塗装の悩みをプロに聞く
塗装が垂れる原因と対策を、プロに教わる
塗装が垂れる。これはDIY塗装の悩みの筆頭。何とかしてきれいに塗装できるようにしたいので、板金塗装のプロにアドバイスを聞いた。まずは改めて「塗装が垂れる原因」からおさらい。
なぜ・どうして塗装が垂れてしまうのか?
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DIY塗装における定番の悩みが、「垂れ」ではないでしょうか。
●レポーター:イルミちゃん
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DIY塗装に限らない話ですね。プロでも垂れるときは垂れます。そこにはいろいろな要因があるので。
●アドバイザー:ほんだ塗装 本多研究員
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そうなんだ。
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ただ、DIY塗装で使う缶スプレー塗装だと、シンナーが多いのでなおさら垂れやすい面はあるでしょうね。
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そもそも「塗装が垂れる」の原因はなんなのでしょう?
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缶スプレーやガンの塗装では、塗料とシンナーが混ざった状態のものを吹き付けて、その後シンナーだけが抜けて(蒸発して)、塗料だけが残って定着します。
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ふむ。
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でもシンナーでビチャビチャに濡れている状態のところに、さらにどんどん吹き付けていったら、シンナーは液体ですから、しずくになって垂れてしまう。
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あー。
これは原因として分かりやすい。 -
一番シンプルな塗装が垂れる原因は、1回で厚塗りしようとするから。一気に塗ろうとしないことが、垂れない塗り方のコツです。
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ちょっとずつ、重ね塗りしていくといいですね。
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そうです。垂れないように塗装するコツは、焦らない・塗り急がないことです。
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具体的に、どれくらいのインターバル時間を置いて重ねていくのかは、前に教わりました。
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シンナーが飛んで、艶が引けたタイミングで、次の塗装を重ねていく「重ね塗り」が有効です。
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「少しずつ重ね塗りしていけば、垂れが防げる」理屈なら、回数を細かくすればいい。
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まあ、そうですね。
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だったら重ね塗りの回数を10回、20回と増やせば増やすほど安全な気がするんですけど、細かく分けるぶんには問題ないのでしょうか?
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間を置きすぎて、塗料が乾いてしまうという失敗に注意しながら重ね塗りしていければ、基本的には問題はないですが……
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ふむ。
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ただ、その塗り方だとどうしてもトータルで「塗装している時間」が長くなりますよね。そこにはリスクがひとつあります。
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ふむ。
じっくり時間をかけるリスクとは? -
ホコリが付きやすい。何時間もシャーシャーシャーシャーやっていれば、ホコリが付着する量も増えます。
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それはそうだ。ましてや塗装ブースがないDIY環境なら、なおさらですね。
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そういう意味では短時間で終わらせたいところではありますが……焦っちゃダメだよね。
プロでも塗装が垂れることはある。その原因は?
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「いっぺんに塗らないようにする」だけに気をつければいいなら、垂れずに塗れそうな気もしますが……
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実際はそう単純ではありません。
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そこですよね。本多研究員のようなプロの板金塗装職人でも、垂れるときは垂れる。それはなぜなのか。原因はもっと別にもありそう。
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僕の場合で言うなら、垂れる原因は、欲張るからですね。明らかに。
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欲張るとは?
艶出しの話でしょうか? -
いや、違います。できるだけ「均一に塗装したい」と欲張ってしまう。
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ほう。
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極端に言うと、塗装っていうのは、完璧に均一にキレイに塗れているなら、磨き作業もほとんどいらないです。
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そうなんだー。
つまり後工程もラクできると? -
そうそう。だけどこの、「均一に塗る」という点について究極的に欲張りすぎると、垂れるのです。
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均一に塗装するっていうのは、言葉だけ聞くと当たり前のような気もしますが……?
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いやいやいや、そんなにカンタンなことではありません。真っ平らな板を上から吹いているわけではないんで、難しいですよ。
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む?
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車でいうと、屋根とかボンネット……このあたりの部品は基本的には平らだからまだいいのです。
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全体に同じような吹き方をすれば、結果的に均一に塗れますからね。これはカンタン。
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フムフム。
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でもこれが、例えばバンパーだとしたらどうでしょうか?
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造形が複雑ですね。
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そう。面が複雑にからみあっていて、どう置いても垂直になる面もあれば、ガンを向けにくい部分もある。
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あー。垂直の面は、垂れやすい……。
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シンナーが重力に引っ張られますから、当然そうですよね。
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垂直面は特に注意しなくては。
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しかし、そこだけに気を取られてもいられない。
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……。
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そもそもバンパーのような複雑な形状のものを塗ろうとすると、塗りやすい場所もあれば、塗りにくい場所も出てきます。
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フムフム。
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だから塗装中に「この面はキレイになったけど、この面はガサガサだ。もうちょっと吹いておくか」などという場面も出てくる。
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ふむ。
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でも、塗料は塗りたい場所だけにかかるわけではないので、あっちからもこっちからも吹いているうちに、両方の塗料がかかる場所が、いつの間にか厚くなります。
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……そう考えると、複雑な造形で均一に塗るのって無理がある。
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ほどほどで止めておけばいいのですが、均一さにこだわるがゆえに、もうちょっとココだけ欲しい……と欲張っているうちに、垂れるわけです。
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これは、最初の垂れの原因よりも「高度な垂れの原因」と言えそうです。
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ようするに、塗料のかかりやすい場所・集まりやすい場所は垂れやすい、ということは覚えておきましょう。
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ナルホド。その心がけだけでも、だいぶ変わりそうだ。
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少なくとも、塗装するときには「塗りやすい場所」からではなく、「塗りにくい場所」から塗るようにします。これもコツのひとつですね。
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塗装が垂れる原因と対策について、だいぶイメージが掴めましたが……でもね、本多研究員。
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なんでしょう?
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こういう理屈が分かっている本多研究員だって、垂れるときは垂れますね?
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そうですね。
塗装が垂れた日は本当にヘコみます。 -
そんなときはどう事後処理をするのか? ぜひ聞いておきたいです。
✔ 具体的な塗り方は、「缶スプレー塗装でキレイに重ね塗りするコツ」参照。
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