アクリルヘッドライト加工方法(第11回)
アクリル板の固定・接着にコーキング剤が向きな理由
アクリル板を固定、接着する工程。アクリルには専用の接着剤もあるが、ここで使うのはコーキング剤。しかも代用で使えるという話ではない。耐熱性があり、柔軟性もあって振動にも強いなど、コーキング剤が向きな理由があるのだ。ただし使い方には注意が必要!
アクリル板の固定にはコーキングが最適
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今回はいよいよ、アクリル板をヘッドライトインナーに固定します。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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固定は、どうやるつもりですか?
●レポーター:イルミちゃん
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まず、オモテから見える透明アクリル板は、ハメ込むだけで大丈夫ですよね。
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え?
……取れませんかソレ? -
前方向には抜けないようになっているので、裏側から乳白色アクリルで押さえるように接着すれば、固定できます。
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あー、なるほど! オモテに抜けないように穴を開けたことで、固定がラクになるわけか。
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そして裏に当てる乳白色アクリルは、アクリルをはめ込む窓より大きめサイズ。これを貼り付ければ、インナーに対しても固定されるわけですね。
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で、何で固定するかという話ですが…、
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この場面はコーキング剤(↓)が一番いいですね。
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え? アクリル用の接着剤を使うのかと思ったけど……違うんだ。
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アクリル板同士が完全に真っ平らならいいかも知れませんが、今回は両者共に手曲げ。湾曲しているアクリル板同士の重なりです。
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まあ……厳密には、面が完全には一致しませんよね。
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この状況で、アクリル用の接着剤だと完全には馴染まないというか、僅かに気泡ができたりする。
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気泡ができるとどうなるの?
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光り方に影響が出る可能性があります。部分的に明るくなったりとか、ヘンな陰ができたりとか。
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そっか。アクリル板をLEDで光らせるだけに、シビアですね。
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というわけで、クリア系のもので凹凸を吸収して馴染ませてくれるモノ……としてはコーキング剤がいいのです。
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なるほど。
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コーキング剤は熱にも強いですし、柔軟性というか弾力もあるので、振動にも強い。
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そういう意味でも、車のヘッドライト加工向きなんだ。
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ですね。外そうとしない限りは、外れる心配はほぼありません。
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ボンドで固定して、ヘッドライトを殻閉じした後に、アクリルがポロリンって外れたら大惨事ですからね〜。
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それと、ボンド等は熱で変色したりもしますよ。
コーキング剤は大胆に盛るのがコツ
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では、コーキング剤を盛ります。
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な、なんか。
ずいぶんと派手に盛りますね。 -
ちょんちょん、っていう付け方だと、間に気泡を噛んでしまう可能性があります。このあとヘラで伸ばすにしても、です。
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気泡が入ったら、光り方にも悪影響が出そうです。
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それが何より恐いので、僕らはこの場面はタップリ出すんです。
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ハミ出しそう。
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ハイ。
実際、盛ったコーキングの大半はゴミになります。 -
あ〜。ほとんど取ってるし。
なんか、もったいないなー。 -
ティッシュペーパーをたくさん用意しておいてください。
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……いや、だからそういう話じゃなくてね、森田研究員。コレは会社の備品なんだから、もっと大切に……、
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もう一回やります。
ちょっと薄いところがあるんで。 -
私の話、聞いてませんね。
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やりすぎでは?
やっぱりもったいなーい。 -
見た目には無駄にしているように思えるかも知れませんが、気泡が入る可能性をなくすことのほうが重要です。
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まあ、言いたいことは分かりますけど。だったらせめて、1回目にごそっと取ったやつを使えばいいのに。
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あ。
それはダメです。 -
どうして?
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初めて出るときはまったく空気に触れていない状態ですが、一回出したコーキングは、空気に触れています。
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フムフム。
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コーキング剤の特性として、完全硬化までは時間がかかりますが、半硬化みたいな状態まではけっこう早い。
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そうなんだ。……ココはドMだから、とかではないのか。
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一回出したコーキングをヘラでならしても、最初出したときのようなキレイな状況は作れないのです。
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だから、盛るときは毎回新しく出すのか。
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気泡が入ったら、それこそ全ての作業が無駄になります。ここはケチケチする場面ではない、ということです。
モリッ
ここでヘラが登場
ゴッソリと、ほとんど除去
モリモリー
再びガバ〜〜ッと除去
アクリル板を押しつける
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貼り付けるときは、少しずつ押して、負荷をかけていきますよ。
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ペタッと置くんじゃなくて……、
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後ろのアクリルを押すことで密着させつつ、内部のコーキングをジワーっと押し出していきます。
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全部流れ出すまで待っているんですよ。徐々に押す力を強めながら。
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貼るというより……。
中のコーキングを押し出している? -
そうです。そうすると板と板の間のコーキングが、均一な状態に近づきます。
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なるほどね〜。
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ペタっと貼るだけでは、内部にモリモリ残って、波打ってしまいますので。
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という風にして、キレイに貼れたら……、
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最後にヘラで、周囲の余分なコーキング剤を除去します。アクリル板を動かさないように注意ですね。
1か所固定できた!
これを繰り返して……
全部のアクリルを固定できた
コーキング剤を使ったときの要・注意点
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コーキングが固まるまで、どれくらい時間がかかるんでしたっけ?
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コーキング剤は、完全硬化には時間がかかります。1〜2日は、おいておきましょう。
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それと、最終的に殻閉じするまでには、3日以上置かないとだめです。
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3日も放置プレイ?
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乾燥する過程でガスが発生する。レンズの内側の曇り止めと化学反応を起こして、曇ったりします。
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では……最短でも明日、あさって、しあさって以降に殻閉じという流れ?
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いや、LEDの固定にもコーキング剤は使うので、殻閉じをするのは、もっと後になるかと。
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ほー! コーキング剤って、ライト加工で活躍するんですね〜。
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そうなんです。熱に強い、振動にも強い。コーキングは、ライト内では最強の固定アイテムなんです。
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なるほど、なるほど。
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ただしちゃんと乾燥させないと、ライト内で使うには最悪のモノにもなり得ますが。
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なるほど。
固まるまで、1日〜2日乾燥
この記事の実践アドバイザー
球屋・田中宏信サン。森田研究員に輪をかけたドM。働き者。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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