>>> 車高調のバネ交換ガイド(第3回)
バネの自由長を短くしつつバネレートを上げたら車高はどうなる?「実験」
バネの自由長を短くすると、車高が下がる。しかしバネレートを高くすると車高が上がる……という理論だけでは、今一つピンとこない。実際にバネを換えた状態を見たい! ということで、実験レポート。百聞は一見にしかず。
実際に車高調のバネを交換しながら検証してみた
-
「車のバネ(スプリング)の選び方」の続きです。
●レポーター:イルミちゃん
-
前回は、「バネを短くしつつ、バネレートを高くすると、相殺して車高がほとんど変わらないこともあり得る」という話をしましたが……
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
-
フムフム。
-
今日は実際に、それを実験してみましょう。
-
実験って?
-
実際に車高調のバネを交換して「20ミリ短くしたらどのくらい車高が下がるのか」「バネレートを1K(※kgf/mmの略)上げたらどのくらい車高が上がるのか」テストしてみるんです。
-
それは興味深い。
論より証拠、ですね! -
まず、スタート地点として用意したのが、バネレート5Kで、自由長170ミリのバネです。
-
そして、このバネを付けている時点での車高を、リアフェンダーのアーチ高で測定しておきます。
-
モデル車は30プリウスです。
-
フェンダーアーチの高さ(厳密にいうとシーラー部分の下ツラ)で見ると、573ミリですね。
バネレート5K・自由長170ミリのバネ
バネレート5K・自由長170ミリ
バネレートは変えずに20ミリ短いバネに交換してみた
-
次は、素直に車高が落ちるよう、同じバネレート5Kのままで、自由長が短い150ミリのバネに交換してみます。
-
同じくフェンダーアーチの高さを測定してみると……
-
アーチ高が、553ミリに下がりました!
-
元々の高さが573ミリなので、ここではちょうど20ミリ車高が落ちていますね。
-
ホホウ。
ピッタリ! -
ただし、ピッタリ20ミリ落ちたのは、“たまたま”です。
-
「自由長を20ミリ短くしても20ミリ車高が下がるわけではない」って言ってましたもんね。
-
ハイ。実際の車高は、「バネに荷重がかかって縮んだ状態の長さ」で決まるので、車種ごとの軸重(※車重ではない)によって変わります。
-
とはいえ、氏家研究員の経験則通り、20ミリ短くした場合は、だいたい20ミリ前後落ちるんですねぇ。
-
バネレートさえ変更しなければ、そうですね。
-
しかし、ここでもし、「短くしつつ固いバネ」を入れたらどうなるのか?
バネレート5K・自由長150ミリのバネ
バネレート5K・自由長150ミリ
自由長が20ミリ短く、バネレートが1K固いバネにすると
-
スタート地点のバネより、20ミリ短くて、バネレートが1Kアップしています。
-
「車高も落としつつ、ちょっと固めたい」という選択ですね。
-
……この場合はどうなるのか。
-
アーチ高が、563ミリと出ました。
-
直前のバネレート5Kより、10ミリ車高が上がりましたね。
-
モデル車の30プリウスだと、「1Kで10ミリアップ」と分かりやすい数値になっていますが……
-
バネレート1Kアップで何ミリ車高が上がるかは、軸重によって変わります(※)
-
最初の5K・170ミリのバネに比べれば、10ミリ下がってはいるけど、効果が相殺しているのが分かります。
-
「バネを短くしつつ固める」と、思ったように下がらない結果になる。それが、このパターンです。
-
ナルホド。
-
……しかも、ここでは1Kしか上げませんでしたが、実際に車高調のバネを換えたいと言ってくる人は、もっと固いバネを入れたがる傾向です。
-
確かにバネレート6Kでは、まだまだ柔らかいバネという印象ですね……。
-
そう思う人が多いですね。「10Kとかにしたい」と言う人はけっこういます。
-
仮に、同じ150ミリの自由長のままで、バネレート10Kを入れたらどうなってしまうのか?
-
やってみましょう。
そこで用意したのが、バネレート6K・自由長150ミリのバネです
バネレート6K・自由長150ミリのバネ
バネレート6K・自由長150ミリ
※ そもそもバネレートは、「そのバネを1ミリ縮めるのに何キロの重さが必要か」、という数値なので、軸重(車重ではない)によって結果は変わる。
自由長が20ミリ短く、バネレート10Kのバネにすると
-
これ(↓)が、バネレート10K・自由長150ミリのバネです。
-
ウーム。
見るからに太くなってきましたね。 -
ここまでレートを上げたら、確実に車高は上がると予想はつきますが、実際にやってみます。
-
アーチ高が、578ミリになりました。
-
ということは、直前の6Kのバネと比較して、15ミリ車高が上がりましたね。
-
5K→6Kに変えたペースでそのまま上がっているわけではないとはいえ、大幅に車高アップ。
-
スタート地点のバネと比べると、自由長が20ミリ短くなっているにもかかわらず、車高が5ミリ上がったことになります。
-
バネレートを上げることが、第一目的なら話は別ですが……
-
目的が車高を下げることだとすると、こういうバネの選択では、目的を達成できないのです。
-
車高を下げることが目的でバネを交換する場合は、要注意ですね~。
バネレート10K・自由長150ミリのバネ
バネレート10K・自由長150ミリのバネ
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
関連記事
- 1. 車高調のバネ交換(スプリング交換)入門ガイド
- 2. 車のバネ(スプリング)の選び方
- 4. バネ(スプリング)のIDってなに?
- 5. IDが合わないバネを付ける、車高調の「ID変換」加工
- 6. 車高調が硬い! バネレートを下げることで、乗り心地は良くなる?
- 7. 底付きしていて乗り心地が悪い! バネレートを上げたら防げる?
- 8. バネレートで車高はどう変化する(上がる・下がる)のか実験した
- 9. 車高調のバネを交換する方法
- ショックの底付きとは? 車高調でも起こる原因と対策
- ショックの底付きと勘違いするのは早い、走行中のゴンゴン異音
- わざとバンプタッチ(フルバンプ)させれば限界車高が分かる
- 車高調の正しい調整方法
- 全長調整式車高調のシートを回す順番と方向
- トーションビーム式(リア)の車高調整方法
- リアショックの全長調整でやりがちな失敗
- ショックアブソーバー調整方法、リアは手強い
- バンプラバーをカットする(切る)前に知っておくべきこと
- 車高調の乗り心地が悪いときの改善策は?