アクリルヘッドライト加工方法(第20回)
殻割りしたヘッドライトの戻し方(殻閉じ)╱シーリング編
殻割りして加工した、ヘッドライトの戻し方(殻閉じ)。なお殻閉じは、単に殻割りの逆ではない。加工したヘッドライトは、言うまでもなく防水が超重要。ここでは防水シーリングの手順を、実践で詳細に解説する。
ヘッドライト加工は、閉じ方で防水性が決まる!
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ヘッドライト加工連載も、前回までで中身の加工は終わりました。
●レポーター:イルミちゃん
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今回作ったメニューをおさらいしておきましょう。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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今日からは、ヘッドライトを戻していく過程を詳しく解説していきます。
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ここから先は、いわば「遠足の帰り道」みたいなものか……。早く光らせたいなぁ。
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油断は禁物です。ここから先の作業は、「加工したヘッドライトの防水性」に関わるという意味で重要なんですよ。地味なんですけどね。
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……いくら見栄えを良く作ったところで、
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水が入るヘッドライトでは台無し、ですよね。
インナー側面へのアクリル埋め込み
アクリルイカリングの取り付け
シーケンシャルウインカー加工
パーツを組み立てるのは後回し
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今回の86前期のヘッドライトでいうと、前回加工した流れるウインカー部分(元ポジションランプ部)は、ハウジング側に付きます。
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そうだ、保管しておいた純正のネジでリフレクターを付け直そう。
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……という組み立て作業は、後にしてほしいんですよ。
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え?
ヘッドライトを戻すんでしょう? -
今の状態は、ヘッドライトを殻割りしたときのままになっています。ハウジングのミゾに入っている純正シーリングも、レンズを抜いたままなので表面がデコボコ。
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フムフム。
それが何か? -
まずこの純正シーリングを温めながら、平らにならす作業が先なんです。
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このとき熱をかけるので、メッキパーツがハウジングに付いているとマズイわけですよ。
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あー、メッキが熱に弱いからか!
もともとの状態はこうだった
シーリングに使う工具って?
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工具は、普通のマイナスドライバーなどでできますヨ。
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へぇ〜、それはシンプル。
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シーリングを温めて柔らかくしながら、マイナスドライバーを使って押さえていくんです。
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金属ヘラの代わりみたいなものですね。
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そうです。ちょっとしたコツとしては、まずマイナスドライバーのほうを温めると良いですね。
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けっきょくのところ、ハウジング側にも熱は加えていくんですが、とっかかりとしては効果があります。
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なるほど。
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シーリングを温めるときに、ハウジング側に熱を加えすぎると変形する恐れがありますので、そういう意味でも意味のある技です。
まずは純正シーリングをならす
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ところで、シーリングは純正の残りだけだと不足気味。なので、足したいところではあるのですが……
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球屋でも単品のシーリング販売はしていますよね〜。DIYユーザー向けに。
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ただ、シーリング剤の付け足し作業をする前に、純正シーリングをキレイにならすほうが先です。
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そこも順番があるんですね。
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純正シーリングはレンズを抜いたままなので、凹凸があります。この状態で新しいシーリングをのせてしまうと、内部に空洞ができる可能性が高い。
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そうすると……、
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オモテからは問題なく見えても、内部に空気を溜めている場所があると、そこから水が浸入する可能性があります。だから押しつぶしておくんです。
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というわけで、ヒートガンで熱を加えながら、押しつぶしているところです(↓)
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この押しつぶす作業をしていると、本当にプチプチって音がしますから、エアーが抜けるのが分かりますよ。
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下までぐ〜っと押しつけるんだ。
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この作業をやらずに上からシーリングを足してしまうと、あとから押しても、層が厚すぎて完全に気泡をつぶせない可能性が出てきます。
球屋の防水シーリング。純正ヘッドライトが採用しているものと同じ、自動車ランプ専用のシーリング剤だ。500グラムの大容量で、量を気にせずしっかり防水できる。
ひとまず、純正シーリングをならした
シーリングを付け足す
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純正シーリングをきれいにならしたら、次は付け足し作業です。
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ここから用意した追加用のシーリングを使います。
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シーリングの色は黒とグレーがありますが、これは単純にもともと使っている純正シーリングの色と合わせて用意しましょう。見た目の問題として。
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どうせ見えない場所ですけどね。
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いや、車種によっては見える車種もありますよ。
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そうなんだ。では、混ざったらヘンになりそう。色は合わせなくては。
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まずは細く切り出します。ハウジングのミゾに入るように。
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これを引っ張って伸ばしながら、ハウジングのミゾに入れます。
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ここから先はさっきと同じ。ヒートガンなどで熱を加えながら、マイナスドライバーで平らにならしていきます。
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これも平らにするのがポイントですね。
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そうです。凹凸がある状態は、凹みの部分にエアーが溜まってしまうので、そこから水が入る可能性があります。
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地味な作業だけど、確かに重要だ。
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凹みをなくして、できるだけフラットな状態にまで持っていきましょう。見た目がキレイな状態を作ることは、けっこう防水性の高さとも比例する面がありますよ。
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なるほど。ところで、シーリングはどれだけ足せばいいんでしょう?
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目安は半分程度。ミゾいっぱいまで入れるのは、明らかに入れすぎです。
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なんか防水を考えると、タップリ入れたくもなりますが……
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レンズを戻したときに押し出されてきます。ライト形状によっては、内側のレンズ側に出てきたりとかもあり得ますよ。
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だいたい半分で十分ってことで!
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そして、シーリングが終わってから、リフレクターなどのメッキパーツを付け直します。
超音波カッターだとラク♪
細く切り出したシーリング
引っ張りながら……
ミゾに収めていく
この記事の実践アドバイザー
球屋・田中宏信サン。森田研究員に輪をかけたドM。働き者。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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