アクスルのローダウン量を決める前に知っておくべきこと
多くの軽自動車の車高は、車高調だけでは落ちきらない。一方、アクスルによるローダウンは非常に有効。ならば車高調はいらないのでは?……そう考える人もいるが、アクスルは車高調と組み合わせるのが前提。アクスルのローダウン量設定には、深い意味があるのだ。
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前回の記事で、ワゴンRなどの軽自動車では、アクスルを使ったローダウン方法がいかに有効かを説明しました。
※「軽自動車は車高調+アクスルでどの位ローダウンできるか?」参照。
●レポーター:イルミちゃん
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「車高調を付けたけれど、これだけしか下がらないの〜?」という場合には、アクスルが有効です。
●アドバイザー:J-LINE 氏家研究員
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しかしですね、氏家研究員。
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?
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アクスルでガツンと落ちることが分かった以上、そもそも大して落ちない車高調なんて、いらないんじゃないでしょうか? と私は思ったんですよ。
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ああ。
なるほどね。 -
だってアクスルを使えば、50ミリでも70ミリでも落とせるわけじゃないですか。
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ワゴンRの場合は、そうですね。
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……とすると、最初から50〜70ミリダウンで十分という人は、アクスルを使えばそれで済む。車高調だと、そこまで落とすのだって難しいわけじゃないですか。
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そういう質問をしてくる人もいますね。
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やっぱりね!
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「車高調は買わず、リアはアクスルで落として、フロントだけダウンサスってダメですか?」……とか。
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そう! それが一番、無駄なく確実に落とせる方法じゃないですか! 車高調には落ちないリスクがあるんだから。
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それは、あまりいいやり方ではないです。ある程度、ショックのほうも短くしないと、バランス的によくない。
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あらま。
そうなんだ。 -
アクスル標準以内のダウン量なら……まあ、まだ問題はないですけどね。
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では、問題になるのは?
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オーダーの7センチダウンとかで、それをやるのはやめたほうがいい。あくまでも、車高調などと併用するのを前提に、設計したダウン量なので。
アクスルのローダウン量設定には意味がある
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例えば、こんな人もいます。「フロントだけ車高調を組んで、リアはアクスルだけで落とすから、もっと落ちるアクスルをオーダーしたい!とか」
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先ほどのダウンサスバージョンの進化版ですね。できるんですか、ソレ?
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物理的には出来ますよ。しかし設定としては、用意していない。そこには理由があるんですよ。
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と言いますと?
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車高調と違って、アクスルは足まわりの構造自体を変えるような発想のパーツです。
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ですね。
純正のアクスルと交換するわけですから。 -
アクスル交換の結果として、足まわりが可動する範囲が増える。でもボディ側は、何も変わってない。
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ウムム。
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純正は車体と足まわりが接触しないように作ってあるのに、当たってしまう可能性が出てくるわけですよ。
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でも現実にワゴンR用は50ミリ、70ミリと落としているじゃないですか?
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もともと足まわりとフレームの間に、クリアランスがありますから。アクスルを使ったローダウンは、そのクリアランスを利用しているに過ぎません。
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ああ、そういうことかー。
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アクスルだけで、ドンドン落とそうとするのも無理があるわけです。車高調だけで落とそうとするのも、無理があるけど……、
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お互い、できる範囲でちょっとずつがんばりましょう、ってこと?
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ハイ。それが一番負担が少ない。アクスルは、あくまでも車高調やエアサスのローダウンを補うものです。
フロントだけなら車高調で落ちきる
車高調との併用を前提にローダウン量を設定
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アクスルの設定ローダウン量は、車種によって異なるという話は前回もしましたよね。
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ワゴンRの場合は標準ダウン量が50ミリで、オーダーなら70ミリが可能なんですよね。
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でも例えばムーヴの場合は、標準で30ミリダウン。オーダーでも、40ミリダウンまでとなっています。
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ムム。
ムーヴは落ちないっ!? -
いや、逆です。ムーヴのほうが、車高調だけで落ちる分が大きいからですよ。
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ああ、そういうことね。
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だからアクスルで落とす分としては、30〜40ミリで十分なんです。
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あくまでも車高調との併用を考えて設定しているから、そうなるのか。
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それと、車体と足まわりの関係を見たときに、50ミリ60ミリと落とせるアクスルを作っても生かせないんです。
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生かせないとは?
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バンプタッチする前に、タイヤがタイヤハウスの天井に当たっておしまい、とか。
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純正ボディ・純正タイヤハウスで、アクスルだけ頑張ってもダメなんですね。
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そこから先は車体側を加工していかない限りは、もっと落ちるアクスルを作っても意味がない。落とすだけならできるにしても。
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ではもしも、車体側を加工する。だからもっと落ちるアクスル作ってよ〜! という人がいたら?
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それは可能だし、時々やる話です。
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車体側の加工って、タイヤハウスの天井とかですね。
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タイヤハウスも切り上げるから、もっと落ちるアクスルが欲しい、ということで、作ることはあります。そのあたりが分かっている人になら、ワンオフ対応はできるので。
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なるほどね〜。
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タイヤハウスの切り上げが必要なダウン量のアクスルを、設定として作るのは意味がない。そればかりか、間違った使い方をされる可能性もあるので通常はやりません。
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間違った使い方って?
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冒頭で話したような、アクスルだけで落とそうとするとか。
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そっか。そんな事情からも、車高調を前提としたローダウン量で設定されているわけですね〜。
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そうなんですよ。標準ダウン量のアクスルならまだしも、それを越えるダウン量のアクスルを単独で用いるのはやめたほうがいいです。
ムーヴ用アクスルのダウン量は標準で30ミリダウン
基本的には車高調と併用して使うべきもの
組み合わせる車高調に関する注意点
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もうひとつ、車高調との組み合わせについての注意点があります。
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なんでしょう?
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J-LINEアクスルは基本的に、どのメーカーの車高調とも組み合わせて使うことができますが……、
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その汎用性の高さも、アクスルのいいところですね。
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そうなんですが、下げる方向ばかり重視した結果、上げてもあまり上がらない車高調は問題が出てくる。……コレ、軽自動車の車高調では、ありがちなのです。
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もともと落としにくいから、そうなるんでしょうね。
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アクスルを付けるということは、車高調を付ける以前の、基準車高を落とすということ。なので、あまり上がらない車高調と組み合わせると困ったことになる。
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と言いますと?
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車高調を限界まで上げても、最低地上高9センチをキープできないとか。あり得る。
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それは……困る。
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その場合は逆に長いバネを付けるとか、そういう対処法になる。車高を上げるには、バネしかない状況なので。
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車高を上げたときに最低地上高9センチをキープするのがギリっギリ! という車高調だとすると……、
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アクスルを組み合わせた時点で、届かなくなりますね。
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そういうことね。
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アクスル自体は、構造変更をすれば車検に通るパーツですし、車高調はもともと指定部品。だから最低地上高をキープできて、バネが遊んでいなければ車検には通ります。
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しかし、通るモノと通るモノを組み合わせた結果、「通らない」というケースになるかも。
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そういう可能性はある。その点は注意です。標準ダウン量を超えるアクスルを付ける人は、なおさらです。
DIY Laboアドバイザー:氏家淳哉
リアアクスルキットで有名なJ-LINE(Jライン)。足まわり加工に長けたプロショップでもあるので、直接クルマを持ち込めば様々なワンオフ加工も依頼できる。深い知識・高い溶接技術は比類ない。●J-LINE TEL 022-367-7534 住所:宮城県多賀城市町前1-1-13
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