スマホの音楽を車で楽しむ(第12回)
12V→5Vに変換するUSB電源ユニットの仕組みを知ると、選び方が変わる
12Vから5Vに変換するUSB電源は、今や車の必需品。しかし車載用USB電源(スマホ充電器ふくむ)を買おうとして、こんな疑問を持つ人もいるはず。「なぜこんなに値段に差があるのか」。事実、数千円のものもあれば、百均でも入手可能。この謎を明らかにしよう。
12Vから5Vに変換する電源ユニットの仕組み
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「オーディオ用のUSB電源(DC5V)は、こだわらないと音質面で損をする」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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車の12V電源を、5Vに変換する電源ユニットについて、解説しておきましょう。
●アドバイザー:ビートソニック ワタナベ研究員
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シガーソケットに挿して使うスマホやタブレットの充電器が、まさに12Vを5Vに変換していますね。
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あるいは、車内でUSBポートを増設するための電源ユニットも、12Vを5Vに変換しています。
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USB電源は5Vだから。
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しかし、こういった電源ユニットが作り出す5V電源には、キレイな5Vもあれば、汚い5Vもあるんです。
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……汚い5Vですって?
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そうです。
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あのぅ、電気にキレイとかキタナイとかあるんでしょうか?
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あります。
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一体どういうこと?
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それでは説明しましょう。こういった電源ユニットが、どうやって車の12V電源から、5V電源を作り出しているのかを。
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……ほう。
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まず、12Vをオンオフするんです。これを平滑化して(平らにならして)、擬似的に5Vにしているのです。
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高速にオンオフする、パルス制御みたいな感じ?
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そうです。完全にパルスです。12Vが出ている時間と、出ていない時間をつくることで、山と谷ができますが、山を削って谷を埋めていくイメージ。
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どうやって、山を削って、谷を埋めるの?
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部品は、コイルとコンデンサーを使います。どっちの部品もエネルギーをチャージしますが……
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フムフム。
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コイルのほうは動きが複雑で、急に来る電気には反発したりするんです。コイルは変化を嫌うので。
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12Vが「ドン」ときたときには、反発するんだ。
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そうなんです。で、その12Vがパタっと遮断されると、今度は逆に12Vを起こそうとする方向に働くんです。
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コイルくんはアマノジャク。
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そういった「コイルの特性」と「電気を一時的に溜めておくコンデンサー」を組み合わせることで、山を削って谷を埋めていくわけですね。
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分かりました~!
なんとなくは。 -
重要なのはココからです。
電源ユニットの性能が低いと、5V変換後にノイズがのる
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コイルやコンデンサーの働きで、12V→5Vの波形に変えるのですが、こういった部品の動きには、タイムラグがあります。
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タイムラグがあると……どうなる?
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それがノイズになってしまう。電気をバッと出したり、引っ込めたりする過程で、ノイズが必ず発生するんです。
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ようするにブレみたいなものだ。
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ハイ。そのブレをいかに抑えるか、というのが電源のノウハウなんです。キレイな電源とは、このブレが少ない状態のことです。
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キレイな5Vって、そういう意味だったのか~。
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コイルとコンデンサーの値をうまく合わせていかないと、キレイな5Vにはなりません。
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コイルくん達がキモなのね。
例のアマノジャクな。 -
それだけでもないです。実際にパタパタ動かすのは、半導体を使っているんですけど、その半導体の出来の問題もあるし。
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ダメな半導体だと……どうなるの?
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遅い半導体を使うと、電気の立ち上がりも遅れてしまう。真っ直ぐ上がらずに、時間をかけて12Vに上がるような感じです。
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富士山みたいなカタチの山になるってこと?
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そうです。そういうのもノイズの原因になるし、電気のロスにもなる。
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かといって良い部品を使うと、コストが上がる……
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そうなんです。さらに、サイズの問題もあります。
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サイズって?
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例えばシガーソケットに差す充電器も、コンパクトに作ることを優先すると、部品を大きくはできません。
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そりゃそうだ。
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しかし、ちゃんとした電源ユニットを作ろうとすると、どうしても部品が大きくなるんです。
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買う側からすると、コンパクトなのがいいけど……
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大きい電源ユニットには、それなりの理由があるわけです。
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そのかわり、キレイな5V電源を供給してくれるってことね。
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電源ユニットで発生したノイズはすべて、その先につながる電装品の回路に入ることになってしまう。オーディオ製品では、この差は重要です。
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あの〜、スマホの充電用だったら? なんでもいいんでしょうか?
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電源ユニットの作りがそれなりだと、本当に短い時間ながらも5V以上の電気が流れたりするタイミングも増えるので、負荷は大きくなります。
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高い電源ユニットと安い電源ユニットの違いなんて、ぜんぜん知らなかったけど、こういう差があるんですね。
スマホ充電でも、本当ならキレイな電源にこしたことはありません
DIY Laboアドバイザー:渡邊悠二
カーエレクトロニクスの雄、ビートソニックにおける技術部のホープであると同時に、同社の「顔」としての活躍も期待される人物。プログラマー出身で、ITにも車にも強いが、いちばん得意なのは料理という説も。●ビートソニック TEL 0561-73-9000
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