ヘッドライトを殻割り(カラわり)する前に知っておくべきこと
ヘッドライトを加工するためには、レンズを開けなければいけない。この分解作業を「殻割り(カラわり)」 と言うが、DIYでやろうとすると失敗もつきもの。その極意をヘッドライト加工専門店、球屋の森田氏に教わる。
ヘッドライトは
熱分解できるタイプとできないタイプがある
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ヘッドライトの殻割りといえば「段ボール」と「ドライヤー」で開ける自作ユーザーが多いですが、アレってなんで温めるんですかね?
●レポーター:イルミちゃん
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シーリング剤を熱で柔らかくするためですが、全車種が熱で開けられるわけではありませんよ?
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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……え?
なんかまたものっけから重たい話の気配。 -
熱分解できる車種と、熱分解できない車種があります。
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し、知らなかった……。
熱分解できない車種って多いんですか? -
比率としては少ないです。1割弱ってところかな〜? 大半は熱分解できるヘッドライトが多いです。
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できない車種の例でいうと?
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ハリアーやマツダのCX-3がそうでした。なお、テールランプは熱では開かない車種のほうが多いです。
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熱で分解できない車種はどうやって開けるんでしょうか?
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それはもう切るしかないですよねぇ。
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どうやって?
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超音波カッターを使って切ります。
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ところで熱で分解できないヘッドライトって、もしかしてけっこう新しめのクルマ?
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傾向としては増えてきますね。
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そっかー。それは自作派には向かい風だなぁ。
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ただしテールランプと違って救いなのは、ヘッドライトは切ったラインはボディに付けると見えなくなるという点でしょうかね。
例:ハリアーは熱分解できない
熱分解できないタイプは、「熱では開かないヘッドライト / テールランプの殻割り方法」を参照。
ヘッドライトが熱で殻割りできるものかどうか調べる方法
見ただけではよく分からないが…
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あの〜熱分解できないタイプのヘッドライトだと、いくら温めてもレンズは外れないわけですよね?
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そりゃそうです。
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でも「ヘッドライト=熱で開く」って広まっているから、知らずに段ボールとドライヤーで温めつづけて、アレ〜開かないぞ〜?っていう人いませんかね。
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それは……実際いると思います。
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自分のヘッドライトが熱分解できるかどうかなんて、知らないわけだし。森田さん達プロはどうやって判断してるんですか?
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僕らは毎回いろいろな車種をやってるんで、いろいろな判別方法を持ってるんですよ。
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フムフム……いろいろってたとえば?
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シーリング剤の色とか(笑)。たとえばこのライト、シーリングがグレーなのが見えますよね?
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え、どれがシーリングか分からないんですけど……。
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このレンズのフチを密着させているのがシーリングですよ。
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あ、ほんとだグレーだ。それが何か?
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「シーリングがグレーなのに熱で開かなかったヘッドライト」というのは、今のところ遭遇したことがないです。グレーなら熱で開く可能性が高い。
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なんですかそのマニアックな判別方法は!!(笑)
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ははは。
でもこれは経験則としては本当の話ですよ。 -
ということはグレー以外の色も出てくるわけですね?
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というかシーリングは黒が多いです。
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そうなんだー。黒は熱で開かないってこと?
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いや、黒は熱で開くものと開かないもの、どっちもあるんです。
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ムムム……どっちも見た目は同じ黒のシーリング剤が使われていたら、どうやって判別するんですか?
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イイ方法があるので紹介しましょう。
グレーの部分がシーリング
つまようじでシーリングをツンツンしてみよう
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用意するのは「つまようじ」です。
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またなんか変なことやろうとしてますね。
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ヘッドライトの外側や上側に多いんですが、隙間からシーリングが直接見えている部分があるので、そういう箇所を探します。
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なるほど。
このライトにもそういう箇所はありますね。 -
刺さるようなら熱で開くと?
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いいえ。刺さるのはどっちも同じなんですが。
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あらら(笑)。
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問題はそのときの感触なんです。もし熱分解できないシーリングだとすれば、ゴムっぽい感触だけど刺したあとの穴がそのまま残ります。
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フムフム。
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熱分解できるシーリングは、刺して抜くときに「ちょっと引っついてくる感じ」なんですよ。
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ネバネバ系なんですね。
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そうですね。つまようじに引っ張られるシーリングなら熱で開けられます。
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そんな調べ方があったとは驚きですねぇ。
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だから僕らは新しい車種が出ると、こうやってヘッドライトをツンツンしてるんですよー。
シーリングを直接刺せる箇所を発見
そこで
つまようじで直接シーリングを刺す!
シール剤がつまようじに付いてくる感あり
これはどっちかなー♪♪♪
ヘンな人にしか見えませんが、大まじめです(苦笑)。
雨の日でもライトを殻割りしていいの?
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ヘッドライトを殻割りして加工すると、中に水分が入って曇ってしまうってよく聞くんですけど……。
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それはよく聞くセリフですよね。閉じるときの防水性に問題があると、そうなります。
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じゃあやっぱり雨の日とかには殻割りはしないほうがいいですか?
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それは関係ないですねぇ。
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でも湿気が多い日にやると、中に水分が残ってしまうのでは?
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ほとんどのヘッドライト、テールには空気孔があります。内部に湿気が溜まっていると取りつけ初期には若干曇ることもありますが、空気孔を塞いでいない場合(純正と同じ状態)は基本的に、湿気はしだいに抜けていきます。
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そうなんだー。でも「雨の日になるとライトが曇る」っていう人がけっこういるんですけどねぇ。
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それは基本的に水が浸入している可能性が高いです。つまり防水性の問題であって、「ヘッドライトを開け閉めしたときの天候の問題ではない」です。
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なるほど、閉めるときの防水性ですか。
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それはまた「閉めるとき」に詳しくお話しますよ。
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それを聞いて安心しました。この続きは「ヘッドライトの殻割り方法」です。
コレが空気孔
※水分はこの空気穴から外に出る
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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