缶スプレー塗装を学ぶ⑨
サフェーサーの回数は何回? 1回でいいのか、2回もあり得るのか?
サフェーサーを吹く回数は、1度でいい場合もあるが、2度目のサフェーサーが必須になることもある。ここではまず、何がサフェの回数を変えるのかを理解しておく。また、2回目のサフェーサーを吹く作業には、1回目とは違ったコツがある。
下地塗料としてのサフェーサーなら1回でいいはずだが……
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「サフェーサーの磨きの必要性は? サンドペーパーは何番?」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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通常の流れだと、サフェーサーを磨いたら、次は本番の色を塗装しますが……
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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やっと塗装ができる。
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ただし、このまま塗装には進まず、2回目のサフェーサーを吹いたほうがいいケースもあります。
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サフェーサーは、1回のときもあれば2回のときもあるって言ってましたね。
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そうです。今日はサフェーサーの回数についての考え方を、補足しておきます。
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サフェーサーは何回吹くのが正解か?
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それは巣穴次第な面があるんですよ。
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フムフム。
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まず、純正部品なら、そもそも巣穴なんて出てこないわけです。
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そうなんだ。
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だから、純正部品の塗装なら、下地としてサフェーサーを吹いたら、磨きを入れて、そのまま塗装します。
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サフェーサーは1回で済むんですね。
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いっぽうFRPやパテでできているものは、どうしても巣穴が出てくる。
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サフェーサー前にパテで埋める方法も教わりましたが……
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それでも、サフェーサーを吹けば、巣穴がハッキリ見えるようになるので、また出てきてしまいます。
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そもそも、サフェーサーには、巣穴を発見するための意味合いもある。
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そうですね。本番の色を塗装する前なら、巣穴の補修はできるのですから、塗装前に巣穴が発覚するのは悪いことでなく、むしろ良いことです。
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本番前に分かってよかった、と考えるようにしましょう。ポジティブにね♪
ワンオフ加工や自作パーツは、パテの使用量も多く、巣穴との戦い。
2回目のサフェーサーが必要になるケースは?
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で、このときに巣穴補修に使うパテの種類によって、道が分かれるのです。
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フムフム。
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ほんだ塗装の場合は、サフェーサーを磨いて、それでもまだ少し巣穴があれば、通常だとスポットパテを使って消します。
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スポットパテなら、使っても、そのまま塗装の工程に進むことができるからです。
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つまり、巣穴補修をしても、サフェーサーは1回で済む。
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そうですね。そのかわり、スポットパテは、パテであってパテではない。
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……ど、どういう意味?
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盛れるわけではないということです。ほんの薄付け程度しかできません。
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それで巣穴が埋まらなかったら?
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そういう巣穴を、スポットパテでどうにか埋めようとするのはダメです。凹んでいるからって、他のパテと同じ感覚で盛ったらダメ。
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では、どう埋めるの?
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スポットパテでは埋めきれない巣穴なら、ポリパテを使います。これなら大きめの巣穴でも埋められます。
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ただし、ポリパテを使ったら、そのまま本番の色を塗装することができなくなります。
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そのまま塗ったらどうなるの?
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パテが塗料を吸うので、パテが露出している部分は塗膜が凹んで、段差のような線が出てしまいます。
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ポリパテ→塗装、という順番は不可なんだ。
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そうです。この場合は、ポリパテでの補修後に、2回目のサフェーサーを吹いて、下地を作り直します。
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ようするにサフェーサーの回数の違いは、1回目のあとに残った巣穴の大きさ次第ってことか。
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例えば、ワンオフのエアロ加工やオーバーフェンダー加工だとしたら、サフェーサーは2回吹くのが前提です。
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それはなぜ?
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FRPやパテを大量に使う加工品は、巣穴も多いからです。そのため、造形後の仕上げにポリパテ→サフェ①→ポリパテ→サフェ②→スポットパテ→塗装……そういう順序で進めます。
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気が遠くなる作業ですね。
✔ スポットパテの詳しい使い方については、「サフェーサー後にやること」参照。
2回目のサフェーサーを吹くときのコツ
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2回目のサフェーサーを吹く場合は、全体に吹く必要はありません。
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と言いますと?
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巣穴を補修した周囲だけ、吹けばいいのですよ。
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マスキングをして、サフェーサーを吹くんだ。
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そうですね。
塗り分けのときなどと同じですね。 -
じゃあ、2回目は少しはラクできるかな。缶スプレーを吹く面積が減るし。
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しかし、そうなると、マスキングした境界線のところには段差できますよね?
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む……。
段差って? -
部分的に2回目のサーフェーサーを吹けば、塗料の厚みで、境界線には段差が生じます(↓)
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こんな風に段差で「四角いシールを貼った」みたいになると、平らにならすのは手間がかかるし、磨いているうちに表面が波打ってしまうリスクもあります。
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ぜ、全部塗り直したほうがいいような……?
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そこまでしなくても、なるべく平面でカットしないようにマスキングするのがコツなんですよ。
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平面でカットしないって?
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今回のFRPパーツの例でいうと、近くにあるカドを利用するんです。塗料の段差がカドにできるように切る。
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カドが立っているところは研ぎやすい。カドをならせばいいだけなら、磨きもすぐ終わります。
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ナルホド。
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結果的に、広めに塗り直すことにはなりますが「なるべく塗料の段差がカドにくるようにマスキングする」のがコツです。
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ただ、近くに都合よくカドがなかったりするので、遠いところは平面で切ってもいいです。
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そのへんは対象物の形状にもよるし。
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そうですね。巣穴の補修箇所から遠い場所は、2回目のサフェーサーを厚く塗る必要はないので、フワフワっとかかる程度に抑えます。
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うっすら吹けば、段差になりにくい。
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そういうことですね。磨き直すときになるべくラクできるように、2回目のサフェーサーを吹きましょう。
マスキングテープとマスキングペーパーで、関係ないところは覆ってしまう。
こんなイメージ
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