常時電源とは? 車の電源の種類を、初心者向きに解説
車の電気入門の連載がスタート。第1回目は「常時電源とは何か?」を、初心者にわかりやすく解説する。車の電気について質問されることが多い中級者が、おさらいするのにも好適。
常時電源とは?
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車は好きだけど、電気は苦手! そんなアナタにピッタリの新連載スタートです。
●レポーター:イルミちゃん
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第1回のテーマは、「常時電源とは?」です。
●アドバイザー:CEP 服部研究員
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ジョージ電源と読みます。
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常に電気が流れてくる電源……ということですね。
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常に電気が流れるって、どういう意味?
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ようするに、エンジンがオフの状態でも電気が流れてくる電源です。
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エンジンを切ったら、電源は遮断されるイメージがありますが……
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そんなことはありません。エンジンオフの状態でも使える電装品っていうのはたくさんあるじゃないですか。
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シガーソケットは使えなくなる(※)し、窓も開かなくなりますよ?
(※)一部欧州車等で、例外はある。
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しかし電動スライドドアは、エンジンを切っていても開きます。
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フム。
そう言われてみればそうか。 -
もっと分かりやすい例でいうと、エンジンオフでもブレーキを踏んだら、ブレーキランプは点灯するでしょう。
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それを言い出したら、ハザードランプだってボタンを押せば点灯しますね。
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そうです。あるいは、ホーンも、エンジンオフの状態でも鳴らせます。
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言われてみれば、エンジンオフでも使える車の電装品っていろいろあるな。
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ハザードとかホーンとか、エンジンオフで使えなかったら危ないですから、全ての電源が遮断されるわけではない、という仕組みなのです。
バッテリーと常時電源は違うの?
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あの〜。
バッテリーも常時電源ですよね? -
もちろんそうですが、「常時電源」の表現のニュアンス的には、バッテリーのプラス端子と直接つながっている電源を差します。まあ、間にヒューズ等は入っていますが。
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フムフム。
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一般的な電装品の取り付けで、「常時電源を取ります」と指示されたときには、わざわざバッテリーから電源を取ることはしませんので。
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確かに、「常時電源を取る」と「バッテリーから直接電源を取る」は、ちょっと目的が違いますね。
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普通に常時電源がほしいだけなら、さっき言ったとおり、多くの電装品が常時電源を使っていますから、車内で取れる場所はいろいろあるのですよ。
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では次に、常時電源をどこから取り出しするのが良いか、考えてみましょう。
✔ バッテリーから直接電源を取る方法は、「バッ直」と呼ぶ。これも根元は常時電源には違いないが、一般的に言う「常時電源を取る」方法とは目的が異なる。
ヒューズから常時電源を取り出すときの注意点
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ここからは、常時電源の取り方に関するアドバイスです。
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まず、常時電源が確実に来ているのはどこか。それは冒頭で挙げたような、常時電源を必要とする電装品のヒューズです。
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ホーンやブレーキランプのヒューズには、常時電源が来ています。
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そっか。
検電テスターで調べるまでもなく、分かるんだ。 -
そうですね。ヒューズボックスのフタや取説で、ヒューズの種類を確認すれば目星はつきます。
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検電テスターがなくても、常時電源は取れる♫
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まあ、そうなんですが、念のため検電テスターで確認することは大切です。
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ただし、常時電源探しをするときに、検電テスターだけで判断するのも考え物です。
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と言いますと?
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そもそも何のヒューズなのか分かった上で常時電源を取るということが重要ですので。
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常時電源なら何でもいいわけではない、という意味か。
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例えば後付けする電装品の取り付けミスでショートさせるとか、電装品の不具合とか、何かしらの原因でヒューズを飛ばす可能性はありますよね。
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フムフム。
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しかし、ECU(コンピューター)などのヒューズを飛ばしてしまうと車は走行不能になるし、何らかの支障をきたすと大変なことになります。
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……恐い。
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それに比べるとブレーキランプやハザードランプは、ランプ類に電源が行っているだけだと分かっているので、まだ安心できます。
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あのー、ブレーキランプやハザードランプが点灯しないのも危ないんですけど?
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それはもちろんそうです。しかし、作業中にヒューズを飛ばしたとしたら、そのことが分かります。
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……あれ、ハザードが点灯しなくなったぞ?
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それはハザードのヒューズを飛ばしたから、という風にすぐ分かりますね。ホーンでも同じことが言えます。
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ナルホド。
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ランプ類のヒューズであれば、ヒューズを交換すれば元には戻ります。
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しかし、ECU(コンピューター)関連やエンジン関連の回路というのは、何かあったときの被害が甚大になる可能性があるので、避けたほうがいいのです。
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純正の電装品に対する影響も考慮に入れながら、取り出す場所を決めるってことですね。
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ハイ。この注意点は、どんな電源でも同じ事が言えますが、常時電源は特に重要な電装品に使われている電源ですので、なおさらです。
✔ 検電テスターを使って常時電源ヒューズを調べ、電源を取り出す、という具体的な手順は、「常時電源をヒューズから取り出す方法」参照。
ヒューズ以外の場所から常時電源を取るとしたらどこ?
ヒューズボックスから常時電源を取るのは定番ですが、注意としては容量不足の問題
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容量不足?
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ヒューズから電源を取る時にはエーモンのヒューズ電源などを使うのが定番ですが、取り出し容量が5アンペアであることが多いと思います。
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いっぽう、電動品取り付け時に常時電源を取る……ということは、それはメインパワーという意味での電源です。
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電装品によっては、5アンペア以上の常時電源が必要なこともあります。
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となると、いよいよバッ直の出番か?
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その手もありますが、そこまではしなくても、そこそこしっかりした常時電源を取れる場所が、以前に紹介したキックパネル裏です。
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ヒューズ、またはこのあたりが、常時電源の取り出し場所としてオススメと言えます。
✔ エーモンのヒューズ電源を例にすると、20アンペア以上のヒューズと交換する場合は、10アンペア取り出しができる。
✔ ACC電源やイルミ電源は「単なる合図、信号線として欲しいだけ」のケースも多い。その場合は、容量は大して必要としない。
リスクの低い常時電源の取り方(探し方)については、DIYラボ〈動画部〉もYouTubeで解説しているので、ぜひ見てね。
DIY Laboアドバイザー:服部有亨
キーレス、オートライトをはじめとする車の電装カスタマイズで有名なコムエンタープライズ(CEP)で製品開発を担当。車の電装、プログラミングの双方に長けている。配線図大好き。●コムエンタープライズ TEL
079-230-2323 住所:兵庫県姫路市大津区天神町2-78
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