ウインカーLED化講習
ハイフラ防止抵抗内蔵LEDウインカーバルブを、IPFが作らなかった理由
ウインカーLED化は、ハイフラ対策が必須。IPFのバルブは、手軽さを望むユーザーの支持を得やすい「ハイフラ防止抵抗内蔵LEDウインカー」とはせずに、オーソドックスな別体型を選んだ。内蔵型も検討しながら最終的には見送った、その理由は気になるところ。
LEDウインカーバルブに必須の、ハイフラ防止抵抗についておさらい
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「おすすめできる〈LEDウインカー〉の条件」の続き。ついにIPFのLEDウインカーバルブが販売開始されました。
●レポーター:イルミちゃん
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そして、電球ウインカーをLED化するにあたっては、もうひとつ重要になるのがハイフラ対策です。
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そうですね。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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ここからは、ハイフラ対策についてのおさらいをします。
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まず、もともと純正で入っている電球(白熱球)のウインカーは消費電力が21Wあります。
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これをLEDウインカーバルブに交換すると、消費電力が大きく下がる。車側では「球切れした」という認識で、球切れを知らせるためのハイフラッシャー(高速点滅)が起こります。
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つまり、ハイフラ自体は純正の機能と言えます。
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原因は「LED化したことで消費電力が下がったから」なんですが、実際に車両側でどのように検知しているかは、車種によって異なります。
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……と言いますと?
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例えば、電流値をチェックしている車種もあれば、電圧、抵抗値の変化をチェックしている車種もあります。
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フムフム、なるほど。
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一般的には、電流値の変化を見ている車種が多いとは言われています。
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その場合はつまり、電球(白熱球)のときより電流値が下がったから、ハイフラが起こる。
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そうですね。21W相当の電球が付いているときと、同じだけの電流を流せば、ハイフラが起こらないということになります。
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わざと電気を消費させるんだ。
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ハイ。それがLEDウインカーのハイフラ対策で、一般的には抵抗が用いられます。
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それが、ハイフラ防止抵抗とかキャンセラー抵抗と呼ばれる部品。
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IPFのLEDウインカーバルブにも、ハイフラ防止抵抗を用意してあります。
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LEDウインカーバルブとは別体で、ハイフラ防止抵抗を用意したんですね。
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そうです。
IPFは、別体の抵抗を用意しました。 -
そこでひとつ疑問に思うのは、なぜIPFは、いわゆるハイフラ防止抵抗内蔵LEDウインカーにしなかったのか、という点。
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あー。
その質問ですか。 -
というのも、最近ではハイフラ防止抵抗内蔵LEDウインカーも、ネットではよく見かけますので。
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そうですね。
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最初からハイフラ防止抵抗を内蔵しておいてくれれば、ハイフラ防止抵抗の付け場所に困ることもないし、便利かなと。
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確かに取り付けはラクですよね。IPFでも当然、抵抗を内蔵することも検討して、いろいろと検証してきました。
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でも、やめたんだ?
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ハイ。そこにはやはり、「熱」という大きな問題点があるからです。
Amazonでも販売されているIPF LEDウインカーバルブ T20タイプとS25タイプがある。
Amazonでも販売されているIPF ハイフラッシャー防止キャンセラー抵抗 WA-19(2個入)
ハイフラ防止抵抗内蔵のLEDウインカーバルブを、IPFが作らなかった理由
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ハイフラ防止抵抗の役割は、電気を「抵抗」で消費させようということです。
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ふむ。
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何W分の電気を消費させる必要があるかは、LEDウインカーバルブの消費電力にもよりますが、LEDは白熱球よりも圧倒的に消費電力が小さいです。
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つまり、20W近い電気を、抵抗で消費させなければいけない。
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その結果、かなり熱を持つことになります。
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ハイフラ防止抵抗も激しく発熱するから、ヘンな場所に付けると危ないんですもんね。
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その熱源を、バルブに内蔵するというのは、そもそも無理があります。
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……まあね。
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電子回路やLEDなどの部品が、限界温度を超えてしまうんですよ。一時的にはなんとかなっても、短命になってしまいます。
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抵抗を内蔵した結果、LEDウインカーの寿命が短くなるのは困る。
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だから、熱源はバルブ内蔵ではなく、外に持っていきたいのです。
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それならバルブ側は、熱にさらされないで済みますね。
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なお、ある程度の電力を消費させればハイフラが消える車種も、あるにはありますが……
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ホホウ。
それなら発熱も減りそう。 -
しかし、そういう例は一部の車種に限られる。いろいろな車種で調べていくと分かるんですが、純正の電球の消費電力(21W)と、ほぼ同じレベルの電力を消費させないと、ハイフラが消えない車種も多い。
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そのへんは車両によるんだ。
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幅広い車種でキッチリ対応しようとすると、やはり「21Wの電気を消費させる必要がある」のです。
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そうすると、どうしても熱の問題になる。
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どうにかハイフラ防止抵抗を内臓にしようとすると、幅広い車種に対応させるのが難しくなる、という結論です。
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あ。
冷却ファンで熱を逃がせばいいのでは? -
それも検討しましたが、冷却ファンを付けるとなると、フロントウインカーはまだいいんですが、リアウインカーの場合に問題点がありまして。
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どんな問題点?
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リアウインカーは、周囲が樹脂のパネルが囲まれたような場所に灯具が付いている車種も多い。バルブ自体は放熱できても、その熱が空間に溜まります。
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……熱が移動した結果の話か。
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周囲の樹脂部品などは、そんなに耐熱性はないので、空間の温度が上がりきったときに影響を与える可能性を懸念しました。
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IPFのLEDウインカーは、長時間ハザード点滅する状況などまで想定していますからねぇ。
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そうですね。長時間のハザード点灯まで想定すると、リアウインカーはシビアです。
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そう言うIPFも、LEDヘッドライトバルブはファン付きですが……?
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ヘッドライトの場合は、後方がエンジンルームで隙間がありますからね。
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それとウインカーは、話が別ってことか。
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リアウインカーはスペースがない車種も多くて、ファンを付けると装着できない車種も増えてしまいますし。
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なーるほど。
そのあたりもIPFの思想に反しますね。 -
いろいろと検討した結果、最終的には「外付けのハイフラ防止抵抗を付ける」アプローチになりました。
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結論だけ聞くとオーソドックスですが、IPFらしい慎重さが出ていると言えそうです。
✔ ハイフラ防止抵抗の付け方は、連載の続きで解説するが、樹脂パーツなどに接触していると溶かすほど高温になる。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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