ワンオフパーツの作り方実習
発泡ウレタンで作った「型」の抜き方
発泡ウレタンの型を抜く方法。実際にウレタン型を抜く工程写真(↑)は、初心者には、ケーキ型にくっついたスポンジケーキをこそげ取っているようにしか見えないが、これはあくまでも発泡ウレタンで作った「型」である。
発泡ウレタンで作った「型」を抜くタイミング
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「板金パテの使い方のコツ。ファイバーパテとの違いは?」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
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ファイバーパテ→板金パテと工程が進んで、造形ができてきたら、仕上げの前に発泡ウレタンの型を抜きましょう。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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そういえば……発泡ウレタンの型って、まだ内部に入ったままでしたね!
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発泡ウレタンの型を抜くタイミングは、パテの造形がほぼ完成するところまでいってからのほうがいいです。
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それはなぜ?
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FRPほどではありませんが、パテも硬化するときは熱を持ちます。熱でヨレるリスクを減らすために、中身(型)が入っているほうがいいですね。
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だから今までは、入れっぱなしだったのか。
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まあ、抜かないで入れたままにしておく、という手もありますが、本来は不要なので、型は抜いてしまうほうがFRP製品っぽい完成度が出ますよね。
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エアロパーツだって、内部は空洞ですもんね。
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そうそう。今回作っているシャークアンテナも、エアロパーツ類と同じクオリティにしたいので、発泡ウレタンは抜きます。
土台用に貼ったFRPの不要部分を切る
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発泡ウレタンを抜くためには、「土台用に1枚貼りしたFRPの底面」をくり抜く必要があります。
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ウラ面(底面)から見ると、一番最初に貼った土台のFRPで発泡ウレタンが閉じ込められている状態です。
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ただ、ウラ面をくりぬく前に、まずはオモテ面から余分なFRPを切り落とすのが先ですね。
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シャークアンテナの造形(デザイン)が決まるまでは、持ちやすくて作業性がいいので残してきましたが、ここから先は不要です。
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ふむふむ。
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不要部分を切り落とさないと、裏から見たときにシャークアンテナのフチのラインがハッキリ分からないので、ウラ面をくり抜く前に、オモテから切るのが先。
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なるほど。
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まずはサンダーで、不要部分を切り落とします。
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FRPを切るときは、サンダーなどを使わないと刃が立ちません。
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このとき、サンダーでシャークアンテナギリギリのラインを切らないほうがいいです。
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少し余裕を見ておく?
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そうですね。「1ミリ2ミリぐらい残す」感覚で切り落とします。
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ちょっと残しておいて、そのあと削ってならしていくほうが安全策と言えます。
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本体を切ってしまったら困るもんね。
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そういうことです。最終的には削ることで面を揃えていきましょう。
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FRPは硬いので、60番あたりの目の粗いペーパーを使います。
ベルトサンダーで削る
粗めのペーパーで仕上げる
両面テープでの固定用にフチを残しておく
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いよいよウラ面のFRPを切って発泡ウレタンを抜きますが、ここで注意点。
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なんでしょうか?
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ウラ面(底面)のFRPは、約1センチ程度、フチを残すようにして切ります。
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……その1センチの意味するところは?
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最終的にシャークアンテナを両面テープで貼り付け固定するときの、接着面ですね。
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ナルホド。
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そのガイド用に、マスキングテープを貼っておきます。
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ここで使ったのは、15ミリのマスキングテープです。
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あれ?
フチは10ミリ幅にするんじゃないの? -
10ミリの両面テープを貼るとして、それが見えにくいようにする……という狙いで、15ミリフチを残します。
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そんな細かいコト考えて、幅を決めているんだ。
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マスキングテープの太さは、いろいろ使い分けるとガイドとして便利ですよ。ちなみにフェンダーのミミを作るときは、9ミリなども使います。
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幅の違うマスキングテープを、使い分けるわけかー。
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今回は、このラインをフチ(折り返し)として残します。
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最初はサンダーの刃が入らないので、まずドリルで穴を開けます。
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穴を開けたら、その穴にサンダーの刃を入れられるので、そこから切り始めます。
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マスキングテープの内側のラインにそって切ったら、棒状のものでこじって、めくります。
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中身の発泡ウレタンが、久々にその姿を見せました。
カド(3箇所)に全て穴を開ける
発泡ウレタンの型をくり抜くには?
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これで、発泡ウレタンをくり抜く準備ができました。
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発泡ウレタンは柔らかいので、まずカッターなどでフチに切れ込みを入れます。
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そのあとマイナスドライバーなどでこじると、カンタンに取れます。
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残った発泡ウレタンも、マイナスドライバーでゲシゲシやればどんどん取れます。
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この作業、面倒くさいようで、気持ちいいので苦になりません。
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あ……!!
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ど、どうしました本多研究員?
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……次回、「FRPに穴が開いたらどうするの?」に続く。
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な、なんですって???
サクー
ただねぇ、注意点としてはこの作業をしているときに、たまに……
DIY Laboアドバイザー:本多 順
ワンオフ加工のスペシャリストだが、通常のエアロパーツ取り付けも仕上がりにとことんこだわるタイプ。超がつくキレイ好きでもあり、安心して車を預けられる。●ほんだ塗装 TEL:0564-58-5808 住所:愛知県岡崎市坂左右町堤上101-3 営業時間10:00~21:00 水曜定休
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