アクリルヘッドライト加工方法(第22回)
LEDの静電気対策、「バリスタ」の使い方
静電気などの急激な過電圧・過電流(サージ)によって、LEDが切れるリスクがある。そしてヘッドライト加工でLEDが切れる、イコール殻割りからやり直し。そんな事態はなるべく避けたいので、LEDの静電気対策に有効な「バリスタ」を紹介する。
バリスタと整流ダイオードを用意する
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今日はヘッドライト内に入れた、LEDのサージ対策について解説します。
●アドバイザー:球屋 森田研究員
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サージ対策?
●レポーター:イルミちゃん
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静電気のような、瞬間的に発生する過電圧(過電流)を、サージ電圧(サージ電流)って言うんですけどね……、
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フムフム。
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LEDは高電圧に弱いので、何かのはずみのサージで、切れてしまったりするのです。
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LED、意外とモロいですよねぇ。
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そうなんです。切れたら交換すればいいのですが、ヘッドライト加工の場合、内装のLEDが切れるのとはワケが違います。
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また殻割りからやり直し! イヤ過ぎる。
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だから出来る限りの対策は打っておきたい。球屋では、ヘッドライト内でLEDを使うときには、「バリスタ」という電子部品を組み込んでいるんです。
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バリスタ……???
そんなのがあるんだ。 -
その他に「整流ダイオード」と、それらを固定するための「基板」(小さくていい)を用意します。
この3つを用意する
バリスタの使い方(つなぎ方)
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まず、バリスタの使い方(つなぎ方)。これは「ハイフラ抵抗」や「ゴーストキャンセラー」等の付け方と良く似ていますね。LEDの回路と並列につなぎます。
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LEDに対して「並列」とは、つまり下の図解(↓)のようにつなぐということです。
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バリスタに極性はありません。2つの足を、それぞれLEDに向かうプラス、マイナスにまたぐようにつなぎます。
✔ ひとくちメモ
バリスタも一種の抵抗のようなもので、抵抗値が変化する特性を持つ。電圧が上がるとバリスタの抵抗値が下がり、電気がバリスタ側に流れてLEDを守る、という仕組み。バリスタの使い方╱実践編
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今回は、ヘッドライトのインナーに埋め込んだアクリル用の光源としてLEDテープライトを使っていますよね。
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それから、アクリルイカリングの光源もLEDです(SMDリング)。
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これらのLED配線の途中に、バリスタを割り込ませておきます。
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空中配線では無理があるから、基板を使うんですね。
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そうです。まずバリスタを基板に固定しましょう。極性(向き)は関係ないです。
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整流ダイオードは、プラス側の線の、バリスタよりも手前(電源側)に入れたい。そこで回路としては、次のように組みます。
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ようするに整流ダイオードのマイナス側だけバリスタの足とつなげてある状態です。
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まだ配線をつなげていないので、これだけではどうつなぐのか分かりにくいのですが……ようは、整流ダイオードとバリスタの位置関係は、下のようにする予定。
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ひとまず部品をハンダ付けしたら、基板はギリギリサイズで小さく切り出します。
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それでは、イカリング(SEリング)の線に割り込ませる例を説明します。まずプラス線・マイナス線の途中にバリスタを割り込ませるために、配線を切断します。
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ここではまず、イカリング・プラス線の、電源側にくる線(ポジション電源を取る予定の線)を、整流ダイオードの入り口(プラス側)につなぎました(↓)。
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イカリングのマイナス線は、整流ダイオードの足とはつながず、バリスタだけ中継するようにつなぎ直します。
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整流ダイオードのマイナス側(カソードマーク側)の足はバリスタの足とつないであるので、その先にイカリング側のプラス線をつなぎます。
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整流ダイオードが入っているので、ややこしく見えますが……つまりプラス線・マイナス線の途中に、バリスタの両足をつないでいるんですね。
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基板は収縮チューブで覆って、絶縁します。
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これをイカリング(LED)や、アクリル光源用のLEDテープライトの配線それぞれに割り込ませておきます。
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静電気対策・サージ対策って、こういう作業のことなんですね〜。バリスタは覚えておいて損なし!
バリスタの足を差し込む
バリスタの両足を曲げる
整流ダイオードも載せる
バリスタの足と、整流ダイオードの足を使って……
このようにつなげる
チョキチョキ…
無駄のないサイズ
イカリングプラス線(電源側)
イカリング線に割り込み完了したところ
ここでは12Φの収縮チューブを使用している。
ブオォ
できあがり!
この記事の実践アドバイザー
球屋・田中宏信サン。森田研究員に輪をかけたドM。働き者。
DIY Laboアドバイザー:森田広樹
LED加工専門店・球屋代表。アクリルづかいを筆頭に、最先端のライト加工技の探求者。実際にお客さんの10台中9台はアクリル加工をする、というほどのエキスパートだ。派手さよりも「完成度と質感」を重視。デザイン性の高さでも全国屈指。
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