アクリルヘッドライト加工方法(第24回)
ヘッドライトのレンズをハウジングに戻す(殻閉じ)方法
注意点や下準備が非常に多かった「殻閉じ」の工程も、ようやく最終局面。ヘッドライトのレンズとハウジングを元に戻すのだが、ここにも知っておきたいコツがいろいろ。モデル車は86だが、今どきの立体的な形状のライトの殻閉じに、汎用的に役に立つ。
シーリングを温めながらレンズを押す
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前回、ハウジングのミゾにシーリングを入れてならすところまでは解説しました。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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現時点ではまだ、レンズが載っかっているのだけの状態ですね。
●レポーター:イルミちゃん
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ヘッドライトのレンズを戻すときも、殻割りの時と同じで、シーリングを温めていきます。
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殻割りのときと同じように、球屋ではヒートガンを使う?
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そうですね。
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といっても、ヒートガンではシーリング全周を温めることはできませんよね?
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部分的に温めながら、レンズを入れていきます。
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こうやってレンズをさしこんだ状態で、温めながら、奥に入れていきます。
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シーリングが柔らかくなっていくにしたがって、レンズが沈み込んでいきますね。
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重要なポイントとして、熱を一点に集中させると、レンズもハウジングも溶けてしまいます。
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常にヒートガンをフリフリ動かしながら温めていく感じですね。
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そうです。それとレンズ面方向(オモテ側)からは熱風を当てないようにします。
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レンズが変色したり、痛んだりするからですね〜。殻割りの時と同じだ。
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そもそもヒートガンを使った殻割り・殻閉じ自体が、レンズに余計な熱を当てないため。熱風をレンズに当てたら、なんにもなりません。
まずは外側方法から攻めるのが基本形
温めながら押している
一気に片側だけレンズを沈めるのはNG
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温めながら、指で押していくと、レンズが徐々に沈んでいくのが分かります。
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ただし、このまま一部分だけを完全に入れてしまうのはダメです。
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え……?
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今回の86のヘッドライトもそうなんですが、外側が完全に入りきってしまった状態だと、グリル側が入らなくなる(※形状的に内部が干渉してしまう)
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あらら。
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86に限らず、そういう形状のヘッドライトは割と多いです。順番に外から入れてくるというやり方だと、細くなっているグリル側の先端が入らなくなるっていう。
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それは……恐い。レンズの反対側のことも、気にしながらやる必要がありますね。
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片側(ヘッドライト外側)がある程度入ったら、側面まで完全に入ってしまう前に、先にグリル側の細い部分を入れ込まないといけない。
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グリル側は「受け側」の形状的に、入る方向が決まっているので注意です。
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端と端が入ってしまえば、あとは入るようにしか入らないので、展開がラクになりますよ〜。
ある程度、外側が沈んだところで……
グリル側の温めに移る
グリルの先端側をハメ込む
再び外側から攻める
ネジを戻すタイミングが重要!
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最初に殻割りするときは、まずネジ類を全部外してから、シーリングを温めました。
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ということは……殻閉じは逆に、ネジは一番最後ですね?
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いや、実はある程度までレンズが入り込んできたら、ネジを戻し始めるといいのです。
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え?
まだレンズが入り込んでいないのに!? -
手で押し込むというより、ネジを戻しながら、ネジでレンズをハウジング側に引っ張るという手法です。
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なんだか、見切り発車っぽく見えるのですが……。
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いやいや、最後まで手で押し込むと、あげくに微妙にズレていてネジ穴が合わない、という事態に陥ります。
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なんと!
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ハウジングのミゾにレンズを載せるといっても、遊びがありますから、レンズの入り方によってはネジ穴が一致しません。
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あの〜、もしそんなことになったら?
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シーリングが固まった状態では少しもスライドできませんので、ヘンな話、またレンズを開けないといけない。
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イヤ過ぎる!!
殻割りに戻る、みたいな話!? -
だから、レンズが沈みきる前に、ハウジングからネジを入れて、正しい位置に導くようにレンズを引っ張るのです。
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この方法なら、きちんとした位置にレンズが戻ります。
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なるほどね〜。
これは賢いやり方だ。 -
ただし、温まっていない状態でネジを締め込むのは厳禁ですよ。
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どうなるの?
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それをやるとレンズが割れるか、レンズの受け側のネジ穴をナメてしまいます。
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あわわ。
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だから周囲のシーリングが柔らかくなっているという前提で、ゆっくり慎重に回していきます。
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ネジを普通にクルクル締める、という感じではなく、かなりゆ〜っくりと回しています。
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そして、もうちょっと締め込める、という状態で止めたほうがいいです。
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本締めは後ってこと?
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いや。
そうなった時点でもう締まっています。 -
まだ締め込めそうな感触なのに?
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もうちょっといけそうな感覚がするのは、レンズ側のネジ受けが弱いからなんですよ。
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あー、そういうことか。
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本当はそれ以上閉めたらダメなのに、感覚としてはまだまだ閉められる手応えなので、ココは要注意なんです。
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なかなか、止め時が難しいなァ。
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手の感覚ではなく、目で見て判断しましょう。ツメがしっかりかかるところまでハウジングとレンズが合わさっていれば、閉まっている、と判断できます。
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なお、殻閉じしても、レンズとハウジングの隙間はちょっとは空いているものなんです。見た目にピッタリ奥まで行くとは限りません。
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へー、そうなんだ。
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ようはレンズがピタっと合うから閉じた、ということではない。シーリングできちんとシールされていれば、問題はありません。純正でも隙間は空いている、という作りなんです。
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そういう作りのレンズとハウジングの隙間を見ながら作業しても、ダメですね。
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そうなんです。だからツメがかかったら、閉まったと判断します。
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なるほどね〜。
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なお、ネジとネジの間は沈みきらないので、あとは手でしっかり押して入れ込んでいきましょう。
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ネジを入れるのは、ヘッドライトの外側方向から。そして最後にグリル側を完全に押し込みます。
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途中でレンズは入れてあるから、ここでつじつまが合わなくなる心配はありませんね。
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仕上げに、ハミ出た余分なシーリングはいらないので手で取ります。
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見た目の問題だけでなく、ヘッドライトを車体に付けたときにボディが当たってくる箇所などもあるので、ハミ出たままは良くないです。
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これでヘッドライトの殻閉じ完成〜!!
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ただ、本当にしっかりシールできているとは限りませんので、以前に紹介した、防水チェックを行います。
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水が入らないことを確認した上で、次のステップへ進みましょう。
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次回はいよいよ最終工程。加工したヘッドライトを車両に取り付けます。
ネジ周辺のツメ部分に注目する
ツメが合わさっていれば閉まっている
チャポン!
やり方は「ライトやテール加工後、必ずやるべき防水チェック」参照。
この記事の実践アドバイザー
球屋・田中宏信サン。森田研究員に輪をかけたドM。働き者。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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