缶スプレー塗装を学ぶ⑥
缶スプレー・サフェーサーの吹き方と、失敗しないコツ
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缶スプレーの吹き方。サフェーサーも塗料もスプレー缶に入っているので、吹き方のコツは共通点が非常に多い。そして失敗のポイントも似通っている。缶スプレーで塗る前の準備から、均一に塗装する方法までを実践しながら解説しよう。
サフェーサー(缶スプレー)を塗る前の準備
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「FRPの巣穴補修(後編)╱パテ埋め1回で埋まらない巣穴の埋め方」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回でFRPの巣穴埋めを終えましたので、今日はサフェーサーの吹き方です。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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いよいよ缶スプレーのおでましか。
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サフェーサーをなぜ吹くのか……その意味は、以前に勉強しましたね。
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……ただ、このときは本多研究員がいつものガンで吹いていました。プロの板金屋ですので。
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今回は、あくまでも缶スプレー塗装をテーマにしていますので、サフェーサーも缶スプレータイプを用意しました。
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まずはシリコンオフで脱脂しましょう。油分などをキレイに除去しておくほうが、塗料が弾かれにくいので。
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次は設置。
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棒などの小道具を駆使して、塗装する対象物を浮かせて設置します。
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低すぎると下のカドにしっかり吹けないし、高すぎても上から吹けません。
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上からも下からも缶スプレーを向けられる高さで固定するってことですね。
✔ 詳しくは、「サフェーサーとは? 塗装前にサフェーサーを吹く意味はなに?」参照。
✔ プラサフ、というのはプライマー・サフェーサーのこと。プライマー(接着剤)とサフェーサー(下地塗料)の役割を兼ね備えている。
缶スプレー塗装のコツはまず、マメに振りながら塗ること
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サフェーサーに限らず、缶スプレー塗装の注意点としては、まず、とにかくよく振ること。
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軽く振るのではなく、カチカチ音がするように容器を思い切り振ります。
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フムフム。
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どこから塗り始めるか?……ですが、僕の場合は、まず塗りにくいところから塗ります。
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塗りにくいところ?
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今回のRフィン(ルーフに付けるスポイラー)を例にすると、FRPのバリ取りをした、底部のあたりを狙います。
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なにもそこから入らなくても、という気もいたしますが…?
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塗りやすいところは、あとからでも塗れます。
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どっちにしても、全部塗るのは同じなのでは?
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そうなんですけど……塗りやすいところから入るとしますよね。
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そのほうが勢いづけるのでは?
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しかし、形状によっては塗料のトマリが悪い場所なども出てきます。
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トマリが悪いというのは、なかなか色が付かないってことですね。
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そうです。なかなか塗れないなーなんてシューシューやっているうちに……
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……ふむ。
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先に塗れていた部分に余計な塗料がかかり過ぎて垂れる、なんてことになりかねません。
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うっ。
……なるほど。 -
だから、下のカドや、巣穴が多めにあった場所など、そういう場所をスタート地点にしたほうがいいと思う。
缶スプレーで均一に塗装するための基本
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缶スプレーの塗料は、対象物めがけていきなり噴射し始めないように。
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それは、どういうことでしょうか?
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空中に噴射しはじめて、スライドしながら対象物を通過するイメージが大切です。
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最初は空中で吹き始めているのか……
(↓) -
噴射をはじめてから、横スライドで塗装しながら……
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そのまま反対側へ突き抜ける、ということです。
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なぜ、わざわざ空中に塗料を吹いてしまうのでしょう? もったいないのでは?
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これは薄く均一に塗るためですね。いきなり正面から吹き付けたら、その場所にまとまった塗料がかかることになります。
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……なるほど。
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ただ、難しいのは、単に均一な塗り方をすれば、均一に塗れるわけではない点ですね。
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……ど、どういうイミでしょうか?
缶スプレーで均一に塗装するための応用
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平らな板を塗る場合は、手の振りのスピードが同じなら、同じように塗れます。しかし今塗っているのは、立体的なFRPパーツです。
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確かに。
複雑な形状をしていますね。 -
例えば、後ろから前に向かう軌道で、側面も上面も、全部均一に塗るとしましょう。
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……となると、先が細い先端には、かなり多めに塗料がかかることになります。
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ウッ。それって、もしかして、またしても垂れの原因……?
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そういうことですね。軌道ラインが何回も重なるところは気をつけたほうがいい。
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どうすればいいの?
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例えば、手の振りのスピードを速めれば、かかる塗料は減るので、早く振り抜けることを意識したり……
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スピードコントロール。
できるかな? -
あるいは、先端を通る軌道を減らすとか。
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そこまでコントロールしているのか。
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……というわけで、1秒にどのくらいの速度で塗ればいい、といったセオリー的な話は僕はしません。
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使用する缶スプレーのメーカーの説明をベースにしつつも、リアルなところは、実際の形状に合わせて調整する必要がある、ということですね。
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そういう意味では、先に缶スプレーの噴射範囲を見ておくといいかも知れません。
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……これこそ、塗料をムダ使いしているように見えますが。
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噴射範囲が広いほど、同時にいろいろな場所に塗料がかかるんです。
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あー。
そういうことになりますよね。 -
その加減が分かっていないと、無意識のうちに、いろいろな方向から塗料が重なって、垂れやすくなる。
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……なるほどね。
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それから、一回にのる塗料の量が多すぎると垂れます。「ベター」っとではなく、「シューー」っと素早い通過で、薄く塗ります。
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一気に塗らない。
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そうです。インターバルをおきながら、何回も塗り重ねていきます。ガンでも、そこは同じですね。
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フムフム。
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また、ガンと缶スプレーで決定的に違う点として、エアーガンなら常にエアーが供給されるから、同じ勢いで噴射し続けることができますが……
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缶スプレーの場合は、連続で噴射していると、「シューーー」がすぐに「ジュジュジュ」ってなる。溶剤と塗料が分離してしまって、ヘンな出方になります。
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本多研究員は、缶スプレーを噴射していない間は、ほとんどずーっとカチカチ・カチカチ振っていましたが……そういう理由なんだ。
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そう。とにかくマメに振りながら塗る。インターバルの間は、缶を振りましょう。
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缶スプレー塗装を成功させるには、コツがいろいろあるんですねェ。
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なお、今回の話は、サフェーサーだけではなく、色を塗るときでも基本的には同じ。
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缶スプレー塗装、共通のコツですね。
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そして次回は、「サフェーサーを吹いたあげく、巣穴が発見されたらどうするの?」です。
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……え?
巣穴は事前に埋めてあるはずなのに、イヤな予感。
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