ワンオフパーツの作り方実習
FRPを車に貼るときは、下地にポリエステルテープを貼っておく
FRPの取り扱い方法を実践で学ぶ連載。今回の工程のポイントは、FRPを貼る前の下地のポリエステルテープ貼り(※前回の工程でマスキングテープを貼ったが、その上に重ねて貼る)。なお製作例のシャークアンテナのサイズに対して、かなり広範囲に貼るのだが、その意味もわかっておこう。
マスキングテープの上にFRPを直接貼ったら大惨事!!
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「FRPや発泡ウレタンを使うときの、車のマスキングのコツ(マーキングの重要性)」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は、車にマスキングテープを貼って、マジックでマーキングするところまでやりました。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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今回の例は、ワンオフシャークアンテナだから、まず車の屋根の上に、土台になるFRPを貼るんですよね。
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そうです。で、FRPを使うときは、FRPは車のボディに直接貼れません。
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貼るとどうなるか。
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ボディと一体化して取れなくなって、大惨事です。FRPの溶剤が塗装面にダメージを与えるので、屋根を丸ごと塗り直すハメになります。
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えらいこっちゃ……。
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FRPを貼っている作業中に、液体がハネて、溶剤が車体に付着しても同じことです。
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マスキングテープなら前回貼りましたけど……
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この上からFRPを貼ったら、うまく剥がれないのかな?
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マスキングテープはただの紙。そして固まる前のFRPは、液体です。マスキングテープの上にFRPを貼ったら溶剤が染みて、溶けて、車体の塗装面に浸透します。
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やっぱり「ボディがエライこっちゃ」……となるのか。
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最初に貼ったマスキングテープは、あくまでも型取りのためのマーキング用に過ぎません。
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そっか。このあと貼るのが、本当の意味で「車体をガードするマスキング」なんですね。
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FRPを車に貼るときは、専用のポリエステルテープを使います。
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実際にどうやって貼るのか、見ていきましょう。
✔ ほんだ塗装が実際に使用している、寺岡製作所のポリエステル粘着テープ・631S #25
ポリエステルテープで車のボディをマスキング。貼り方のコツは?
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最初に貼ったマスキングテープの上に重ねて「ポリエステルテープ」を貼りますが、そのとき、気泡が入らないように注意します。
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気泡が入ると、何がダメなの?
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FRPが固まって外したときに、気泡の部分がそのまま凹んでいる形状になりますよね。
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……そういうことね。
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「そのままの形で固まる」のですから、なるべく真っ直ぐ平らに貼るに越したことはない。
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なるほど。
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そして、もっと重要なコツは、このポリエステルテープは、より広めに大きめに貼る……ということです。
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最初に貼った型取りのマスキングテープより、外側まで広く貼ってますね。
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今回の例でいうと、シャークアンテナ造形付近だけではなく、後ろ側はハネ(ウイング)のところまで貼りたいところです。
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そこまで貼るんだ!
シャークアンテナは、関係ないエリアですが。 -
これを貼っておく理由は、FPRの溶剤をガードできるからです。
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ふむ。
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後ろ側に人間が立って、屋根にFRPを貼ろうとしている状況ですから、その途中に溶剤が落ちるかも? ということを考えておかねばなりません。
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そういうことか。
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何度も言いますが、ペチャペチャ貼る作業中、FRPの溶剤が車体に直接付いたらアウトです。
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まさかの屋根の塗り直しとか、あり得ますので。
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そんな事態にならないよう、養生(マスキング)は大きめにするのが基本中の基本。このポリエステルテープこそが、FRPを貼るときの養生です。
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今回も、この位の範囲は養生しています(↓)
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マスキングの段階でゆとりを持ってカバーしておくほうが、作業もチマチマやらないで済みます。結果として、作業性も上がります。
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これでもう、FRP貼っていいのかな?
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まだです。
塗装時に使うマスキング用の紙を使って、車体を広範囲に養生する
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仕上げに、ポリエステルテープを貼った外側エリアに、大きなマスキングペーパーを使って、広範囲に養生します。
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ここで使っているマスキングペーパーは、単なる紙ではなくて、塗装のマスキングに使うものですね
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ポリエステルテープを貼ったエリアの、さらに外側をカバーしていきます。
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しかも、紙を折り曲げて、二重にして使っているんですね。
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塗装に使うマスキング専用紙とはいっても、紙は紙ですからね。
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プロはいろいろな意味で、保険をかけていることが分かります。
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最終的に、本多研究員はここまでスッポリ車の後部を覆いました。
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最後のマスキングは範囲も広いので、新聞紙を重ねて代用するなどでもいいと思います。
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それにしても、天井の一部にFRPを貼るだけでも、すんごい大げさにカバーするんですねェ。
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マスキング(養生)は、やってやり過ぎということはありません。後悔しないためには。
DIY Laboアドバイザー:本多 順
ワンオフ加工のスペシャリストだが、通常のエアロパーツ取り付けも仕上がりにとことんこだわるタイプ。超がつくキレイ好きでもあり、安心して車を預けられる。●ほんだ塗装 TEL:0564-58-5808 住所:愛知県岡崎市坂左右町堤上101-3 営業時間10:00~21:00 水曜定休
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