ワンオフパーツの作り方実習
FRP自作で穴が開く原因と対策
FRPを使って自作していると、パテを削って造形するうちに穴が開いてしまうことがある。硬いはずのFRPに、なぜ穴があいたのか。まず原因を知って、次に対策を打つとしよう。
硬いはずのFRPに穴が開くのはありがち。その原因は?
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「発泡ウレタンで作った〈型〉の抜き方」の続き。FRP&パテの造形が終わったので、内側の発砲ウレタンの型を抜いていましたが……
●レポーター:イルミちゃん
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ここで残念ながら……FRPに、穴が開いてしまいました!
(↓)●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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なんてことだー!!!
せっかくここまで作ってきたのにぃ! -
……。
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本多研究員がチョーシにのるから……
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え?
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「発砲ウレタンは柔らかいから、マイナスドライバーのようなモノでゲシゲシやれば面白いように取れる」と。
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そうですよ?
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……でも、それでマイナスドライバーで突いて、穴を開けてしまったんでしょう!?
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いやいや、そうではありません。
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?
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FRPはとても硬いので、そんなことでは穴は開きません。
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……開きましたけど?
じっさいにパスって。 -
それは、そもそも「FRPが無かったから(もしくは極端に薄かったから)」なんです。私が突いたせいではないのです。
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……あん? 犯人は本多研究員ではないとすると、真犯人は誰なんだ?
オモテから見ると……
原因はFRPのガラスマットが浮いていた!?
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「FRPが最初から無かった」なんて、ワケワカランこと言いますけど、FRPはしっかり貼りましたよ。しかも2枚も重ねた!
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しかし、「FRPの角(カド)の貼り方。ガラスマットは直角には曲がらない」でも言いましたけど、FRPは曲面やカドが苦手です。
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FRPを貼ったつもりでも、曲面に対してフィットしきれずに「浮いている」部分も出てきたりする。
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……浮いてた?
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その後、パテを盛っては削り……を繰り返して造形するうちに、ガラスマットが浮いていた部分のFRPは、削れてなくなっていきます。
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発砲ウレタンで型を作ったシャークアンテナの形にしようと削っているわけだから、型に対して「出っ張っている部分」があれば、削れてしまうのは当然。
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……そういうことか。
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見た目には出来上がっているように見えて、実は「下地にFRPがなく、パテだけで埋まっている部分」ができている状態となったわけです。
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「パテしかいなかった」から、マイナスドライバーで発砲ウレタンをゲシゲシ削り取っているうちに、カンタンに穴が開いてしまった。
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そういうことですね。
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……真相は分かりましたが、どうすれば防げるんだ?
FRPを厚く重ねれば、穴開き事故は防げるのか?
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今回は曲面部分で事故が起こりましたが、通常だと、穴が開くのはカドが圧倒的に多いです。
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……そういえば本多研究員が一番警戒していたカドの部分には、まったく穴はないなー。
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そこはアエロジル(※)を使って、分厚くFRPを貼ってありますからね。
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そういうことか。
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カドは、ガラスマットが浮くのは分かりきっているので。
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じゃあ、曲面にもっとガラスマットを重ねておけばよかったのかな?
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ただ、浮いたところに何枚重ねても、けっきょく削ってしまうことになります。
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う〜む。
それはそうですね。 -
重ねることより、なるべくガラスマットを曲げずに、まっすぐ貼ることのほうが大切ですね。
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なるほど。
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それと、FRPは重ねれば重ねるほど重くなる、というデメリットもあります。
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FRPを重ね貼りするのは、あんまり解決策にはならないわけか。
発砲ウレタンの型を抜かないでおく、という手もあるが……
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FPRは「カド」や「曲面」が苦手なので、穴が開く可能性はけっこうあります。DIYでもありがちな問題です。
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特に今回のシャークアンテナのような、小さくて複雑なモノを造形するのは難しそう。
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そうなんですよ。
で、その対応策なんですけどね…… -
フムフム。
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穴が開くのが恐ければ、型に使った発砲ウレタンを抜かないでそのままにしておく、という手もありますが……
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え!?
それでいいの? -
フェンダーやエアロパーツのような大物は、そうはいきません。しなりが全くない状態では、融通が利かない。それでは車体にフィットしないので、内部は空洞にしたい。
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……ふむ。
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しかし、シャークアンテナのような小物パーツだったら、熱による反りも少ないので、まあ、入れっぱなしもアリだとは思います。
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ナルホド。
もっと早くそれ提案しててくれれば。 -
しかし、根本的には解決策にはなっていない。FRPが無い部分は、パテがひずんでくるリスクがあります。
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ウッ。
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前にも言いましたが、パテには強度はありません。だから硬いFRPの上にパテが載っている、という状態を全面的に作るのが理想なんです。
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ところどころFRPが無いってことは……
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「発砲ウレタンの上にパテがのっかっている」状態に等しいので、その部分はパテが痩せたり、ヒビ割れたりする可能性が高まります。
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……そういうことなら、もっと根本的な解決策を打っておきたいなァ。
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そうですね。それなら、穴が開いたところだけ、ウラからFRPを貼って補強するのがベストです。
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改めてウラ面から、FRPの土台を増設するイメージか。
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DIYでFRPを扱っていれば、穴が開いたのを補修する場面に出くわす可能性は高い。
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あ……もしかして本多研究員、そのために「わざと」穴を開けたの?
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……え? ……あ、ああ、そうですね。わざとです。当たり前じゃないですか。ははは。
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……。
(……違うみたいだが、そういうことにしておくか。)
そのときに役立つ「穴埋め」の方法を解説しておきましょう
DIY Laboアドバイザー:本多 順
ワンオフ加工のスペシャリストだが、通常のエアロパーツ取り付けも仕上がりにとことんこだわるタイプ。超がつくキレイ好きでもあり、安心して車を預けられる。●ほんだ塗装 TEL:0564-58-5808 住所:愛知県岡崎市坂左右町堤上101-3 営業時間10:00~21:00 水曜定休
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