純正配線の分岐で電源を取って、純正ヒューズを飛ばすパターンに注意
純正ヒューズを飛ばすおそれのある、配線分岐のダメパターンを知っておこう。タコ足配線がNG……というような、単純な話ではない。理屈が分かっていれば、タコ足配線でもトラブルは避けられる。
純正配線の分岐。複数の電装品の「常時電源」を取ると、ヒューズを飛ばす可能性が高まる
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「1本の純正配線に対して、複数の電装品をつなぐときは、どう分岐させるべきか?」の続き。
●レポーター:イルミちゃん
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前回は、「入力線」を純正配線から分岐で取る場合には、タコ足配線で複数の電装ユニットで活用しても問題はない、と言いました。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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電装ユニットの配線は、大きく分けると「電源」「入力」「出力」の3種類があるという話を思い出しましょう。
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ここでカンタンに「入力線」のおさらいをしておくと……
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「入力線」は、電装品を動かすためのトリガー(引き金)として使われる線です。
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入力線は、単なる「合図」のための信号をもらっているに過ぎないので、あまり電流は流れません。
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だからタコ足配線的に使ってもいいよ、ってことか。
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そうです。しかし、純正配線から取ろうとしているのが、「電源」の場合は話が別です。
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電源線とは、ようするに常時電源を取る線のこと?
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電装ユニットによっては、常時電源ではなくACC電源線などをメイン電源に使うケースもありますが、常時電源を取る指示がある場合は、それがメイン電源ですね。
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ふむふむ。
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電源線を1本の純正配線からタコ足配線で取るのは、注意が必要です。
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これの問題点は?
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電源には「容量」の問題があります。この配線パターンで電装品を増やすと、容量オーバーしたタイミングで、おおもとの純正ヒューズが飛びますね。
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そうなったら、純正機器も影響を受けることになる。
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ヒューズが飛べば、分岐元の純正配線にも電気が流れなくなりますから、その延長線上にある純正の機器が動かなくなります。
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飛ばすヒューズによっては、大変な事態にもなりかねません……
✔ どれがが「入力線」なのかは電装ユニットによるが、ロック線・アンロック線・ドアカーテシ線・ACC電源線・イルミ電源線などが、「入力」で使われる代表的な線。
※ACC電源線やイルミ電源線を「電源」として使うケースもある(LEDなど)。
純正配線から取り出し可能な電流は、何アンペアか?
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そもそも純正配線の常時電源は、何かしらの純正機器が電源として使っています。
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当然そうですね。
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純正は容量ギリギリの設定ではなく、ある程度のマージンは取ってあるものなので、そのマージン分を少し分けてもらう、という発想なんですね。
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ふむ。
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その純正配線から何アンペアくらい取り出しできるか?……は、「何アンペアのヒューズを通ってきている線なのか」が分かれば、ある程度判断できますが、配線図が手元にないと難しいです。
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一般的なDIYだとすると、判断材料がないですよね。
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ただ、判断材料は、全くないわけではありませんが。
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ほお。
例えば? -
ひとつには、配線の太さが目安にはなる。この話は、以前にしましたよね。
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細線ではなく、中太の配線を狙え!というお話でした。
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もうひとつ、「電装品が動くタイミング」を意識するのも有効です。
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なんのこと?
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例えば、電装品A、B、Cの3つの電源を、タコ足配線で取っていたとします。
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……それ、ダメなやつなんでしょう?
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しかし、この3つの電装品が動くタイミングがバラバラだとしたら、いっぺんに3つ分の電流が流れることはありません。
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ホー。
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いっぽう、同じタイミングで動く電装品の電源を、1本の純正配線からタコ足で取るとヒューズが飛ぶ可能性が高くなるのです。
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なるほどね。
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そういうことを考えながら取り付けると、トラブルを起こす確率はぐんと低くなります。
一番確実なのは、バッテリーから直接電源を取ること
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大容量の電装品を付ける場合を考えましょう。例えばアンプとか……
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アンプ内蔵のチューンナップウーファーとか……
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そういうものを付けるときは、純正配線の分岐ではなく、バッテリーから直接電源を取るようにしましょう。
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その場合は横取り、ではないもんね。
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純正配線からの分岐でいいのか迷うレベルだったら、バッ直で取ってしまうほうが確実とも言えますね。
バッ直は純正ヒューズを飛ばす心配はないし、電装品にとっても安定した電源が取れます
アース線の場合はどうなの?
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今回のような話は、「アース線の場合はどうなのか?」……これまたよく聞かれる質問ですので答えておきます。
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アース線も、電気が流れるという意味では同じことでは?
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まあ、電装品のアース線を、純正アース線に合流させるケースだと同じような注意は必要になりますが……
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普通はこの方法よりも、ボディアースすることが多いですよね。
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アース線探しは、意外と難しい面もあるんでしたよね。
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ボディアースであれば、車体金属を伝わってバッテリーマイナスまで戻りますから、純正配線のキャパを心配する必要はありません。
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ナルホド。注意すべきは、あくまでもプラス線……それも電源線に限った話ってことですね~。
配線から電源取り出しする場合のエレクトロタップの接触不良問題については、DIYラボ〈動画部〉がYouTubeでも解説しています。
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL 079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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