ウインカーLED化講習
安易なウインカーのLED化に潜むリスクを再確認しておこう
ウインカーをLED化するからには、純正の白熱球よりも明るいものにしたいが、いっぽうで安易にルーメン値を上げたLEDウインカーバルブにはリスクが潜む。通常使用では問題ないとしても、緊急時を想定すると、恐いのはやはり「熱」だ。
高ルーメンのLEDウインカーバルブも作ろうと思えばすぐにできるが、リスクがある
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「LEDウインカーバルブをIPFが今まで出さなかった理由が興味深い」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回お話した通り、これまでは明るいLEDウインカーバルブを作るのは、なかなか現実的ではありませんでした。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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でも、アンバーLEDが白色LEDのように発光効率が高くないなら、電流を多めに流せば、明るさは稼げますよね。
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確かにその方法でもルーメンは上げられますが、発熱の問題が出てきます。
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そういえば以前に、過電流で高負荷をかけるとバルブが溶けるなんていう物騒な話もありましたが……
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LEDウインカーバルブでも、同様のリスクが出てきます。
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しかしですねぇ、市川研究員。
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……はい。
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ウインカーを使うのは、交差点の右左折とか、車線変更に限られますし、そもそも点滅信号なんですよ。
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……そうですね。
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ポジションランプのように常時点灯させるわけではないんだから、放熱という面では有利ですよね?
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それはまあ、その通りですね。
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……ということは、電流を多めに流して明るいLEDウインカーバルブを作ることは可能なはず。
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もちろんそういう設計アプローチなら、明るいLEDウインカーを作るのは簡単です。
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だからこそ、世の中には高ルーメンをうたうLEDウインカーもたくさんある。IPFは、なぜそれをしなかったのでしょう?
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ここからは、メーカーによって考え方が分かれてきますが……
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IPFの考え方は?
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あらゆる使われ方を想定すると、「短時間の点滅だから電流を多めに流しても大丈夫」という考え方では、ウインカーLED化にはリスクがあります。
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あらゆる使われ方ってなに?
LEDウインカーは熱ダレすると白熱球を下回る暗さになる可能性が大
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IPFでは、例えば「ハザードランプを点灯した状態で長時間停車する」ということも想定に入れて考えています。
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……そういえば、その場合はウインカーが長時間点滅状態になりますね。
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例えば高速道路上での故障時など、助けが来るまでずっと……もしかすると1時間2時間、ハザードランプを点灯し続ける状況もありうる。
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う。
確かに。 -
過度な電流を流すバルブ設計だと、そんな状況下で熱ダレを起こし、明るさがどんどん落ちていくことになります。
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熱ダレか……。
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「LEDバルブは熱ダレする」という話は、ヘッドライトやバックランプのときにもしましたよね。
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熱が上がるとLEDはパワーが絞られて、暗くなってしまう……。
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白熱球からLED化したウインカーの場合、現状のアンバーLEDのスペックでは、明るさが半分ぐらいまで落ちてしまったら、純正(白熱球)の明るさを大きく下回ることになります。
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それを言うなら、白熱球だって長時間点滅で熱ダレするのでは?
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しないんですよ。白熱球は熱がかかっても、基本的には280ルーメンの明るさが出続けています。
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なにィ!!
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純正ウインカーに白熱球が使われていることにも、それなりに意味があるってワケか……。
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そして灯具も、白熱球の明るさを基準に設計されています。光源が白熱球にも及ばない明るさになってしまうと、安全性の問題が出てきます。
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純正より暗いウインカーで、高速道路上で停車しているような状況を生んでしまう……。
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ですからIPFの考え方では、長時間点灯させ続け、どこかの時点でLEDバルブが熱ダレした状態になってもなお、純正の白熱球と同等レベルの明るさが実現できていないとダメなんです。
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……なるほどね。
熱ダレしても、純正以上か。 -
うたい文句としてのスペックだけなら、単純な話で、電流値を上げればルーメンは上がる。でもそれは、点灯直後の明るさでしかありません。
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そこから熱ダレすれば、どんどん暗くなる。そういえば前に実験やったっけ。
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暗くなるだけではなく、高負荷をかけて使っていることになるので、壊れる確率も高まります。
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う~ん。ウインカーの場合、壊れてしまうと非常に危険ですね。
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ハイ。右左折にしても車線変更にしても、ハザード点滅にしても、すべて重要な意味を持っています。だからIPFでは、安全性のハードルを、ウインカーではかなり高く設定しています。
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ハイパワーポジションLEDバルブを作るのとは、だいぶ話が別なんだ。
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そうです。ウインカーは特に、スペックより安全性が一番大切です。
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……そこまで慎重姿勢だったIPFが、ようやくLEDウインカーバルブを市場に投入した。これはやっぱりビッグニュースと言えそうです。
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IPFは後発も後発だとか、ビリッケツとかなんとか、前回は散々言ってましたけど……
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え? ……あ、いや、まあ、それは……市場の声を代弁しただけじゃないですかぁ。イヤだなぁ。
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ぜんぜんフォローになってないよね!?
熱くても明るさを保つ白熱球ウインカー
Amazonでも販売されているIPF LEDウインカーバルブ T20タイプとS25タイプがある。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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