缶スプレー塗装を学ぶ⑪
缶スプレー塗装でキレイに重ね塗りするコツ
缶スプレー塗装のコツは、重ね塗りにある。1度に吹く塗料を少なくして、時間を置いて塗り重ねるのだ。では1回あたり、どの位の濃さまで塗るのか。失敗しないで均一にキレイに缶スプレーで塗る方法を、板金塗装のプロが解説する。
缶スプレー塗装で失敗しないコツ
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「塗装前の準備で、地味に大切なのは〈置き方〉と〈両面テープ〉」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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塗装直前の準備も整いましたので、最終工程。色を塗装します。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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今回は、プロの板金塗装職人に、あえて缶スプレー塗装でやってもらいます。
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缶スプレー塗装で失敗しないためのコツは、サフェーサーの工程で解説しましたが、本番の塗装でも、ほぼ同じことが言えます。
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サフェーサーの吹き方で学んだポイントを、おさらいしておきましょう。
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ここで、サフェーサーの時との違い。サフェーサーを吹く前には、シリコンオフで脱脂しましたが……
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フムフム。
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サフェーサーを吹いたあとは、無理にシリコンオフで拭かなくてもいいです。
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そうなの?
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シリコンオフの成分で色を引っ張ってしまうと、拭いたあとの線が塗装後に出てしまう、なんていうデメリットもあるため、サフェのあとはそのまま塗ってしまいましょう。
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なるほどね。
いよいよ本番か。 -
さて、缶スプレー塗装で失敗しないためのコツは、少しずつ、重ね塗りしていくことです。
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重ね塗りって?
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1回あたりの塗料を少なくして、時間的にインターバル(間隔)をおいて、2回、3回……と塗り重ねていくのが重ね塗りです。
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1回で塗ろうとすると、何がダメなの?
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垂れます。「塗料の垂れ」は、塗装における典型的な失敗例と言えます。
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テローンっていうやつね。それを防ぐための重ね塗りなんだ。
✔ 一番左のプラサフは前回吹いた下地。あとは本番の色(中央)と、仕上げのクリア(右)を用意する。
>> 缶スプレー塗装のポイント
缶スプレーをよく振る
(インターバルの間は振り続ける)
塗りにくい場所から塗る
(塗料がトマリにくい場所から)
軌道ラインが重なる場所は垂れに注意!
(手のスピードを速めるなどで工夫)
※まだ見ていない人は、「缶スプレー・サフェーサーの吹き方と、失敗しないコツ」から読むのがオススメ。
複雑な造形のパーツを、均一に塗装するコツ
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重ね塗りをする理由は分かりました。では「1回あたり、どの位の濃さまで塗るのか」。
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見た目に分かりやすく、白サフェーサーの上から黒を塗ってみましょう。
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だんだん塗料のミストが付いていきます。
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対象物のまわりをグルグル回りながら、まずは塗りにくいところから色を付けていきます。
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今回のパーツの形状でいうと、本多研究員は明らかに下側のカドから重点的に攻めているもよう。
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塗りにくい場所、塗料がトマリにくい場所を塗っているうちに、それ以外の場所にも自動的にミストはかかります。
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下部を塗った直後(↑)ですが……上の方にも、それなりに色が付いてきている。
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これとは逆に、塗りやすい上から先に塗って、後から塗りにくい下部にいくと、塗っているうちに上側に塗料がつきすぎて垂れたりします。
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それで、塗りにくい場所から塗るんだ。
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塗りやすいところは、あとからサッと短時間で塗れますからね。
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この順番だと、複雑な造形でも、均一に塗りやすいのです。
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ナルホド。
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1回目としては、こんなもんかなー。
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まだ下地が透けて見えるレベルですが?
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1回あたりの吹き具合は、そのくらいが無難です。インターバルをおきながら重ね塗りすれば、垂れずに厚塗りすることはできますので。
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では、このへんで止めて、乾かしてから、重ね塗りしていけばいい?
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いやいや、重ね塗りにおけるインターバルとは、「完全に乾燥させる」という意味ではありません。
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ムム?
重ね塗りは、時間を開けすぎてもダメ
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それはなぜ?
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インターバルが長すぎると、シンナーが完全に抜けきって引けてしまい、次に重ねる塗料のミストが馴染まないので、バサバサしていきます。
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……む、難しいな。1回目の塗料が乾いてしまうと、2回目の塗料が馴染まなくなるとは。
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程よいタイミングで重ね塗りすれば馴染む。インターバルが短いほうが、塗料が馴染んでいくので、いい感じには仕上がりますよ。
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でもなあ。
短すぎたら垂れるんでしょう? -
そういうことですね。
まさに。 -
では、インターバルとは、時間的にどのくらい開けるのが正解なの?
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「何分」などと、時間で答えるのは無理ですね。塗料にもよるし、気温や湿度にもよるし、塗り方にもよるし、対象物にもよる話で……
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では聞き方を変えて……本多研究員は、何をもってして、2回目を吹きにいくのか?
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艶(ツヤ)がなくなるぐらいまでは、待ちます。
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ほう。
艶の有無で、判断できるの? -
シンナーが飛ぶと、艶が引けてきます。そのタイミングで、次の重ね塗りに行きます。
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そういうコツがあるのか〜。でも、一般人が見た目だけで判断できるだろうか。
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では、もう少し分かりやすい方法も紹介しておきましょうか。塗装に馴れていない人にオススメの「重ね塗りのタイミングを測る」やり方を。
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……何やら、良策がありそうですね。
重ね塗りは、インターバル(間隔)の時間を開けすぎてもダメなんです
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