42.55km/hの範囲内に収まっていること。
(平成18年12月31日以前製造の車)
スピードメーターが40km/hの時点で、実速度が30.9km/h〜44.4km/hの範囲内に収まっていること。
外径の小さい引っ張りタイヤは、ロードインデックスが不足する傾向
ドレスアップカーだとタイヤ外径を小さくするために、細身のタイヤを引っ張ったりもします
-
いわゆる引っ張りタイヤですね。
-
しかし、薄くて細いタイヤは、それだけロードインデックス(荷重指数)が低いのです。
-
ロードインデックス不足は、車検でも指摘されるケースが多いですから注意しましょう。
-
そのあたりは、車検の専門家も指摘している問題ですね。
-
この問題、実用上はなにがデメリットなのでしょう?
-
タイヤの荷重指数が足りない状態は、まず段差などをまたぐときにセパレーションを起こしやすい。
-
さらに、パンクやバーストの起こりやすさともつながってきます。
-
ようするに、引っ張りタイヤのデメリット……ですね。
-
ハイ。軽自動車みたいな軽い車だとあまり問題にはなりませんが、アルファードとかヴェルファイアみたいな重量のあるミニバンでは、より注意が必要です。
-
ロードインデックス不足が顕著になるから。
-
セパレーションやバーストが、起こりやすくなります。
-
だから、スパイスでは、ミニバン系ではあまり極端な引っ張りタイヤはしないんです。
-
それって、サイズで例を挙げるとすれば?
-
タイヤにもよるので一概には言えませんが、20インチの9Jだとして、245/35。もう一段階いっても235/35あたりまででとどめています。
-
しかし、J-LINEの氏家研究員は、245/35なんて絶対使わないですよ? というか『30扁平じゃないとダメだ〜』ぐらいの勢いだし。
-
J-LINEさんは、車高が低いからね。
-
低車高だと、外径を小さくしないと、どうしても当たってしまいますからね。
-
しかし、スパイスだと普通に街乗りのお客さんが多いので、それほどまでに車高は低くしないんですよ。
-
タイヤサイズ選びも、車高によって全然違うわけですね。
-
そうですね。ウチだと20インチでも30扁平はほとんど使わず、35扁平が主流です。
-
それならそれで、外径にからむデメリットも減る。街乗りに適した選択と言えそうです。
✔ ロードインデックスは、カンタンに言うと、「タイヤ1本あたりが支えられる重量」を示したもの。
ミニバン系などは注意
一般的によく使われる245/35-20
ここでのモデルタイヤは、ルッチーニ・ブォーノスポーツの245/35-20。外径680ミリ。適応リム幅:8J〜9.5J ※写真は9.5Jに組んだ状態。
245/35でこんな車高は無理
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
関連記事
- インチアップしても車検に通るタイヤサイズの決め方
- タイヤ外径の計算方法。純正と揃えるには…
- 車検に通るタイヤ&ホイールの条件
- 引っ張りタイヤは車検に通る? 専門家に取材
- フェンダーとタイヤ&ホイールの隙間を埋めるには?
- タイヤサイズを変更すると車高は変わる?
- インチアップで空気圧警告灯を点灯させない履き方
- 20インチのタイヤサイズの選び方
- 19インチのタイヤサイズ選び
- 引っ張りタイヤのリスクマネージメント
- インチアップ時のホイールサイズの決め方とは?
- セパレーションとは? 引っ張りタイヤとの関連性は?
- タイヤ交換の安全なやり方。車載ジャッキは使い方を間違うと倒れる
- スタッドレスタイヤの保管方法。「空気圧」と「置き方」に注意!
- タイヤチェーンの付け方