足まわりコラム
車高調のバネレート変更で車高を低くしようとして、失敗するケース
車高をもっと落としたくて、車高調のバネを短くて固いものに交換。しかし現実には、狙い通りに車高が低くならないこともある。そんな「バネレート変更の失敗パターン」を解説。
短くて固いバネ(高いバネレート)だとどうなるか?
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「車高調のバネレート変更で乗り心地を改善しようとして、失敗するケース」の続きです。
●アドバイザー:スパイス 佐藤研究員
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前回は、乗り心地改善のためにバネレートを下げたら、逆に乗り心地が悪化してしまうケースを紹介しましたが……
●レポーター:イルミちゃん
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今日は、別の失敗パターンについても触れておきます。
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まだあるんだ。
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「車高をもっと落としたいから」という理由で、車高調のバネを交換する人もいます。
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短いバネに交換するんですね。
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ハイ。
それと同時に、セットでバネレートを上げたりします。 -
車高を低くするのに柔らかいバネだと、干渉の問題が出てくるから。
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ここで極端に固いバネレート……20Kなどのバネを入れようとする人もいます。
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ガチガチのバネで低車高ツライチにしよう、みたいな狙いですかね。
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でもそうなると、必然的に車重でバネが縮む量は少なくなります。
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ふむ。20Kのバネレートなら、1ミリ縮めるのに20キロも必要だ。
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となると、短いバネを入れても、それだけでは車高が下がらなかったりする。
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効果を打ち消し合ってしまうんだ。
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そこで、全長調整式の車高調だからブラケット側の調整(全長調整)で車高を落とそうとするわけです。
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あ、そうか。全長調整式の車高調であれば、ショックの全長を縮めればいい。
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しかし、車高調によっては、もうそんなに落とし幅の余力が残っていなかったりして……
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あれ?
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……けっきょく、元の状態より車高が上がってしまったんじゃないか? なんていう失敗パターンもあります。
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あらま。
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この失敗パターンだと「今より車高を落とす」目的が達成できないばかりか、乗り心地だけ悪くなります。
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でも、車高を低くする人が足回りを固めたがるのは、よく耳にする話ですよね?
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まあ、確かに車高ベタベタのセダンがガチガチのバネを入れたりするイメージはありますよね。
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そういう車は、固いバネでも低車高になっているのはなんで?
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そういう仕様の車って、そもそも使っている車高調の構造も違うんですよ。
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……と言うと?
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例えばイベント仕様の車に人気のTディメンド車高調は、20Kのバネレート(※)のバネを使っていたりするんですけど、そのかわりショック自体もかなり短めに調整できるようになっています。
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次元の違うバネレートもあるんだ。
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最初から、落として固める、っていう仕様目的のために車高調が作られていますよね。
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なるほど。
Tディメンドはその筋では有名なメーカーです。 -
でも、一般的な足回りメーカーが出している街乗りユースの車高調で、いきなり20Kのバネレートなんて入れたら、車高が下がらなくなって当然です。
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そういうことね。
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ようするに、根本的に車高調の方向性と合っていないことを、バネ交換だけで実現しようとしても難しいのです。
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なるほど。
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だからやはり一番最初の時点で、自分に合った車高調を選んでおくことが重要です。
※Tディメンド車高調は4K~20Kまでが標準選択範囲で、オプションではもっと高いバネレート(最大80K)まで設定されている。
車高調の選択ミスをバネレート変更で解決するのは難しい!?
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ここで、前回の「乗り心地を改善するためのバネ交換」に話を戻しましょう。
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ふむ。
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バネレートを下げて乗り心地を改善したいと思っているなら、車高の落とし幅の余力を確かめてみるんです。
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乗り心地を改善しようっていう人が、今より車高を落としますかね?
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そうではなくて、全長調整で落とす余力があるなら、そのぶん長めのバネに交換するという手はありますから。
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ああ、そういうことか。
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もともと短いバネを使っている車高調で、そのままバネレートを下げると線間密着(↓)しやすくなるなど、問題が出てきます。
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だから、バネレートを今より落とすぶんだけ、長いバネに交換するんです。
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なるほどね。
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ただ、その組み合わせによっては車高が上がってしまうので、そこは全長調整で落としてバランスを取ったりする。
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だから、車高調の全長調整による下げ余力がポイントなんだ。
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……というふうに考えながらバネを選定しますが、まあ、けっきょくのところ車高調のバネ交換は、1発で決めるのは難しいと思います。
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試行錯誤しながら自分の仕様を煮詰めていくようなイメージ?
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そうですね。だからバネ交換で今の車高調の悩みを1発解決、みたいな過度の期待は持たないほうがよいかと。
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やはり最初の車高調の選択が、重要な気がするなァ。
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そうなんですよね。バネの長さにしてもバネレートにしても、乗り心地重視の車高調だとそれなりに長く、柔らかいバネが使われているものです。
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ふむ。
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そういう方向性の車高調は、車高の落とし幅は少なくなりますが、乗り心地の面では失敗しにくいと思います。
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車高調を買って失敗したあとではなくて、買う前に、バネの性格も見極めようってことね。
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バネの自由長やバネレートがしっかり公開されている車高調なら、買う前にそういうところもチェックしたほうがいいですね。
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車高調の選択ミスを、あとからバネ交換でリカバーしようっていうのは、けっこう難しい話のようです。
DIY Laboアドバイザー:佐藤峻一
元カスタムガレージスパイス代表。足回りに強く、得意技は勝負ツライチだが、実用性重視のセッティングも高いレベルで実現。ドレスアップ全般に明るく、不思議な包容力があってDIYユーザーにも人気。
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