発泡ウレタン講習⑧
発泡ウレタンで型を作るときの、重大なコツ
発泡ウレタン講習の続き。前回までは発泡ウレタンの基本的な使い方・扱い方を学んだが、この先はいよいよ実践的にモノを作るための知識。何かを作る前に、発泡ウレタンの型を作るのだが、ここに重大なコツがある。
例えば「車の外装パーツを作る」という前提でのリアルな発泡方法
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車業界のワンオフ加工職人「ほんだ塗装」の手法を学ぶ、発泡ウレタン講習の時間です。
●レポーター:イルミちゃん
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発泡ウレタンの基本的な使い方は、これまでに解説してきました。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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ひとまず、シャークアンテナあたりの小物パーツなら、すぐできそうな!!!
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なんかもう、カタチになってきてるし。
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あ、いや、これはあくまでもデモであって本番ではありませんからね。
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え?
せっかくここまでカタチにしたのに。 -
前回までのやり方は、あくまでも発泡ウレタンの基本的な扱い方を説明するためであって、そもそもこのやり方では不完全です。
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……なぬ?
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実際に車のパーツの型を作るときのやり方は、基礎講習とはスタート地点が少し違うんですよ。
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そうなのッ!?
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ここまでは、発泡方法として段ボールだけでコップを作って発泡させてきましたよね。
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発泡ウレタンの発泡にはコップ(箱)がいる、って話でしたよね。
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しかし、最終的には車のボディなりバンパーなりに取り付けるパーツなら、車にくっついた状態で発泡させる必要があります。
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車で発泡???
どういうイミですか? 車はコップじゃないぞ? -
例えば、作ろうとしているのがシャークアンテナだとしますよね。
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はい。
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その場合は、車の屋根の上で発泡ウレタンを発泡させるのがベストなやり方です。
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……そ、そんなことしたら、屋根の上からデローンって……大惨事では???
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いや、もちろん、そうならないように処置した上での話ですよ。そのまま屋根で発泡させるのとは違います。
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……?
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屋根の上でコップを作る、ということですね、つまり。
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ワケワカラン。
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フィルムのようなものを使うので、ボディに直接くっつけるわけではありません。側面は段ボールで作るけど。
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それにしたって、屋根の上でやるより、箱の中で発泡させて、削って、カタチを作ってから屋根に載せればいいのでは?
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う~ん。
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それじゃダメなの?
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そういうやり方もナシとは言いませんが、それだと車のボディと接触する面を作るのが大変ですよ?
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むむ。
接触面のことか……。
発泡ウレタン|おさらい記事
フィット感重視で発泡ウレタンの型を作るなら、机の上より、屋根の上?
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車のボディは平面ではありません。基本的に、曲面でできています。
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……確かに。
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底面を上手に平らに削れたとしても、それを屋根の上にのっけたら、絶対に「面が合わない」です。
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ちょっとずつ削って合わせていくとか……。
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それはかなり大変な作業ですね。それともうひとつ理由があって、発泡ウレタンで造形した次の工程ではFRPを使います。
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しかし、そのFPRは硬化する過程でかなり熱を持つんですよ。
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それって問題?
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「発泡ウレタンの造形物が車にくっついていない状況」だとすると、熱でヨレるでしょうね。
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せっかくできたシャークアンテナの型が曲がってしまう!
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そう。「出来た!」と思って車に載せたら、「あれ、なんで面が合わないの?」ってなるのです。
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……そ、そういうことか。
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まあ、シャークアンテナのような小物パーツならともかく、長い物を作るときは、アールが保てなくなる。反り具合が変わってしまうためです。
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……ウーム。
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この話は、我々がオーバーフェンダーなどを製作するときも同じです。
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車体と接地する「側面」のフィット感のために、車体の面を利用しているんです。
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そう言われてみればそうだ。
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「車体側の面」以外の面を、段ボールで囲ってコップ状にしています。
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コップの一面は、車体だったのね……。
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そういうことです。完成したパーツを何かにくっつける場合は、その対象物に接触させた状態で発泡させるんです。
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理屈は分かったけど……それにしたって、屋根の上で発泡ウレタンを発泡させるところが想像できない。
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どういうふうに準備をするのかは、「実践編」で解説しましょう。
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ひとまず本日の教訓は、「机の上」ではなく「屋根の上」で作ろう!……ということで。ホンマかいな。
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「発泡ウレタン・FRP・パテ・塗装」の勉強は、ここからが本番です。
車体と発泡ウレタンの間には特殊なフィルムと、線を描くためにマスキングテープが使われる。
DIY Laboアドバイザー:本多 順
ワンオフ加工のスペシャリストだが、通常のエアロパーツ取り付けも仕上がりにとことんこだわるタイプ。超がつくキレイ好きでもあり、安心して車を預けられる。●ほんだ塗装 TEL:0564-58-5808 住所:愛知県岡崎市坂左右町堤上101-3 営業時間10:00~21:00 水曜定休
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