ウインカーLED化講習
LEDウインカーバルブをIPFが今まで出さなかった理由が興味深い
「LED化すれば明るくなる」「LED化はエコである」という決まり文句は、ことLEDウインカーには単純には当てはまらない。フルLED化を考えるユーザーにとって重要な内容なので、じっくり解説する。
明るさで伸び悩む(!?)社外品のLEDウインカーバルブ事情。慎重姿勢を貫いていたIPF
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さて、東京モーターショー・ルポでお知らせした通り、12月には注目のIPF製LEDウインカーバルブが登場するのですが……
●レポーター:イルミちゃん
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このニュース、IPFファンはともかく、一般的には「なんでそれがニュースなの?」と不思議に思う面があると思います。
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まあ、LEDウインカーバルブ自体は市場にたくさんありますからね。
●アドバイザー:IPF 市川研究員
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そう。
今さらべつに、珍しくも何ともない。 -
……。
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IPFのLEDウインカーバルブは、そういう意味では後発も後発! いや、ビリと言っても言いすぎではない。
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……そこまで言わなくても。
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まずは、ここまでIPFがLEDウインカーを出さずに引っ張った理由から、教えてもらいましょう。
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ひとつにはまず、明るさの問題です。IPFとしては純正の電球(白熱球)より、明るいLEDウインカーバルブであることが条件でした。
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……電球より明るいのが条件?
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そうです。
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そんなの当たり前のようにできるコトなのでは??? LEDのほうが明るいなんて、当たり前でしょ!?
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ヘッドライトやフォグランプなら、電球よりLEDが明るいのは当たり前になっていますよね。
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電球どころか、HIDに迫るレベルに達していますよね。
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しかし、ウインカーは事情が違うんですよ。
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どういうことなんでしょう?
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実際のところ、LEDウインカーバルブは、純正電球とほぼ変わらないレベルか、少し暗いぐらいのルーメン値が主流なんですよ。
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そうなのっ???
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そうですよ。無理な負荷をかけずに安全確実なバルブ設計をしている大手メーカー製だと、250ルーメン前後といったところです。
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……ほほう。
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ここ2~3年、そのあたりで止まっていますね。各社が同じような状況なのです。
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ええっと、ちなみに純正の電球の明るさはどのくらい?
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ウインカーに使われるバルブの種類は、T20タイプかS25タイプの白熱球なんですが、ルーメン値でいうと、どちらも280ルーメンあるんです。
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だとすると、確かに純正の明るさとあまり差がないことになる!
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そうなんですよ。LEDバルブに比べて、意外と白熱球ウインカーは明るいんです。
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なぜ、ウインカーだけそんなことになるんだ?
Amazonでも販売されているIPF LEDウインカーバルブ T20タイプとS25タイプがある。
意外と明るい!? 電球ウインカー
明るいLEDウインカーバルブの実現が難しかった理由
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そもそもの話として、アンバー(オレンジ)色のLEDチップで明るいものはあまりないというLEDの業界事情があります。
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ホー。
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バルブメーカーは、LED素子を作っているメーカーからLEDチップを調達して、LEDバルブを作ります。
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しかしLEDは、世の中全体で見れば「白」や「電球色」のような、実用照明用の需要が大半なんです。
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そういえば、アンバー色のLEDなんて、車のウインカーくらいしかまとまった需要はなさそうな……
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そうなんです。ですからLED業界的に見れば、競争の激しい白色LEDはどんどん進化して、発光効率も高まっていきますが……
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アンバーLEDは「おきざり」っていう……
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そういう背景があります。明るいアンバーLEDがまったくないとは言いませんが、あっても値段が高い……とか、特殊例です。
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むーん。
そんな大人の事情があったとは。 -
アンバーLEDの開発が、白に対して遅れているのは、世界的な話ですね。
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……となると、バルブのルーメン値を引き上げるためには、電流値を上げて明るさを稼ぐしかないわけか。
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しかし、IPFのLEDバルブは安全性第一ですから、そういう作り方はしません。
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大手メーカー製のLEDウインカーの明るさがだいたい250ルーメン止まりになっているのも、そういう理由?
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それは、そう言えると思います。
明るさはさておき、点滅のキレが良くなることがLED化のメリット
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明るさが同等もしくはそれ以下だとすると、電球をLEDバルブに交換するメリットってあったのでしょうか?
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消費電力が下がるわけでも、明るくなるわけでもない……ウインカーLED化の意味ってなに?
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明るさが純正とそんなに変わらなくても、LED化することでウインカー点滅のキレが良くなるというメリットはありますよ。
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そっか。そういう意味では、LEDウインカーバルブを入れるメリットはあったんだ。
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そうですね。ただIPFのLEDバルブのコンセプトは、前述した通り、「純正より明るくなる」という点が外せないのです。
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だから、LEDウインカーバルブを出さなかった……と?
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これまでの経緯としてはそうですね。
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……う~ん、でもなぁ、さすがにちょっと堅すぎませんかね?
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というと?
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だって、ウインカーは基本的に点滅信号じゃないですか。
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そうですね。
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それなら、多少、電流値を上げて明るさを稼いだとしても、放熱面では逃げ切れるのではないでしょうか?
✔ 一般的にLEDは低消費電力でエコ、というのがメリットとして語られるが、ウインカーに関しては、電球をLEDに交換した場合、消費電力が下がるとハイフラが起こる。
✔ ハイフラ防止のために抵抗などを付け、電球並に電気を消費させる必要があるため、結果的に消費電力は変わらず、LED化=エコという図式はまったく当てはまらない。
✔ LEDは瞬間的に100%の明るさが出るから、モワーンモワーンではなくパッパッという歯切れの良い点滅になる。
社外品のLEDヘッドライトバルブを選ぶときの重要な注意点についてはDIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:市川哲弘
LEDやHIDバルブでお馴染みのIPF企画開発部に所属し、バルブ博士と言ってもいいほど自動車の電球に詳しい。法規や車検についても明るく、アフターパーツマーケットにとって重要な話を語ってくれる。
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