ワンオフパーツの作り方実習
パテの使い方(車の加工の場合)
パテの使い方を、実践でプロに学ぶ。作例は車のパーツの〈シャークアンテナ〉だが、いろいろな加工・造形に応用できる。なおパテには「ファイバーパテ」「板金パテ」「ポリパテ」などの種類があって、それぞれ特徴が違うので、作業を進めながら解説する。
最初に使うのはファイバーパテ。その理由は?
-
「FRPの削り方」の続き。今日からパテ実習ですね。
●レポーター:イルミちゃん
-
ほんだ塗装では、まず第一段階に使うのはファイバーパテです(↓)
※ここで使っているのは「カーボンファイバーパテ」。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
-
ファイバー(繊維)が入っているパテ、なんですね。文字どおり。
-
ファイバーパテの特長は、厚盛りができること。「盛れるパテ」です。
-
ホホウ。
-
盛れるんだけど、それでいてまあまあ柔らかく、造形するのに向いているパテなんです。
-
硬いほうがいいんじゃないの?
-
硬すぎるパテだと、盛れてもけっきょく削る作業が大変なので。
-
あー。
なるほどね。 -
ほんだ塗装では、最初にファイバーパテ→次に板金パテ→仕上げにポリパテ。三段階で進めています。
-
え!?
そんなにいろいろなパテが登場するんだ! -
なぜ一種類のパテでできないのかは、作業を進めながら説明したほうが分かりやすいですね。
パテ(ファイバーパテ)の使い方
-
ここから、パテの使い方です。
-
パテも、FRPや発泡ウレタンなどと同じように、硬化剤を混ぜることで固まります。
-
ふむふむ。
-
多く入れると早く固まるし、少なめだと時間をかけて固まりますが……そういう裏技はさておき、基本的には指定の配合通りでやります。
-
今回使うファイバーパテでいうと、50対1の割合です。
-
使っているヘラは、ホームセンターなどでも普通に売っているモノです。
-
パテをコネコネするときのコツは?
-
よく混ぜること。
混ざると色が変わってきます。 -
硬化剤の茶色が混ざって、茶色っぽくなった。
-
しっかり混ざったら、FRPの上から盛ります。
-
カーボンファイバーパテなら、このように(↓)まあまあモリモリ盛れますよ。
-
乾いたら、削ります。
-
乾燥するまでの時間は、どれくらい?
-
乾燥時間は時期によりけりですが……爪で軽くひっかいてみて、白い傷ができたら削っても大丈夫です。
-
ほほう。
そんな目安があるのか。
まず、パテをこねる
硬化剤を投入
よく混ぜる
夏場なら、数十分で乾く
パテ(ファイバーパテ)の削り方
-
次はパテの削り方。
-
ファイバーパテの削り方としては、あて板とペーパーで削ります。
-
ファイバーパテの段階では、ペーパーの目はかなり粗めです。40番とか60番といった番手を使っている。
-
粗目のペーパーで、ザクザク削るんですね。
-
削りながら、カタチを作っていきます。
-
パテで造形するって、こういうことか〜。
-
最初に発泡ウレタンで作ったのはデザインの原案みたいなものですが、カーボンパテ段階では、最終的なデザインが決まります。
-
なるほど。
-
しかし、もし削っているうちに下のFRPが出てきたら、それ以上その付近は削らないようにします。
-
こういう箇所を同じように削っていると、FRPは固くて削れず、付近の柔らかいパテのほうだけ削れていくので、周囲がどんどん低くなっていってしまいます。
-
ムムム……。
じゃあどうするの? -
もしもFRP面が出てきたら、その付近はまたパテを盛り直します。ひとまずそこは放置して、別の場所を先に削りましょう。
-
……てことは、この後またカーボンパテを盛るのか。
-
どのみちカーボンパテは、何回も盛っては削り……を繰り返すので。
-
何回も……って何回ですか?
-
多いと10回ぐらいやります。これは、大げさな表現ではなく。
-
ひええ。
-
それを繰り返して、最終的なカタチを作っていくのです。
下地のFRPが露出してきた部分
パテはなぜ、盛っては削りを繰り返すのか?
-
パテって、なぜ何回も盛ったり削ったりするんでしょう!?
-
1回では「面」が出せないからです。
-
面が出せないって?
-
パテを盛って削っていくと、高いところと低いところの差が出てくるんですよ。
-
一見、シャークアンテナのカタチは出来ているように見えますが……
-
まだまだ「面」には凹凸がある状態です。高いところは削ればいいけど、低いところは盛るしかない。
-
そっか。
-
しかもこういうパーツは左右対処でないと見栄えが悪いので、片側はいい感じに面が出てきても、反対側は1ミリ低いよね、みたいなことにもなってきます。
-
それで、何度も盛ったり削ったりするんですね〜。職人の、ミリ単位のこだわりだ。
-
ハイ。
というわけで次は、面が低い箇所にパテを盛ります。 -
次に削るときは、高さが揃ってくるんだ。
-
これが、「パテを盛っては削る」を繰り返す理由なんですよ。
DIY Laboアドバイザー:本多 順
ワンオフ加工のスペシャリストだが、通常のエアロパーツ取り付けも仕上がりにとことんこだわるタイプ。超がつくキレイ好きでもあり、安心して車を預けられる。●ほんだ塗装 TEL:0564-58-5808 住所:愛知県岡崎市坂左右町堤上101-3 営業時間10:00~21:00 水曜定休
関連記事
- 発泡ウレタン講習スタート╱DIYにもおすすめの造形術をプロに学ぶ
- 発泡ウレタンの使い方╱発泡させる前に用意するアイテム
- 発泡ウレタンの使い方╱発泡させる前のコップ作りが重要
- 発泡ウレタンの使い方╱キレイに発泡させるコツ
- 発泡ウレタンの「倍率」。高い方がいい? 低い方がいい?
- 発泡ウレタンの扱い方で、失敗するパターン
- 発泡ウレタンの切り方と削り方
- 発泡ウレタンで型を作るときの、重大なコツ
- シャークアンテナをワンオフで作るメリットと、作り方のコツ
- FRPを使うときの「材料」や「道具」は何を揃えればいいの?
- FRPや発泡ウレタンを使うときの、車のマスキングのコツ(マーキングの重要性)
- FRPを車に貼るときは、下地にポリエステルテープを貼っておく
- FRPの貼り方をプロの職人に教わる
- 発泡ウレタンを「車の上」や「車の横」に接地させて発泡させる方法
- 発泡ウレタンを使った「型」の作り方
- FRPのガラスマットの貼り方
- FRPの角(カド)の貼り方。ガラスマットは直角には曲がらない
- FRPをパテ化する!? 「アエロジル」とは何者か?
- 直角の角(カド)へのFRPの貼り方。加工のプロの手法
- FRPの貼り方╱小さい&細かい部分はどう貼る?
- FRPの削り方╱どんな工具でどこまで削る?
- パテで「曲線」や「曲面」はどうやって作るのか?